○○疑惑
あまりに寂しいので、ヒヨを召喚しようとしたのだが失敗。
やっぱり世界が違うと無理なんだね。
最初から連れてくれば良かったよ……。
大体、俺一人で戦力の分析とか出来る訳無いんだから。
さっさと終わらせて帰るとしよう。
俺は『隠蔽』を使い、そのまま城の中へ。
誰を出場させるとか、どういう順番で出すかとか、そういう事が書いてある書類でも無いかと探す。
……うん、無い。
そんなに都合良くある訳ないか。
それに一応戦争だもんな。トップシークレットだろうし、すぐに見れる所に置いている訳無いな。
そうなると、来た意味も無くなるんだけど……。
あっ、そうだ。練兵所に行ってみよう。
もしかしたら出場選手が鍛えてるかもしれないし。
ラノベじゃあ定番だもん。きっと居るに違いない!
迷う事30分。やっと練兵所っぽい所に到着した。
まさか城の外にあるとは想像してなかったわ。
よく考えたら、城の中に作る必要無いもんな。兵が常駐している所に作った方が良いに決まってる。
兵も全員が城に居る訳じゃない。居るのは当番の近衛騎士とか近衛兵だけ。
城の中に兵士が集まるなんて籠城の時くらいか。
何で城の中に居ると思い込んだんだろ? ……ラノベの影響って事にしておこうか?
あっ、そうだ! コルラド国のせいだ!
あの変態の国は城の中に兵が沢山居たし、練兵場もあったわ!
変態を基準にしちゃダメだよね。うん。気をつけよう。
で、到着した練兵場なんだけど……。誰も居ない。
いや、一人だけ居るんだけど……俺の目で見ても熟練者とは思えない動き。
イメージだけど、居残りさせられてる人って感じだ。
う~ん、兵士って平日の日中は何をやってるんだろう?
訓練してるイメージだったんだけどなぁ。
こういう時、参謀が居ると助かるんだよな。やっぱり一人で来たのは失敗だった!
あっ、そうだ! グランザムに行った時のように、食堂に行ってみよう!
それなら兵士が居るはず。兵士だって食事するんだから。
まぁ、あの時は俺を調べる為に集まってた気もするけどね……。
はい。また城に戻り食堂にやってきました。
昼過ぎだったから不安だったけど、居ました! 兵士の皆さんです!
グッジョブ、俺!
しかも6人くらいが集まって、何か議論をしているし。
あの中の会話を聞けば、情報が得られるに違いない!
ラノベではこういう時は重要な話をしているモノなのだ!
って事で、耳を傾ける……。
「だから、お前の好みは変わってるんだって!」
「何でだよ! 女性は30歳からだろうが!」
「若い子の方が良いだろ!」
「判らない……。お前の考えが判らない……」
「何でだ?! ほら、北門の近くにある宿屋『サエキ亭』の女将とか、最高だろ?!」
「50代じゃねぇか!」
「そもそも、旦那が居るし!」
「うるせぇな! 大体、別にお前らに判ってもらおうと思ってねぇよ!
理解されたら、ライバルが増えるだけだしな」
「ライバルなんか、ならねぇよ!」
「そもそも、お前のライバルは相手の旦那だろうが!」
……もうすぐ戦争だってのに、平和な会話だなぁ。
しかし、ここまで来て得た情報が「アルマンドの兵の中に熟女好きが居る」だけ……。
コレで良いのか?! いや、良くない!!
しょうがない、『混沌』と運を使って情報を出すか。
えっ? 最初からやれって?
いや、異世界なんだから何があるか判らないじゃん? だから温存しておいたんだよ。
いざって時に、運が80とかヤバいでしょ?
早速、『混沌』と運を使ってみた。
すると会話が良い流れになってきた。
「そう言えば、確か勇者も若い女に興味無さそうだったなぁ……」
「マジで?! ライバルか?!」
「いや、興味無さそうだからって、お前と同じとは限らないだろ?」
「じゃあ、男好き……?!」
「ヤベぇ事言うな!」
どうやら勇者は、女に興味が無いか、男好きか、熟女好きか、そのどれかのようだ。
……だから、こんな情報は要らないんだって!
こうなったら、こっそり会話に乱入しよう。
怒鳴り合ってる今なら、一言くらい言ってもバレないだろう。
「勇者をホモ扱いとか……お前処罰されるぞ?」
「女に興味無さそうって言ったのはお前じゃん!」
「だからってホモとは言ってないぞ!」
「本人に確認しに行こうぜ!」
「え~、マジか?! ヤバくねぇか?」
「でも、ホモ疑惑のまま一緒に行動するのも……なぁ……」
「ホモを差別する気は無いが、自分が好みって言われると困るよな」
「……確認だけしてみるか?」
「そうだな。今勇者は西門に居るはずだ。行ってみるか」
よし! 誘導成功!
ちなみに俺は「本人に確認しに行こうぜ!」って言っただけ。
後は運が作用したんだろう。
そうか、勇者は西門に居るのか。
こいつらに着いていけば、道に迷う事も無いだろうし、勇者に直接会えるな。
この会話を聞き続けるのは苦痛だけど、ついていくか。
しかし、腹が減ったなぁ……。目の前で食われてるのが、また……。
確認してすぐに帰るつもりだったから、何も用意してないんだよ!
次話はいつも通りに土曜日(25日)の8時に投稿します。




