冬の間に
ここまで聞いて、一つ疑問が出来たので聞いてみよう。
「ところで、200年以上戦争してるらしいけど、それって大丈夫なのか?」
「何が?」
「いや、俺も戦争に詳しい訳じゃないから素人考えだけどさ。
ほら、例えば食料とか。農業に従事してる人が戦場に出たりするんじゃないの?」
「えっ? 何で?」
「えっ? 違うの?
あっ! もしかして地球みたいに、いや地球以上に機械化が進んでて農業に人手が要らないとか?」
「その世界の農業レベルはこの世界と同じくらいよ?」
「あれっ? そうなの?
じゃ、じゃあ、魔法で農業とか?」
「魔法はこの世界より遅れてるかな?」
「……え~と、じゃあ、そう! 画期的な農業方式とかすぐ育つ食物とか?」
「そんなのあるの?」
「いや、俺は知らないけど」
「私も知らな~い」
「じゃあどうなってるんだよ!」
「だーかーらー、何で戦場に出るのよ!」
えっ? 出ないの?
戦争って国家総動員じゃないの?
あれっ? 俺の知識が間違ってる?
「100年前から選抜戦になってるわよ」
「…………選抜戦?」
「ええ。5人出して、先に3勝した方の勝ち。
負けた方は領土の一部を人ごと渡す。収穫の無い冬に行われてるわよ」
「え~と、それって戦争?」
「領土の奪い合いだから戦争でしょ?」
異世界に俺の考えを当てはめようとしたのが間違いなようだ。
想像以上に平和な戦争だったわ。
「じゃあ何で勇者……、あっ! だから勇者が必要なのか!」
「そうよ? 勇者が一人居るだけで1勝は確実になるもの」
「あれ? じゃあさっきの話は?」
「さっきの話?」
「『魔王と勇者はどちらも一騎当千。それに戦いを挑めば死体が増えるだけ。だから一騎打ちで勝敗を決める』
って言ったじゃん。
最悪死体は5体じゃないか?」
「それは魔王との話。今回は勇者同士」
な、納得出来ない……。
「ま、まぁ、戦争の方法は判った。
で、まず戦争を止めたいんだけど、良い方法は無いか?」
「無理じゃない? 国民の冬の間の娯楽にもなってるし」
「平和! むっちゃ平和! そしてのんき!!」
「戦争のS席なんてプレミアが付いてるわよ? 2年前から予約しても買えないらしいわ」
「のんきすぎる! それ、ただの武闘会を見たいだけじゃないか!
負けたら領土を取られるんだぞ?!」
「一般人にしてみたら関係無いみたいよ?
ほら、例えば日本でも少し昔にあったでしょ?」
「えっ? 何が?」
「隣の市や町と合併」
あ~、そんな事あったなぁ。
俺の住んでた所は合併される側だったから、気にしてなかったわ。
「住所が変わるくらいだったでしょ? それと同じ感覚みたいよ。
税率も変わらないらしいし。
それよりも国を気に入ってもらおうと、インフラ整備されるから喜んでるわ」
「平和過ぎる!! もう、放っておいて良いんじゃないか?」
「国の問題じゃないの! 神の世界で禁忌をしてる事が問題なの!」
あっ、そうだったね。
住人がのんきだから良いかと思ったわ。
「じゃあ、最初に戻るけど、どうすれば良い?」
「さあ? それを考えるのが福田君の、お・し・ご・と・!」
ムカつく!
しかし、原因が判らないとなぁ。
やはりヒヨの言った通りに、共通の敵を作るか。
それには…………、よし、こうしよう。
「決めた!」
「おっ、良い方法を思いついた?」
「ああ。まず、やっぱりその戦争を止める」
「だから無理だと思うけど?」
「直接止めるのは無理だと俺も思う。だから、乱入する」
「へ?」
「第三者として、その戦争という武闘会に参加するのさ」
「それで?」
「そこで俺のチームが勝てば、領土の奪い合いは出来なくなるだろ?
そうなれば、神も黙ってないと思うんだ」
「それは確かに。
でも勝てるの? 相手には勇者も居るわよ?」
「こっちにも勇者は居るよ。元勇者だけどさ」
「あぁ、吉田君とかを呼ぶのね?」
「いや、既存の戦力でやるよ」
「って事はナグラさんの事?」
「そう。ナグラさん、コタニさん、カンダさん、キジマさんだ」
「ちょっと待って。4人しか居ないじゃない。
福田君は出れないわよ? 勿論従魔もね。どうするの?」
「目の前に居るじゃないか、5人目。が・ん・ば・れ・!」
優しい目で見つつ、肩をポンと叩いてあげた。
すぐ発狂したけど。
放っておいて、早速準備だ!
次話は、明日(土曜日)8時に投稿します。




