素材
俺が色々と悩んでいると、シロから提案があった。
「今、部下に違うダンジョンまでの道を掘らしているよ。
他からも集めるから」
「いやいやいや! ここのモンスターだけで大丈夫! 問題無いよ!」
「えっ? ……折角掘ったのに…………」
「あぁ、そんなに泣きそうな顔をしない!
そ、そうだ! 気分転換に他のダンジョンを攻略しに行こうか!
道も出来るみたいだしね! そうしよう!」
「……うん」
ふぅ、笑ってくれた……。
危なかったぜ。
さて、そのダンジョンなんだが、直線で10kmはくらい離れているらしい。
どうやって移動するのかと言うと……神輿だ。
近衛アリの担ぐ神輿に俺達が乗っているのだ。
誰にも見られる心配は無いが、恥ずかしいな、これ。
まぁ、俺自身が使徒なので、神輿に乗るのは間違いでは無いのかもしれないが。
体感で5~6分でダンジョンに到着。
って事は速度60kmくらい? 早いな、アリ!!
神輿で時速60kmは怖いぞ! 地面が近いから100kmくらいに感じたわ!
「シロ、このダンジョンはどんなダンジョンなの?」
「料理の素材がドロップするダンジョン。部下もよく利用してる」
へ~、モンスターがモンスター倒してもドロップするんだな。
それとも俺の従魔扱いになってるからか?
まぁ、いいや。食材がドロップするのは嬉しいね。
シロの部下も使うくらいなんだから、良い物が出るんだろう。
「食材じゃないよ。素材」
「ん? 料理の素材なんだから、食材じゃないの?」
「違う。料理の素材が出るの」
何が違うんだろう?
ま、実践すれば判るか。
タブレットで調べればすぐに判るが、それをしたらシロが悲しみそうだし。
って事で、早速運を使って1匹だけ呼び出してみた。
出てきたのは茶色いスライム。
とりあえずノーマルドロップが知りたいので、カンダさんに倒してもらう。
ドロップしたのは、革袋。……何コレ?
あぁ、食材をそのまま地面に落とさないようにか?
……いやいや、今までは違ったじゃん! 肉とか竹の皮みたいなのに乗って出たじゃん!
液体だけはガラス瓶に入って出たけどさ。
不思議がってると、ナグラさんが躊躇無く袋を開けてた。
そして、中から1枚の紙を取り出して読んでる。
「なんて書いてあるんだ?」
「……読んだら判るわよ」
そう言われて渡された紙には「マヨネーズの素材」と書かれていた……。
はぁ? って事は革袋の中身はマヨネーズを作る為の素材が全部入ってるって事?!
袋を開けると、中には、油っぽい液体・酢っぽい液体・卵が入っていた。
あ~、確かそんな感じだったと思うなぁ。
ラノベでは定番なので覚えてるわ。
ただし分量なんかは全く知らないけどさ。
なるほど。確かに料理の素材だわ。
食材ではないね。
しかしそれなら最初からマヨネーズをドロップしてくれれば良いと思うのだが。
あまりに気になったのでルシファーさんにメールしてみた。
『こだわって独自の味が作れるでしょ?』
これがその回答。
そう言われればそうだけどさ! 俺みたいな考えの人って多いと思うんだ!
大体さ、面倒じゃん!
それにさ、中に入っていた紙に分量とか、5対1対1みたいなのとかくらい書いておいてよ!
完成品の名前だけってヒドくない?!
誰もが適切な分量を知ってる訳じゃ無いんだよ?
特に現代人は出来た物しか知らないよ? いつでも完成品を買えるんだから。
こういうのを知ってるのはラノベの主人公だけだって(笑)
あの人達、ググったのかって言うほど色々な事に詳しいから。
ラーメンだろうと豆腐だろうと復元させる知識を持ってるし、学校でしか習わなかった農業だって知ってるから。
農業なんて土とか植物の性質が違うかもしれないのに、よく成功させられるよね。
な~んて考えてたら、ナグラさんが早速マヨネーズを作ってた……。
そう言えば、貴方、そういう知識を持ってたね……。
無駄になると思わなかったのかなぁ。
入院中はヒマだから本を読むしか無かった?
そうですか。すみません。
……異世界転移をする人は、知識をつける時間がいくらでもあったって事にしておこう。
そう、トラックに跳ねられる直前まで知識を仕入れていたんだ。間違いない。
この後、本当に豆腐の素材がドロップした……。
次話も土曜日に投稿します。




