6p
翌日屋上に彼女を呼び出した。今からおこることは絶対に漏らさないこと。
よくわからない顔をしたが、僕の真剣な表情に。深く頷いた。
「今から橘くんに会ってもらう」
「佑兎くんに会えるんですか?!」
彼女は希望の宿った目をした。
「あぁ。少しのあいだだけど。今、彼は殺されたことに憎しみをもっている。悲しいことに君のことも目に入らないくらい。梨絵ちゃんの気持ちを伝えてほしいんだ」
わかりました、と言って唇を噛んだ。
ドアを開けると橘が表情も無く立っていた。
「佑兎くんっ!!」
梨絵は彼にかけよった。
抱き締めようとした手が彼をすり抜けた。
「本当に、死んじゃったんだね……」
梨絵の目から涙が溢れる。
「私、知ってたよ。佑兎くんが私のこと好きなの。私も好きになったよ。でも、告白してこないかな、なんて待ってた。私からすればよかった……今はそう思うよ」
橘の表情が嬉しいとも悲しいとも複雑な表情に変わった。
「私、好きだよ、今だって。今も遠い遠いところでフラフラしてるんじゃないかなって、そう思って……」
梨絵は、言葉に詰まり、泣きじゃくり始めた。
「どうしてそんな、遠い所に行っちゃったのよって怒った。でも、どんなにあがいても佑兎くんは帰ってもこない。でも
今こうしているのを見て、今は受け入れるわ」
橘の頬に、一筋の涙が流れた。
「佑兎くんが悪霊になるなんて嫌だよ!天国で私を見守ってくれてる、そう思いたいよ!だから、だから……」
二人とも目をこすって泣いている。
「私は佑兎君が、大好きです。ずっと、ずっと、忘れません。…… ふふ、私の告白」
一文字だった橘の口元が少し緩んだ。
「『君がそう思ってくれてるだけで、僕は幸せだ。ありがとう』 だそうよ」
「佑兎くん。私は大丈夫。あなたが見ててくれるならどんなことも頑張れる。だから、事故のことは忘れて。わがままかもしれないけど、私のことだけ見てて」
橘は泣きじゃくった笑顔で消え始めた。
「佑兎!!」
キラキラと青空に消えていく彼を引き止めようと、彼女は、精一杯手を伸ばした。
諦めたように、座り込む梨絵。
「彼は憎しみが消えて幸せになって転生できるようになったよ」
「佑兎くん………」
「ごめんな、会わせてしまったことで傷つけたかもしれない」
「ううん、いいの。私、お葬式でも泣けなかった。実感がなかったの。彼の死を受け入れるのは、辛いけど、強くなれた気がするの」
梨絵とは赤い目をもう一度拭って笑った。
暗くなってきたので、清一か梨絵を送って行くことになった。
「私もすっきりした。空いていた穴が、また埋った気がするの。
私ね、また、恋をするわ。最初はもう他の人とは恋愛できないと思ったけど、彼は嫉妬しないで見守ってくれると思うの。佑兎くんはそういう人よ。私にはわかるんだ」
にっこり笑って手をふった。
「私の家だから。ありがとうございました」
「こちらこそ、巻き込んでごめんな」
「巻き込まれてよかった。私の気持ちを伝えられたもの。本当にありがとうございました。では、さようなら」
「うん、さようなら」
暗くなりかけた夕方、甘酸っぱいなーと少し羨ましく思った。




