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1p  作者: 雪平あこ
カフェ・ノワール2章
3/6

3p

少し面白かったので昼休みの間、校内を見て回った。

広い中庭。ばか騒ぎする男子生徒。キャーキャーと会話の盛り上がる女子生徒の声。

懐かしかった。自分にもこんな時代があったな、と思い出に浸る。

昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴って、清一は慌てて屋上の方に向かった。

今日は5時間で終わるらしいので50分程屋上で時間を潰した。

頭のなかは橘のこととラブレターのことでいっぱいだった。

もし、酷くフラれたらどう伝えるべきか。

けっこう恋愛とは成立することは難しい。

自分の女性経験の無さからも、なんとなく察しられる。また、友達からの経験からも。なぜか慰めるのはいつも清一の役目だった。

梨絵の反応も大いに気になる。まるで自分が告白するような気分に陥った。

重いドアを開けて、梨絵は屋上にやって来た。案外長く考え込んでいたらしい。

そうだ。橘にあまり感情移入してはいけないのだった。梨絵がくるまで忘れていた。

「あの…話って…」

先に口を開いたのは梨絵だった。

「僕は藤原清一。橘の先輩なんだ」

この辺は嘘をつくしかない。

「これを渡してくれって頼まれていたんだ。本当は一緒に来てくれなんて気の弱いところを見せていたんだが、勇気をだして、一人で行くと言った」

「これは…」

「察しはつくと思うがラブレターだ。彼が亡くなった以上、僕が伝えようと思った」

梨絵はゆっくりと封をあける。そっと開いて読み始めた。

清一は、彼女の文字を追う目を見ていた。

読んでいる途中から、梨絵は大粒の涙を流し始めた。

清一は何が起こったかわからなかった。

バカ、と彼女は呟いた。

「なんで、死んじゃったのよ…」

その言葉とともに崩れ落ち、泣き始めた。

「ばか…ばか、ばか、ばか…」

両手で顔をおおって罵倒する。

「私も、…好きだった…」

そうだ、フラレる心配ばかりしていたが、両思いの可能性もあったのだ。

「橘くんが私のことを好きなのは気づいてた。いつ告白してくるんだって思ってた」

小さく、震える声でポツリポツリと語り始めた。

「真面目で、正義感が強くて、誰にでも優しい。いじめがあったとき、主犯格を殴って気絶させてやめさせたのは有名な話。勇気もあって、強くもあった」

そんなふうには見えない優男だったとおもったが、そんな一面もあったのかと、清一は意外に思った。

「そして、私をいつもは気遣ってくれた。そんな人、好きになるにきまってるじゃない」

小さな悲痛な叫び。

「好きだった。ううん、好きよ、大好きよ!」

そう言うと再び泣いた。

「どうして…どうして、優斗があんな目にあわなきゃいけないの?!1人残された私はどうしたらいいのよ!この想いは消えたりしない!なのに…なのに…優斗がいないと私……っ」

嗚咽を漏らしてなく彼女を呆然としてしばし見ていた。そして、ゆっくりと座って彼女か泣くのが終わるまで待った。

そう。どうしようもないし、想いは消えないけど、思い切り泣けばいい。心の整理ができるかもしれない。

清一は優しい言葉をかけるわけでもなく、ただ泣き声を聞いていた。


ひとしきり泣いた後、しゃくりをあげる梨絵が胸に抱いた手紙をそっとさわってた。

「手紙、持っててくれるかな」

「はい。優斗からの精一杯の気持ちだから」

「橘くんのために泣いてくれてありがとう。きっと彼にも届いたよ」

梨絵はすっと顔をあげた。

「そうだといいな」

少し微笑んだ。

「ほんとはさ、橘くんがフラレるんじゃないかって心配してたんだ。だけど君も大切に思ってくれてたならよかった。」

でも、と清一は少し真面目に言った。

「橘くんはこの世にはもういない。彼だけにとらわれず、いつか新しい恋愛もするんだよ。橘くんは梨絵さんの幸せを祈っているはずだから」

「まだ、受け入れられませんが、私も橘くんの幸せを祈ってます」

梨絵は腫れた目で微笑んだ。


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