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「彼女に会えそうよ」
閉店後、由梨は言った。
「名案でも浮かんだ?」
「香月高校はマンモス校だった。制服も手に入れたわ」
「由梨ちゃん、すごいね!仕事が早い」
「1人くらい知らない人が紛れてもわからないと思うわ」
ん、と清一は思った。
一人?
嫌な予感しかしない。
「男子の制服」
嫌な予感は当たった。
「僕が潜入するのか?女子の方が警戒されないんじゃない?初対面の僕が声をかけると警戒されない?」
異性、それも初対面の人間が呼び出すにはハードルが高い。
「仕方ないでしょ。女子のは手に入らなかったの。藤原さんがいくしかないわ」
あぁ、胃がキリキリする。
自分の大学でも、グループ発表の時以外には声をかけられないのに。
向こうから相談に来ることはたまにあるけれど、女子は苦手だ。
知らない高校で、知らない女子を呼び出すなんて、罰ゲームみたいなもんだ。
「ほんとに僕一人で行くのか?」
「当たり前でしょ。いくらマンモス校といっても私服で歩いてたら目立つじゃない。諦めなさい」
ガクリと肩を落とし、ため息をつく。
このメンバーに入れられてため息をつくことが多くなった。
けれど、仕方がない。やるしかないのだ。清一は制服を見ながら覚悟を決めた。
明日、大学を途中で抜けて、呼び出すことにした。放課後では帰ってしまう可能性があるからだ。
警戒されて呼び出せなかったらどうしよう。不安ばかりだ。
ちょうど昼休み頃、清一は香月高校に、制服に着替えて高校に、乗り込んだ。
制服、高校なんて、いつぶりだろう。全く違う高校だが、懐かしさを覚えた。
探し歩いて2年生の階に着いた。
髪を後ろでまとめ、花の髪飾りをしている子。
教室を覗いたり廊下を歩いたりして探した。変に見られていないだろうか。
教室は8クラスあった。なかなか見つからない。ふと、廊下の窓から中庭を見ると弁当を食べる学生が見えた。ちらりと髪飾りが見えた気がした。
清一は階段を降りて中庭に足を運んだ。
友達といるのが気まずい。
また胃がキリキリし始めた。
3人の学生が仲良く喋りながら、弁当を食べている。 近づいていく。真ん中の少女は確かに橘の言っていた髪型だ。
「あの、如月梨絵さんで間違いないですか?」
真ん中の女子生徒に尋ねる。
「え、えぇ。あの、私に何か…」
ほら、警戒心丸出しじゃないか。
「橘優斗を知ってますか?」
如月はくりっとした目をさらに大きくした。
「は、はい…」
「橘くんのことで話があるので、放課後、屋上にきてもらえますか?」
まだ、不審者を見るように目を向ける。
「僕、橘くんの知り合いなんです。どうしても伝えたいことがあって。どうこうしようって気はありません。橘くんから、亡くなる前に言伝てをもらっていて、それをどうしても伝えたいんです。信用してもらえないのはわかっています。それでも来てくれたら…」
「わかりました」
彼女は僕の言葉を遮るように言った。
「ありがとう。じゃあ放課後、待ってるよ」
僕は微笑んでそこを離れた。




