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「依頼人だよ」
店長は閉店後言った。
依頼人は沙依さんが連れてくれるらしい。
この間のリング探しで、若干睡眠不足の清一はあくびをした。
「もしかして僕、メンバーに入ってます?」
「ははは、今さら何言ってんだ」
店長が明るく言う。一方清一は肩を落とし、ため息をつく。
「次の人はどんな人ですか」
「沙依ちゃんが、会わせてくれないとわからないよ」
店長はのんびり言った。
やがて沙依さんと由梨ちゃんが階段を登ってきた。
「さっそくだけど沙依ちゃんよろしく」
ポン、という弾けるような音がすると、沙依さんは妖狐姿になった
少し見慣れた気がするのは気のせいだろうか。
杖を受け取って沙依さんは魔方陣を、描き始めた。
すっと現れたのは高校生くらいの少し幼さの残る少年だった。
「彼はひき逃げされたそうよ」
「ひき逃げ…酷いな。犯人は見つかっているのか?」
「まだだそうよ」
「まさか、犯人探しとか…?」
「いいえ、彼には想い人がいたそうよ」
彼はゆっくりうなずいた。
「ずっと見ているだけだった子に徹夜でラブレターを書いた。勇気をだして。それを渡す日、彼は轢かれ、無念のままに成仏できないままでいる。好きな子に告白できなかった想いが強いの」
「よくわからないけど、手が熱い。なんとなくだけど、それが想いなのかな。すごく好きだったんだな」
「私も何か感じるわ」
「それだけ想いが強いのか」
「皆が感じるということは、暴走する可能性があるわ。店長、くれぐれもよろしく」
「あいよー」
少し緊迫した雰囲気にそぐわない適当な声色だった。
そのおかげで少し緊張がとけたのだけど。
「ラブレターはまだ鞄のなかだそうよ。家族が処分していなければまだあるはず」
「清ちゃん」
「はいはい、わかってますよ。取りに行ってきます」
「私も行くわ」
清一は少し驚いた。由梨は動かないとおもっていたからだ。
「藤原さんひとりじゃ不審者よ」
「酷いなぁ」
多少心強い、清一はひっそりと思った。その感情は隠したが。
「明日行ってみるよ」
清一は仕方なく言った。




