恩人との邂逅
5話目です。ボロが出まくっている感じがします。いつも通りの拙い言葉遣いですが、精一杯頑張ります!それではどうぞ!
「うっ・・・」
不意に感じた電撃のような痛みの疼きによって俺は目覚めた。
──ここは・・・どこだ?
俺の視界には木でできた少し燻んだ色の天井が広がっていた。
「おや、気が付きましたか。」
優しい声がした。
声に視線を向けるとそこには────美女。
紛う事なき美女がいた。金髪のストレートヘアに小さく白いリボンでシルクのように透き通る光によって煌めく髪を結わえている。そして簡素ながらも白いワンピースがとても良く似合っていた。
「え、あ、は、はい・・・」
段々と萎むように小さくなっていく俺の声。それでもその視線だけはしっかりと彼女に向けられていた。目を離すことなどどうやらできそうになかった。
「あの・・・大丈夫ですか?」
どれくらいそうしていただろうか。彼女にそう問いかけられるまで俺は思考を放棄していた。
「え?いや、あの、大丈夫・・・です!」
慌てて視線を彼女から外し、いつの間にか激しくなっていた動悸を押さえるために彼女からは見えないように、軽く深呼吸をした。
「お、気が付いたか」
「お帰りなさい、クロエ」
「おう、ただいまフィア」
いつの間にそこに居たのだろうか。振り返ってみればそこには知らない男が立っていた。
「おう、大丈夫か?体にだるいところとかは?違和感を感じるところとかはないか?」
早口にそう彼女にクロエと呼ばれた男はそう問い掛けてきた。
「は、はい特には」
「そっか。ならいいんだけどよ」
「あ、あの!」
「ん?どした?」
「あなたが・・・助けてくれたのですか?」
「ん、まぁな」
「ほ、他の方々もですか?」
「ん、まぁそうだが・・・一人だけ間に合わなかった奴がいた・・・」
「・・・そうですか」
間に合わなかった奴というのはおそらくおっさんだろう。俺はいけすかない人ではあったが、その場でおっさんに黙祷を捧げた。
「そういえば、他の皆さんは?」
俺の心も大分落ち着いてきたのだろう。どもることもなく質問することができた。
「あー、あいつらか。今はギルドの手配で宿屋にいるぞ。あいつらの村や街まで送ろうとしたんだが、なんかお前に用があるらしくてな。お前の容態を伝えたら、皆お前が起きるまでここで待つって聞きゃあしねぇんだ。で、いい加減に起きねぇから無理やり覚醒させてやろうと思ったんだが──その必要は無かったな」
どうやらすんでのところで要らぬお手伝いを受けずに済んだようだ。
──いや、それよりも。
──俺に言いたいこと?一体なんだ?いつの間にか悪事でもしたのか?
それが何なのか確認するためにも──
「あの、ではあの人たちのところに連れていって頂けないでしょうか?」
「連れていくも何ももう連れてきた」
「え?」
「ほれ」
ガチャッ
「あ」
「うわっ」
「きゃあっ」
バタバタバタッ
「あいたたた・・・」
「いつつ・・・」
「いったぁ・・・」
「だーから下で待ってろって言っただろうがよ!」
「す、すみません!待ってればもうすぐ起きるなんて言われたらいてもたってもいられなくなってしまったのでつい・・・」
「あ、あたしもです!」
「わ、わたしも!」
喧しく部屋に乱入してきた彼等はそういった。
あまりにも突然の出来事だったので俺は目を白黒とさせていたが、やがて意識を戻し──
「み、皆さんご無事だったんですね!」
「ええ、おかげさまで!」
「はい!あなたがいてくれたおかげです!」
「お兄ちゃんのおかげで助かったの!」
「お、俺のおかげ・・・ですか?」
「ええ、クロエさんから聞きました。あなたがゴブリンをほとんど引き付けてくれていたおかげで私達は助かったと!」
「・・・でも、そのせいでゴブリン達に甚振られたと聞いて」
「どうしても謝りたかったの・・・」
──ああ、そういうことか。
──俺は、いや俺が、必死になって逃げようとしていたとき、偶然にも皆を逃がすための囮になっていたのか。
つぅっと、俺の頬に涙が伝う。
俺が涙を流し、生きるために足掻いた結果助かる命があった。おっさんはそう思わないだろうが、おっさんがやられているときの時間さえも、皆の、いや俺の生きるために必要な時間稼ぎだった。──結局おっさんは亡くなってしまったが。
「お、オイどうした!?」
「な、何でもないです!ただ・・・感傷に浸っていただけで・・・」
「そ、それならいいんだが・・・、無理はするなよ?折角拾われた命だ、大切にしねぇと恩人が泣いちまうぞ?」
クロエは俺に向かってそう戯けて笑った。
つられて俺も思わず笑ってしまう。
「んじゃ、そろそろお前らも村に戻らねぇとな、こいつの意識も戻ったし!」
「名残惜しいですがそうですね・・・」
「ええ・・・」
「うん・・・」
帰ると意識したとたん、三人はしょんぼりと肩を落とした。俺も同様だった。知り合いと別れることはやはり辛い。だが同時に仕方のないことであると分かっていた。何故ならば、三人には帰るべき所があるのだから──
「あ、そーだ!お兄ちゃん!お兄ちゃんの名前ってなーに?」
「え?名前・・・名前?」
「そう!名前!」
突然聞かれたので思わず聞き返してしまった。
──そういえば、まだ名乗っていなかったな。俺の名前、たしか──
「慎・・・夕霧・・・かなぁ?」
「何で疑問計なんだよ!」
クロエが俺につっこむ。
──だって自信ないんだもん・・・。
そんな悩みを他の人が知る筈も無かった。
「分かった!シンお兄ちゃんだね!」
「あ、うん」
俺は、半ば反射的に返事をした。すると──
「じゃあね、シンお兄ちゃん!大きくなったらわたしとケッコンしてくれる!?」
!!!???
──何だか無視できない単語が含まれていた気がするんだが。
見ると爆弾を投下したことにすら気づかない張本人を除いた全ての人が固まっていた。
すると一足先に我に帰ったクロエはいきなり吹き出し、
「ブッ!バッハハハハハ!ま、マジかよ!いきなり結婚かよ!大きく出たなお嬢ちゃん!おい、フィアも何とか言ってやれよ!・・・あーヤバい面白すぎだろお前ら!」
「むー!わたしほんきだもん!」
「いやいや流石に早すぎるだろ!せめて成人してからそういうことは言おうぜ?なーフィア!・・・フィア?どうした?何で笑顔なの?その手に持ってるもの何よ?なんだか怖いんですけど!?ちょ!フィアさーん!?聞いてるー!?」
「・・・私は成人してます。なのに・・・何で結婚してくれないんですか?もうずーっと前から言ってましたよね?『成人したら貰ってやる』って。言いましたよね?いつになったら私と結婚してくれるんですか!?」
青筋をうっすらと浮かばせ微笑みながらクロエにジリジリと近付くフィア。
「えー・・・とですね・・・・・・さらば!」
ガシィッ
「なっ!?」
「まだお返事聞いていませんよ・・・?」
「いや、ほら、早くこの三人連れていかないと!な!お前ら!」
「え、ええ「その前にお返事することくらいできますよね・・・?」」
「だー!もうこうなったら・・・!『時と空の理よ、我が言に宿れ!強制転移!』」
「あっ!」
フィアの掴んだ腕の実体が無くなり、反動でフィアが体勢を崩す。
「さて、じゃあ送るぞ!必ず知っている場所に転移する筈だからそっからは歩いて帰れ!」
「「「えええええっ!?」」」
声のした場所にはもうクロエの姿はない。三人の身体は姿を消してはいないがクロエと同様実体はない。
「もう!また逃げられました!」
柔らかな雰囲気を持つ彼女さえも流石に怒っている。
──また、ってどんだけ逃げられてるんだろう。
そんな疑問が頭をよぎる。しかし──
「ではユウギリさん、ありがとうございました!僕はトカゴ村に住んでいるので、機会があれば来てください!まぁ、僕も機会があればそちらに会いに行きますけどね!」
そんな言葉をきっかけに思考を切り替える。そして──
「こちらこそありがとうございました!機会がなくても会いに行きますよ!」
と伝えると、彼らしい朗らかな笑みをたたえて消えていった。
「私達はリンベ村にいますから!こちらにも機会があれば来てくださいね!私達も会いに行きますから!」
「分かりました!必ず向かわせていただきます!」
「バイバイシンお兄ちゃん!次あったときはぜったいケッコンしよーねー!!」
「えーっと・・・ハハハ」
そう言葉を濁し、二人が消えていくのを見送った。
「行ってしまいましたね」
「はい」
──おや?
「ところで──俺は何故転移されなかったのでしょうか?」
「クロエはあなたをここに住まわせると言っていました」
──なるほど。──────は?
嵐のような別れが終わり、やっと平穏が戻ってきたと思いきや。突然のカミングアウトにより、再び俺の元へと警戒心という名の相棒が戻ってきていました。
どうでしたか?わたしの頭のなかにはもぐら叩きみたいに越前くんが顔をだし、「まだまだだね。」と何十人もの声が聞こえてくるようです。
それでもやはり、好きなものは好きなので書き続けますけどね!