0.プロローグ
「今年はなんと、我が校始まって以来の出来事が起こった!」
「部長、そんなに興奮してどうしたんすか?」
「とりあえず……こんにゃくゼリーでも食べて落ち着いてくれ」
「おっ? かわいい女の子でも入ってきたか?」
「それがな、聞いて驚け……」
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私立馬虎学園。
ここでは執事・メイドとなるべく、多くの学生たちが切磋琢磨している。
その中でも、一際異彩を放っている部活がある。
その名も執事部。
まさに、執事の中の執事のためにあるようなその部活は、執事実技試験に上位で合格した数名しか入部を認められないという、エリート揃いの部活であった。
ところで、馬虎学園の入学試験は、
・英語コミュニケーション
・教養試験
・執事実技
・メイド実技
・面接
がすべて課せられる。
つまり、男性がメイドの実技、女性が執事の実技も受けることになる。
合格するためには、男性は執事実技が90%以上、メイド実技50%以上の得点が必要であり、女性はその反対と、その合格ラインが傾斜されているために、女性はメイド実技、男性は執事実技の点数が高いというのが常である。
したがって歴代、執事部に入部が許されたのは、男性のみであり、それが既成事実化していたのだが……。
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「今年は、なんと!」
「嫌に溜めるな……」
「なんと……」
「陽ちゃん、いい加減にしてよ。そろそろ入学式の時間だよ。勧誘の準備に行かなきゃ。」
「なんと……」
「ねえ、むっちゃん何とか言ってやってよ。」
「……巻きで。」
「……はい。――なんと!実は!新入生で執事実技の1位を取ったのが女の子だったのです!」
「へー」
「お前らなあ、これがどういうことかわかってるのか?」
「全然。」
「つまり……この部に女の子が入ってくるかもしれないってことだ!!」
「!!!」