5.日向side
あれ?今お姉ちゃんがいた気がしたんだけど…
寝ぼけてたのかな?
「って、片付けるの忘れてたぁ~!」
あぶないあぶない、こんなのお姉ちゃんに見られたらお楽しみが台無しよ!
私は急いで散らかった本たちを片付け始めた。
「っふう~、これでよし!
明日は学校帰りに毛糸を買ってこないと!」
「ただいま~。ごめんね遅くなって。
ちゃちゃっとご飯にしちゃうから!」
片付けが終わるころ、お母さんが帰ってきた。
私はご飯ができるまでテレビを見ることにした。
「できたよ~♪って、あれ?光は?」
「え?知らないけど」
「たぶん部屋にいるから、日向呼んできてくれる?」
「はーい」
コンコン
「お姉ちゃ~ん、ご飯できたよー」
いつもならすぐに出てくるのに、返事がない。
「お姉ちゃん?いないの?」
不振に思ってドアを開ける。
部屋は真っ暗だ。
いないのかと思って部屋を出ようとしたとき、ベッドの方でなにかがもぞっと動いた。
「お姉ちゃん?」
近寄ってみると、お姉ちゃんがベッドで寝ていた。
「え…」
お姉ちゃんの頬には涙の筋がいくつもついていて、泣きつかれて寝てしまった、という感じだった。
「お姉ちゃん…」
その寝顔が痛々しくて、悲しくなった。
お姉ちゃんのサラサラの髪をなでる。
いつも冷静で強気のお姉ちゃんが泣くなんて…
いったい何がそんなにお姉ちゃんを苦しめたんだろう…
悔しい……
なにも知らずにクリスマスで浮かれてた自分が。
お姉ちゃんに相談してもらえなかった頼りない自分が。
「うぅ…日向……?」
お姉ちゃんが目を覚ます。
しばらくぼーっとしていたが、やがて何かを思い出したように苦しそうな顔になった。
「あ、ごめんね起こしちゃって。
ご飯ができたから呼びにきたんだけど…食べる?」
「……お腹空いてないからいい。」
「そっか、わかった。」
立ち上がろうとすると、服がちょっと重い。
「?」
よく見ると、お姉ちゃんが私の服の裾をきゅっと握っていた。
「お姉ちゃん?どうしたの?」
「あのね、日向…」
「うん」
「…っ、やっぱなんでもない」
お姉ちゃんは悲しそうな目で私を見ていたけれど、結局なにも言わずに力なく笑って私の服を離した。
今、なにを言いかけたんだろう…
でも、もうなにも言ってくれなそうだったので私は大人しく部屋を出た。