2.光side
「いってきまーす!」
「いってきます」
私と日向は同じ高校に通っているので毎朝二人で家を出る。
私の高校は偏差値が高いから、日向がここを受験すると言い出した時は両親からすごく反対されていた。
でもなぜか日向は頑として譲らず、
「一生懸命勉強するから!お願い受けさせて!」
と両親に頼み込み、その言葉通り必死になって勉強した。
両親もその姿勢を見て折れてくれて、日向は無事に合格した。
日向の合格を知らされた時は、冷静を装って
「そう、おめでとう」
とか言っていたけど、あの時私は日向以上に喜んでいたと思う。
大好きな日向と同じ学校に通えるなんて、嬉しいに決まってる。
そんなことを思い出して幸せを噛みしめていたら、日向が話しかけてきた。
「あ、息が白くなる。はやく雪降らないかな」
あぁ、そういえば日向は雪が大好きだったなぁ。
夢中で雪で遊んで、指先を真っ赤にして「つめた~い!」って言いながら笑う日向を思い出したら愛しくて抱きしめたい衝動にかられる。
でもそんなことはできない。
私達は姉妹だから。この気持ちを日向にさとられるわけにはいかないんだ。
あぁ、でもそんなに可愛いと我慢できなくなっちゃうから、それ以上私に近づかないで…
「そうね」
日向と距離を置くために、私はできるだけ素っ気なく返す。
本当はもっと優しくしたいし、仲良くしたい。
でも仲良くなればなるほど、埋まることのない距離に気付いて苦しくなってしまうから。
「あっ…!」
突然、日向が声をあげる。
つまづいてバランスを崩したのだ。
私はとっさに手が出る。
日向のお腹のあたりに腕をまわして抱き寄せて、なんとか 転ぶのを防いだ。
「っもう…!気をつけて歩きなさいよ!」
つい、きつい口調になってしまう。
でも抑えきれなかった。
だって日向が怪我をしたらと思うとゾッとして、立ってられないくらいなのに…
そんな私の気も知らずに無用心な日向に腹が立ったから。
「ご、ごめん…」
しゅんとして項垂れる日向。
そんな顔させたかったわけではないのに…
笑っててほしいから怒ったのに…
どうしてこうも、うまくいかないのだろう。