1.夢なら覚めないで
晴れて両想いになった二人ですが、めでたしめでたし、とはいきません。
ほんとうに大変なのは付き合ってからですよねやっぱり。
と、いうわけで続編スタートです。
これは夢なんだろうか。
「大好きよ、日向」
ずっと欲しくて欲しくて焦がれていた言葉を、今 こんなに簡単に聞くことができる。
その柔らかい髪も、白い手も、愛おしい笑顔も、全然が私のものだよって言ってくれる。
私には日向だけって抱きしめてくれる。
ついこの間まであんなに辛くて悲しくて、死のうとまでしていたのに、この変わりようはなんなんだろう。こんなに幸せでいいの?
「…日向」
「ん?どうしたの、お姉ちゃん」
気がつけばお姉ちゃんは私の服の裾をきゅっと握って、なにやら恥ずかしそうに俯いてしまっている。
しばらくモジモジしていたけど、やがて意を決したように顔をあげて真っ直ぐに私を見つめる。
「その、きっ、キス…してほしいなって…」
うわわ、耳まで真っ赤だ。
やけに恥ずかしがってると思ったらそーゆうことか。
てゆうかお姉ちゃん、もっと恥ずかしい台詞(愛してる。だとか、あなただけ。とかいう歯の浮くような台詞)とかはさらっと言うくせに、キスだけはすごく恥ずかしがるのはどういうわけなんだろう。
告白されたときは、勢いでキスした感じだから気づかなかったけど、お姉ちゃんてばめちゃめちゃ照れ屋さんじゃん。
でもそういうところ、すごく可愛い。いつもクールでかっこいいイメージが強いだけに、そのギャップは殺人的だ。
「いいよ、目を閉じて?」
「うん…」
素直に目を閉じるお姉ちゃんに顔を近づける。
あ、いい匂い。でもその匂いを味わう間もなく唇に柔らかいものが触れる。
お姉ちゃんの唇だ…やばい…幸せ。
葵と数えきれないほどしてきたはずなのに、お姉ちゃんとのキスは全然違う。
すごく幸せで、どきどきして、とろけちゃいそう…
「っん…はあっ、今日はこれでおしまい。」
もっとお姉ちゃんを感じていたいけど、これ以上したら私も理性が持たなそうなので体を離す。
「あっ…」
唇が離れたとき、お姉ちゃんが悲しそうな顔をした。
わかってるよ。私だってまだ離れたくない。でも…
「そろそろお母さんが帰ってきちゃうよ」
私は精一杯の笑顔でそう言うと、逃げるように自分の部屋へと向かった。
「日向…」
後ろから聞こえるお姉ちゃんの悲しそうな声が胸にぐさぐさ刺さって痛いけど、私は振り返らなかった。
「はぁ…」
部屋に入った途端、ため息がでた。
なにをやっているんだろう、私は。
せっかくお姉ちゃんと両想いになれて、すごくすごく嬉しいはずなのに。
それなのに、お姉ちゃんに近付きすぎるのが怖いなんて…
たぶん、私はこの状況が未だに信じられていないんだろう。
お姉ちゃんに愛されて、あまりにも幸せで、夢みたいで。だからほんとに夢なんじゃないかって思っちゃうんだ。
朝 目が覚めたらすべてがなかったことになってるんじゃないかって、思ってしまうんだ。
もしそうなったら私は、きっと寂しくて悲しくて壊れてしまうんだろう。もう本当に生きてる意味がなくなってしまうんだろう。
だから、この幸せにのめり込むのが怖い。
失ってしまった時にどうなるかが怖い。
もし夢なら、もうずっと覚めないでほしい。ずっとずっと、死ぬまで目を覚ましたくない。
ああ、神様でも仏様でも、誰でもいいからこの夢を覚まさないで。私達を引き離さないで。
「怖い…怖いよ、お姉ちゃん…。」
幸せすぎて逆に不安…
ちょっと羨ましいしいですw




