14.光side
「……。」
私は今、ある包みを前にして固まっていた。
「これって確か、クリスマスの時に日向が落とした……」
そう、あのプレゼントの包み。
日向に返すタイミングを失って、ずっと忘れていたものが、部屋の掃除をしていたら出てきたのだ。
「どうしよう…日向も忘れてるだろうし今さら返してもね……あっ!」
考えながらリボンを指に巻きつけていじっていたら、リボンがほどけてしまった。
慌てて戻そうとするけど、なかなか元のように綺麗にならない。
私はイライラしてきて
「ま、いーじゃない。日向が落とした時点でもう誰のものでもないんだし…」
リボンを結ぶのを諦めて包みを投げ出した。
ばさっ…
床に落ちた包みは、落下の衝撃で中身が飛び出してしまった。
「!?」
包みから飛び出したあるものを見て、心臓が大きく跳ねた。
包みにはマフラーと、手紙がいっしょに入っていて、宛先のところに『榊 光様』と書いてあったから。
私は慌ててその手紙を拾い上げ、もう一度宛先を確認する。
「私…に?」
震える指で、手紙を開く。
『 お姉ちゃんへ
ほんとうは、直接口で伝えたかったけど、やっぱり恥ずかしいので手紙で言います。
じつは、ずっと前からお姉ちゃんに隠していることがあるんです。
ずっと隠してきたけど、もうそろそろ隠すのも辛くなってきたので、言ってしまおうと思います。
驚かないで聞いてください。
お姉ちゃんのことが好きです。
女同士だし、妹だし、おかしいことだって分かってます。
でも好きなんです。
どんな返事でもかまいません。お返事待ってます。
日向。』
読み終わった私の頬を、涙が伝う。
「う…そ…」
すごく遠回りして、やっと届いたラブレターには、私がずっとずっと欲しかった言葉が書かれていて。
あのクリスマスの日、私たちの気持ちは一緒だったんだ…
でも、私が彼氏ができたと言ったから、日向は私に気持ちを伝えることができなかったのか。
「まだ、間に合うかしら…」
あの後 日向は葵ちゃんと付き合いだしたみたいだけど、私への気持ちはもう残ってないのかな。
もし、まだ間に合うなら…ううん、たとえ日向の気持ちが変わってしまっていても。
「日向に、返事をしなくちゃ」
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日向の部屋にいくと、日向はこちらに背を向けて立っていた。
「日向」
声をかけても、返事がない。
そっと近づいて、日向の手元を見たとき、全身の血が凍りついた。
「やめてっ!」
とっさに日向の手からカッターを奪う。
日向は一瞬驚いた顔をしたけど、すぐに私を睨み付けた。
「っ!返してよ!もう生きてたくなんかないの!」
その瞳からは、言葉にできない悲しみが伝わってくる。
あの明るい日向が、死のうとするなんて…
いったいどれほどの痛みを味わってきたのだろう。
悲しくて、悔しくて、涙が溢れてくる。
「どうして…そんなこと言うの…?」
「どうだっていいでしょ、そんなこと!お姉ちゃんには関係ない!」
「関係あるわよ!日向に死なれたら私っ…生きていけない」
お願いだから、死にたいなんて言わないで。
日向は私のすべてなのに…いなくならないで。
「いい加減なこと言わないで!私のことなんて、どうでもいいくせに!それで私が自殺をやめたら、また彼氏のところに行くんでしょ?私を一人にするんでしょ?だったら…中途半端に優しくしないで!気安く死ぬななんて言わないでよ!」
あぁ、この子をこんなに苦しめたのは、私なんだ。
私が自分の気持ちに嘘をつき続けたばっかりに、日向を一人にしてしまったんだ。
ごめんね、ごめんね日向…弱いお姉ちゃんでごめん。
でも、もう逃げないから。
私は優しく日向を抱きしめる。
「いかないよ。私はどこにも行かない。ずっと日向の側にいるから。」
しっかりと、日向に届くように。
「絶対に日向をひとりになんかしない。」
日向の体から力が抜けていく。
「ほんとうに、ずっと側にいてくれるの…?」
「うん、絶対。というか、側にいさせて下さい。」
日向と目を合わせて、あの手紙の返事を告げる。
「あなたが、好きだから」
長い間、隠して抑え込んできた気持ちが溢れ出して、私は日向の唇にキスをした。
私たちの、長い長い片想いの終わりを告げるキス。
そして、二人の始まりのキスを。
一応ここで終わり。ハッピーエンドです。
まだ続けられたら、後日談も載せるかもしれません。




