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片想い  作者:
片想い
28/30

14.光side

「……。」


私は今、ある包みを前にして固まっていた。


「これって確か、クリスマスの時に日向が落とした……」


そう、あのプレゼントの包み。

日向に返すタイミングを失って、ずっと忘れていたものが、部屋の掃除をしていたら出てきたのだ。


「どうしよう…日向も忘れてるだろうし今さら返してもね……あっ!」


考えながらリボンを指に巻きつけていじっていたら、リボンがほどけてしまった。

慌てて戻そうとするけど、なかなか元のように綺麗にならない。

私はイライラしてきて


「ま、いーじゃない。日向が落とした時点でもう誰のものでもないんだし…」


リボンを結ぶのを諦めて包みを投げ出した。


ばさっ…


床に落ちた包みは、落下の衝撃で中身が飛び出してしまった。


「!?」


包みから飛び出したあるものを見て、心臓が大きく跳ねた。


包みにはマフラーと、手紙がいっしょに入っていて、宛先のところに『榊 光様』と書いてあったから。


私は慌ててその手紙を拾い上げ、もう一度宛先を確認する。


「私…に?」


震える指で、手紙を開く。


『 お姉ちゃんへ

ほんとうは、直接口で伝えたかったけど、やっぱり恥ずかしいので手紙で言います。

じつは、ずっと前からお姉ちゃんに隠していることがあるんです。

ずっと隠してきたけど、もうそろそろ隠すのも辛くなってきたので、言ってしまおうと思います。

驚かないで聞いてください。




お姉ちゃんのことが好きです。




女同士だし、妹だし、おかしいことだって分かってます。

でも好きなんです。

どんな返事でもかまいません。お返事待ってます。



日向。』



読み終わった私の頬を、涙が伝う。


「う…そ…」


すごく遠回りして、やっと届いたラブレターには、私がずっとずっと欲しかった言葉が書かれていて。

あのクリスマスの日、私たちの気持ちは一緒だったんだ…

でも、私が彼氏ができたと言ったから、日向は私に気持ちを伝えることができなかったのか。


「まだ、間に合うかしら…」


あの後 日向は葵ちゃんと付き合いだしたみたいだけど、私への気持ちはもう残ってないのかな。

もし、まだ間に合うなら…ううん、たとえ日向の気持ちが変わってしまっていても。


「日向に、返事をしなくちゃ」




~~~~~~~~~~~~~~~~~~



日向の部屋にいくと、日向はこちらに背を向けて立っていた。


「日向」


声をかけても、返事がない。

そっと近づいて、日向の手元を見たとき、全身の血が凍りついた。


「やめてっ!」


とっさに日向の手からカッターを奪う。

日向は一瞬驚いた顔をしたけど、すぐに私を睨み付けた。


「っ!返してよ!もう生きてたくなんかないの!」


その瞳からは、言葉にできない悲しみが伝わってくる。

あの明るい日向が、死のうとするなんて…

いったいどれほどの痛みを味わってきたのだろう。

悲しくて、悔しくて、涙が溢れてくる。


「どうして…そんなこと言うの…?」

「どうだっていいでしょ、そんなこと!お姉ちゃんには関係ない!」

「関係あるわよ!日向に死なれたら私っ…生きていけない」


お願いだから、死にたいなんて言わないで。

日向は私のすべてなのに…いなくならないで。


「いい加減なこと言わないで!私のことなんて、どうでもいいくせに!それで私が自殺をやめたら、また彼氏のところに行くんでしょ?私を一人にするんでしょ?だったら…中途半端に優しくしないで!気安く死ぬななんて言わないでよ!」


あぁ、この子をこんなに苦しめたのは、私なんだ。

私が自分の気持ちに嘘をつき続けたばっかりに、日向を一人にしてしまったんだ。

ごめんね、ごめんね日向…弱いお姉ちゃんでごめん。

でも、もう逃げないから。


私は優しく日向を抱きしめる。


「いかないよ。私はどこにも行かない。ずっと日向の側にいるから。」


しっかりと、日向に届くように。


「絶対に日向をひとりになんかしない。」


日向の体から力が抜けていく。


「ほんとうに、ずっと側にいてくれるの…?」

「うん、絶対。というか、側にいさせて下さい。」


日向と目を合わせて、あの手紙の返事を告げる。


「あなたが、好きだから」


長い間、隠して抑え込んできた気持ちが溢れ出して、私は日向の唇にキスをした。



私たちの、長い長い片想いの終わりを告げるキス。


そして、二人の始まりのキスを。


一応ここで終わり。ハッピーエンドです。


まだ続けられたら、後日談も載せるかもしれません。

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