14.日向side
どうしてこんなことになったんだろう…
ついさっき葵に振られた。
なにがいけなかったのかも分からず、泣いてすがったが葵はいっさい聞き入れようとしなかった。
なんで…?
私には葵しかいないのに…葵だけなのに…
葵なしでこれからどうやって生きていけというんだろう?
葵がいなければ私は……ひとりぼっちだ
「死んじゃおっかな」
ふと頭に浮かんだ考えを口に出してみると、それはとても魅力的な案に思えた。
そう。葵に捨てられた今、生きていてもなんの意味もないんだ。
死ぬことよりも、このまま生きていくことのほうが何倍も恐ろしく感じる。
私はふらふらと立ち上がり、机の引き出しからカッターを取り出すと、その刃を出して自分の手首にあてがってみた。
「やめてっ!」
ひとおもいに切り裂こうとした時、いつの間に来たのかお姉ちゃんからカッターを取り上げられた。
「っ!返してよ!もう生きてたくなんかないの!」
そう言ってカッターを取り返そうとすると、お姉ちゃんの目から涙が零れた。
「どうして…そんなこと言うの…?」
「どうだっていいでしょ、そんなこと!お姉ちゃんには関係ない!」
「関係あるわよ!日向に死なれたら私っ…生きていけない」
その一言に私の中でなにかが爆発した。
「いい加減なこと言わないで!私のことなんて、どうでもいいくせに!それで私が自殺をやめたら、また彼氏のところに行くんでしょ?私を一人にするんでしょ?だったら…中途半端に優しくしないで!気安く死ぬななんて言わないでよ!」
もう自分が何を言っているのかも分からない。
ただ ただ 頭の中がぐちゃぐちゃで、お姉ちゃんに向かって叫ぶように言葉をぶつけた。
ぎゅっ…
怒鳴り散らす私を、お姉ちゃんの腕が抱きしめた。
私は驚いてなにも言えなくなってしまう。
「いかないよ。私はどこにも行かない。ずっと日向の側にいるから。」
優しく語りかけるように
「絶対に日向をひとりになんかしない。」
お姉ちゃんの声の優しさに、抱きしめられてる腕の温かさに、私のトゲトゲした心は溶かされていった。
いつの間にか私も泣いていて。
「ほんとうに、ずっと側にいてくれるの…?」
「うん、絶対。というか、側にいさせて下さい。」
そう言うと、お姉ちゃんは私を抱きしめる腕をゆるめて私を真っ直ぐ見つめ、
「あなたが、好きだから」
私の唇に優しくキスした。




