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片想い  作者:
片想い
22/30

12.日向side

朝、久しぶりにすっきり目が覚めた。


今日は待ちに待ったクリスマス

髪よし!服よし !プレゼントもよし!


「これを渡して、お姉ちゃんに告白。そしてゆくゆくは……っなんちゃってねぇ~!うふふ」


プレゼントを背中に隠し、朝からハイテンションで、お姉ちゃんの部屋へと向かう。


「お姉ちゃ~ん!メリークリスマス!」


勢いよくドアを開けると、まだ寝ていると思ったお姉ちゃんは既に起きていて、いつもよりもおめかしまでしていた。


かっ、可愛いぃ~…!!!


「お姉ちゃん、気合い入ってるねぇ~

とっても可愛いよ!さっ、いこ!ご馳走もできてるよ!」


と言うと、


「あ、ごめんね。今年のクリスマスは彼氏とすごす約束してるから」



……………へ?


今、彼氏って言った?


「え、えええええええええっ!?」


ま、またまたぁ~、これはきっと冗談だ。

お姉ちゃんは無表情だからわかりにくいけど、冗談なんだ。


「ちょっと、いきなり大声出さないでよ。そんなに驚くことでもないでしょう?」

「え………彼氏って…ほ、ほんとに?」

「嘘ついてどうするのよ」


う、嘘だ………


「お姉ちゃん、その人のこと…好きなの?」


少しの間があったけど、お姉ちゃんははっきり答えた。


「あたりまえでしょう、彼氏なんだから」




目の前が、真っ暗になった。





~~~~~~~~~~~~~~~~~~





気がつくと、私は近所の公園のベンチにひとりで座っていた。


あれ?なんで私こんなところにいるんだっけ?


あぁ、そっか…お姉ちゃんの彼氏の話を聞いて走って逃げ出したんだ…



「お姉ちゃん、今ごろ彼氏さんと楽しくすごしてるのかな…」


どんな人なんだろ…

今まで誰の告白も受けなかったお姉ちゃんが、好きになった人……


「…っ私だって、私だってお姉ちゃんが好きだったのに!ずっとずっと、お姉ちゃんだけを見てきたのにっ…!」


悔しくて、涙が溢れてくる。


こんなことなら、もっと早くに告白しておくんだったな。

いや、あの激戦を勝ち抜いた彼氏さんに敵うわけないか…


…そもそも私なんて、女だし、妹だし、

最初からスタートラインにすら立ててないんだよね…。


「もし、私が男で、妹じゃなかったら…

私にもチャンスはあったのかな?お姉ちゃん…」


「もし」なんて考えても無駄だってわかってるけど、考えてないと辛くて辛くてどうにかなってしまいそうだった。



私は膝を抱えて泣き続けた。



ジャリ…


足音に顔を上げると、葵が心配そうに立っていた。


「…葵、どしたのこんなところで」

「日向こそ、どーしたのよ!そんなに泣いて!」


葵に優しく抱きしめられる。

あぁ、温かい。

少し落ち着いた私は、心配そうな親友に話はじめた。


「あのね、失恋したんだぁ、私。」

「っ…。そうだったの…」

「告白もできなかったよ。する前に言われちゃったの…彼氏ができたって」

「彼氏…?」

「うん、私の好きな人ってね、女の子だったの。おかしいでしょ?」


力なく笑うと、


「っそんなことない!」


すごい勢いで否定してくれて。


「おかしくなんかないよ。だって、私も…」


葵は少し俯いて、それから真っ直ぐ私の目を見て言った。


「私も、女の子に恋してるから…」


葵の顔がだんだん近づいてきて、私の唇になにかが触れた。


「日向、あなたが好き…」


一瞬遅れて、キスされたんだと悟る。


「……え?わ、私…?」


戸惑う私に葵はさらに言う。


「日向が別の人を好きでもいい!その人を忘れられるように頑張るし、振り向いてもらえるように頑張るから!

だからっ……お願い、私を側にいさせて…」


最後のほうはもう泣き出してしまっていた。


「ひ……なた…?」


気がつくと私は葵を抱きしめていた。

私と同じように、叶わない恋に苦しむ親友の傷を癒したいと思った。

そして、私の傷も、癒してもらいたくて…


傷の舐め合いかもしれないけど、それでも一人でいるよりはずっとましだと思った。

一人でいたら、この寂しさには耐えられないと思ったから



私は葵を、受け入れた。


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