12.日向side
朝、久しぶりにすっきり目が覚めた。
今日は待ちに待ったクリスマス
髪よし!服よし !プレゼントもよし!
「これを渡して、お姉ちゃんに告白。そしてゆくゆくは……っなんちゃってねぇ~!うふふ」
プレゼントを背中に隠し、朝からハイテンションで、お姉ちゃんの部屋へと向かう。
「お姉ちゃ~ん!メリークリスマス!」
勢いよくドアを開けると、まだ寝ていると思ったお姉ちゃんは既に起きていて、いつもよりもおめかしまでしていた。
かっ、可愛いぃ~…!!!
「お姉ちゃん、気合い入ってるねぇ~
とっても可愛いよ!さっ、いこ!ご馳走もできてるよ!」
と言うと、
「あ、ごめんね。今年のクリスマスは彼氏とすごす約束してるから」
……………へ?
今、彼氏って言った?
「え、えええええええええっ!?」
ま、またまたぁ~、これはきっと冗談だ。
お姉ちゃんは無表情だからわかりにくいけど、冗談なんだ。
「ちょっと、いきなり大声出さないでよ。そんなに驚くことでもないでしょう?」
「え………彼氏って…ほ、ほんとに?」
「嘘ついてどうするのよ」
う、嘘だ………
「お姉ちゃん、その人のこと…好きなの?」
少しの間があったけど、お姉ちゃんははっきり答えた。
「あたりまえでしょう、彼氏なんだから」
目の前が、真っ暗になった。
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気がつくと、私は近所の公園のベンチにひとりで座っていた。
あれ?なんで私こんなところにいるんだっけ?
あぁ、そっか…お姉ちゃんの彼氏の話を聞いて走って逃げ出したんだ…
「お姉ちゃん、今ごろ彼氏さんと楽しくすごしてるのかな…」
どんな人なんだろ…
今まで誰の告白も受けなかったお姉ちゃんが、好きになった人……
「…っ私だって、私だってお姉ちゃんが好きだったのに!ずっとずっと、お姉ちゃんだけを見てきたのにっ…!」
悔しくて、涙が溢れてくる。
こんなことなら、もっと早くに告白しておくんだったな。
いや、あの激戦を勝ち抜いた彼氏さんに敵うわけないか…
…そもそも私なんて、女だし、妹だし、
最初からスタートラインにすら立ててないんだよね…。
「もし、私が男で、妹じゃなかったら…
私にもチャンスはあったのかな?お姉ちゃん…」
「もし」なんて考えても無駄だってわかってるけど、考えてないと辛くて辛くてどうにかなってしまいそうだった。
私は膝を抱えて泣き続けた。
ジャリ…
足音に顔を上げると、葵が心配そうに立っていた。
「…葵、どしたのこんなところで」
「日向こそ、どーしたのよ!そんなに泣いて!」
葵に優しく抱きしめられる。
あぁ、温かい。
少し落ち着いた私は、心配そうな親友に話はじめた。
「あのね、失恋したんだぁ、私。」
「っ…。そうだったの…」
「告白もできなかったよ。する前に言われちゃったの…彼氏ができたって」
「彼氏…?」
「うん、私の好きな人ってね、女の子だったの。おかしいでしょ?」
力なく笑うと、
「っそんなことない!」
すごい勢いで否定してくれて。
「おかしくなんかないよ。だって、私も…」
葵は少し俯いて、それから真っ直ぐ私の目を見て言った。
「私も、女の子に恋してるから…」
葵の顔がだんだん近づいてきて、私の唇になにかが触れた。
「日向、あなたが好き…」
一瞬遅れて、キスされたんだと悟る。
「……え?わ、私…?」
戸惑う私に葵はさらに言う。
「日向が別の人を好きでもいい!その人を忘れられるように頑張るし、振り向いてもらえるように頑張るから!
だからっ……お願い、私を側にいさせて…」
最後のほうはもう泣き出してしまっていた。
「ひ……なた…?」
気がつくと私は葵を抱きしめていた。
私と同じように、叶わない恋に苦しむ親友の傷を癒したいと思った。
そして、私の傷も、癒してもらいたくて…
傷の舐め合いかもしれないけど、それでも一人でいるよりはずっとましだと思った。
一人でいたら、この寂しさには耐えられないと思ったから
私は葵を、受け入れた。




