11.光side
最近 日向とは登校する時とご飯の時以外で顔をあわせていない。
家にいるときはずっと部屋にこもってマフラーを編んでいる。
私の存在なんて忘れてしまったんじゃないかと錯覚していまうほど、マフラーを作ることしか見えていない。
マフラーも完成に近づいて、もうすぐクリスマス。
日向はその日に葵ちゃんにマフラーをプレゼントするのだろう…
私は涙も枯れ果てて、もうどうでもいいとさえ思い初めていた。
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「榊、ちょっと」
佐々木に呼ばれて顔をあげる。
「なに?」
「ん、ちょっと付いてきて」
「?」
私は黙って付いていくと、校舎の端の、あまりつかわれていない水道のところで佐々木は止まった。
「佐々木?どうしたの?」
いつもと様子のちがう佐々木が心配になって聞いてみる。
「あのさ…、俺っ、ずっと前から榊のこと好きなんだ!
付き合って…ほしいんだけど……」
「え…?」
予想外の発言に驚いて固まってしまう。
だって佐々木はずっと気の許せる友達で、これからもそうだと思っていたから。
無言の私に焦ったのか、佐々木は必死にまくしたてる。
「お前が恋愛とか興味ないのは知ってるけどさ、
俺のこと好きじゃなくてもいいから!
そのうち…好きになってくれればいいから…ダメかな?」
だんだん尻すぼみになってうなだれる佐々木に、
「考えさせて」
思わずそんな言葉が口をついて出た。
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佐々木と別れた後、私はひとりさっきのことについて考えていた。
どうして考えさせてなんて言ったんだろう?
今までは考えるまでもなく断っていたのに…
きっと、私はもう日向のことを諦めかけているんだろう。
どうせ叶わないなら、想っていてもしかたない。だから佐々木の告白を受けてもいいかなという考えが生まれたんだ。
「ただいまー!」
日向が帰ってきた。
おかえりと声をかけても、聞こえなかったのか私の方を見もせずに自分の部屋へ駆け込んでいった。
その態度が、私の背中をおす。
「日向を、忘れよう」
声に出したとたん、すごく胸が痛んだ。
でも、この痛みも今だけ…
「佐々木に返事しなきゃ…」
携帯を取り出して佐々木の番号を押そうとしたことろで、ふと手を止める。
その前に、もう一度日向に会って自分の気持ちにお別れをしてからにしようと思ったから。
コンコン
日向の部屋のドアをノックしても返事がない。
「日向?入るよ」
ドアを開けると、日向は完成したマフラーを抱きしめて眠っていた。
その寝顔が可愛いくて、頭をなでる。
ふわふわの髪が気持ちいい。
「っ……!!!」
気がつくと、枯れたと思っていた涙があふれていた。
そこからはもう止められなくて、日向が起きるかもしれないのに、日向の体をきつく抱きしめて泣いた。
「さよなら」と何度も呟きながら。
さいわい日向が目を覚ますことはなく、泣き止んだ私は自分の部屋に戻ってさっき押しかけた番号に今度こそ電話をかける。
「あ、佐々木?
うん、さっきの告白、受けようと思って」




