9.光side
「ただいま」
帰宅すると、今日も日向の出迎えはない。
靴はあるから、帰ってるとは思うんだけど…
なんだか最近 日向との時間が減っている気がする。
日向が好きな人と結ばれたら、もっと減るんだろうか…
「さみしいな…」
夕飯まではまだ時間があるし、日向の顔が見たくなって、日向の部屋へと向かった。
「日向、いるの?」
「うっわぁ!の、ノックぐらいしてよ!」
ドアを開けたら、めったに怒らない日向に怒られてしまってちょっと戸惑う。
と、そこで日向が後ろ手にマフラーを隠しているのが見えて、納得する。
あぁ、葵ちゃんのマフラーを作っていたところを見られたくなくてそんなに慌ててるのか…
葵ちゃんのこととなると、そんなに必死になるのね…
「ごめんね、次から気をつけるから」
日向がどうしようもなく葵ちゃんに夢中なのはもう分かってしまったけど。
でも今は私だって日向と一緒にいたい。
私は日向のベッドの端に腰かけた。
すると日向は困ったような顔をして
「えっと、なにしにきたの?」
え……?
そんなこと、言われると思わなかった。
理由がなくちゃ来ちゃいけないの?
だって前までは私が部屋にいくと喜んでくれたじゃない。
二人でなんでもない話をしたりしていたのに…
「う、うん、特に何しにってわけでもないんだけど…」
なんて言えばいいんだろう?
どんな用事なら一緒にいさせてくれるの?
私は日向との時間をつくるため、必死になって考える。
考えていたのに…
「特に用がないんだったら後でにしてもらっていい?
私今いろいろ忙しいから」
そのひとことで私は突き放された。
頭の中がぐちゃぐちゃで、なんて返事をして、どうやって部屋を出たかわからない。
気がつくと私は自分の部屋のベッドの上でうずくまっていた。
「葵ちゃん…」
あの子の存在が日向をこんなにも変えてしまった。
私から日向を引き離したんだ。
頭に浮かんだ葵ちゃんの顔が歪む。
「っ…!」
私の胸の中に、真っ黒なモヤがかかるのを感じた。
そう、これは…この感情は…
嫉妬。




