9.日向side
学校が終わると、私は真っ直ぐ帰宅した。
マフラーを編むために。
「っよし!今日も頑張るぞぉ~!」
自分の部屋に入ると、さっそくとりかかかった。
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「日向、いるの?」
マフラー作りに夢中になっていると、お姉ちゃんが部屋に入ってきた。
「うっわぁ!の、ノックぐらいしてよ!」
慌てて編みかけのマフラーを隠しながら言うと、お姉ちゃんはびっくりしたような寂しそうな顔をしていた。
…お姉ちゃんってこんなに表情豊かだったっけ??
「ごめんね、次から気をつけるから」
そう言うとお姉ちゃんはおずおずと私のベッドの端に腰かけて、私を見た。
何しに来たんだろう。
慌てて隠したから、この体勢かなり不自然なんですけど。腕痺れそうなんですけど。
早く用件すまして帰ってくれないかな~…
「えっと、何しにきたの?」
「う、うん、特に何しにってわけでもないんだけど…」
お姉ちゃんにしては珍しく、歯切れの悪い返事。
用事がないなら早く帰ってほしい。
そろそろ私の腕も限界だ。
「特に用がないんだったら後でにしてもらっていい?
私今いろいろと忙しいから」
「えっ…。うん、ごめんね邪魔して…」
お姉ちゃんはなんだか悲しそうな顔をしたけど、すんなり自分の部屋へと帰っていった。
「っふう~」
お姉ちゃんが部屋を出て、やっと元の体勢に戻って一息ついた。
それにしてもなんだったんだろう?
なんだか最近お姉ちゃんの様子がおかしいような…
「あ!マフラー踏んじゃってた!」
危ない危ない。
せっかく頑張って作ったのに、台無しになるところだった。
「さっ!続き作らなくちゃ!」
私はまたマフラー作りに熱中しはじめ、さっきのお姉ちゃんの様子がおかしかったことなど、いつのまにか頭から消えていた。




