8.光side
昨日はあまり眠れなかった。
目が覚めると日向はまだ寝ていて、珍しく私が日向を起こしてこいと母に頼まれた。
日向の部屋に入ると、机の上のマフラーが目に留まった。
「っ……」
日向は好きなことに関しては集中力がすごいから、一晩中編んでいたのだろう。
疲れた、でも幸せそうな顔でぐっすり眠っていた。
「日向にこんなに一生懸命編んでもらえるなんて、幸せな人もいたものね。」
羨ましいな…
日向にこんなに愛されて、その人はちゃんと日向を受け入れるんだろうか?
こんなに恵まれていながら、日向を振ったりする贅沢なやつは、私は許せないだろう。
私はこんなに日向を好きなのに、どんなに願っても日向が私を振り向くことなんてないのだから。
「うぅ~ん」
日向が目を覚ましかけている。
そうだ、私は日向を起こしにきたんだった。
「日向、日向起きない。学校遅れるわよ」
やりきれない気持ちを振り切って、私は日向を起こしにかかった。
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「じゃ、また後でね」
そう言って日向が手を振る。
私も手を振って教室に戻ろうとしたとき、
「ひぃ~なたぁ~♪」
「うわ!」
日向の背後から、葵ちゃんが思いっきり抱きつく。
日向はそれに抗議しつつも、あまり嫌がってる感じはしない。
…しっかりと手を繋いでるし。
そんな二人のイチャつきを見て、呆然として動けないでいると、
「あ、光先輩、おはようごさいまーす」
葵ちゃんが挨拶してきた。
まるで私の存在なんか忘れていたかのように。
「え?」
日向まで、お姉ちゃんまだいたの?とでも言うように驚いた声をあげる。
完全に二人の世界だったのね…。
「え、えぇおはよう、葵ちゃん。
日向も、またね。」
私はいたたまれなくなって、逃げるように教室へ向かった。




