8.日向side
「日向、日向起きない。学校遅れるわよ」
「うぅ~ん、まだ眠い…」
朝、お姉ちゃんが私を優しくゆさぶって起こしてくれる。
「って、お姉ちゃん!?」
「ちょっと、いきなり大声ださないで。びっくりするでしょう?」
お姉ちゃんは迷惑そうに整った眉をひそめる。
いや、なんでそんな普通に…
お姉ちゃんって朝弱くなかったっけ?…
「って今何時!?」
「だから大声ださないでって!」
「す、すいません」
だってびっくりするでしょ。
いつも私が起こしてあげてたのに。
時計を見たら寝坊ってわけでもなさそうだけど、いつもよりはちょっと遅い起床だった。
ふと机の上を見ると、編みかけのマフラーが目にはいった。
そっか、昨日はこれを作るのに夢中でつい夜更かししちゃったんだった。
だからいつもの時間に起きれなかったんだ。
「はやく支度しちゃいなさい。いつもより時間おしてるから。」
それだけ言うとお姉ちゃんは部屋を出ていった。
私は言われた通り、てきぱきと支度をすませ、お姉ちゃんの後を追った。
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「じゃ、また後でね」
学校に着き、いつも通り昇降口でお姉ちゃんと別れる。
「ひぃ~なたぁ~♪」
「わっ!」
まだお姉ちゃんに手を降っているところだったのに、とつぜん後ろから飛びかかられて転びそうになる。
もう毎度のことなので、飛びかかってきた犯人はわかっているけれど…
「はぁ…葵、その登場の仕方びっくりするからやめてよね」
「え~、だって日向の姿が見えたから、我慢できなくて♪」
「どんな理由だ」
なんか今日の葵はいつにもましてスキンシップが過剰な気がする。
さっきから手を握って離してくれないし…
「あ、光先輩、おはようごさいまーす」
「え?」
振り返ると、とっくに教室に行ったと思っていたお姉ちゃんが、まだそこに立って、唖然として私と葵を見ていた。
「え、えぇおはよう、葵ちゃん。
日向も、またね。」
それだけ言うとお姉ちゃんは早足で今度こそ教室へと向かっていった。




