level9 ボクっ子姫とトンカツ王子
小林、じゃなかった。トンカツ王子はボクに近づいて来た。
「姫さま、利き腕を差し出して下さい。」
メルヴィルさまに言われボクは右手を出した。
王子はボクの右手にキスをした。
「光栄です、ツバサ姫。今日はお招き下さりありがとうございます。」
「あ、はい。どういたしまして・・・」
王子は苦笑してメルヴィルさまはやっちまった感満載な顔をしている。
どういたしましては不味かったかな?
「姫さま、お手を・・・」
王子が手を差し出したので軽く握ると広間の中央に連れて行かれた。
音が再び鳴り出し皆が踊り出すとボク達も動き始める。
現実世界の社交ダンスみたいな踊りでもちろんボクは踊ったことはないけど王子が上手くリードしてくれた。
なんだかドキドキしてきた・・・
目の前にいるのは同級生の小林。
トンカツ王子なのに。
ボクは男なのに・・・・
曲が終わり飲み物や食べ物が置いてあるテーブルに行き椅子に座る。
椅子をメイドさんたちが引いてくれた。
また緊張してきて食べ物に手をつけそのまま食べる、よっぽどおかしかったのか王子が笑いだした。
「あっはっは、やっぱりツバサ姫は面白い方だ。気に入りましたよ。」
え?気に入った?
「実は白状しますとこの国の大臣から姫の婚約者にと言われたんです。なんでも王様は姫を溺愛していて嫁に出す気はなさそうだし姫は姫で帰ってこないしどうしたらよいかとね。」
呆気にとられ聞いていたボク。
「でもこうしてお会いするととても良い方だと思います、婚約者とかではなくまず友人から始めて頂けますか?ツバサ姫。」
「は、はい・・・トンカツ王子」
トンカツ王子って言っちゃった!
まあそんな雰囲気だったんだけど周りにはいい感じに見えたらしく策を練った大臣はお気に召したらしい。
でもそれを見ていた嫉妬に満ち溢れた目がボクらを見ていた・・・
「姫さま~そんなに笑わないで~嫉妬しちゃいます~」
ソナタさんだった!
更にその後ろで嫉妬していた人が・・・
「姫さま・・・その幸せな姿を見ると私のドMな性格が沸々としてきます・・・・」
マルチちゃんだった!
更に更にその後ろで悪意と危険な目付きで見ていた姿があったんだ。
「・・・・・」