第41話 幸子さん
いつもの学校。
いつも通り、授業を受けながら時間を潰し、いつの間にか放課後になってしまった。
今日は特に何かあるわけでもないし、チョコも部活だ。
別に部活が終わるまで待つっていう手もあることにはあるが、そこまでして一緒に帰りたいか?というとそうでもなかったりする。
というか、チョコがそういうのを嫌がる傾向があるからなるべくしないようにする。
汗の匂いとかを嗅がれるのが嫌らしい。俺にすればどうでもいい感じなんだけど。
カバンの中に弁当を入れ、廊下に出る。
今日は帰ったら適当にゲームをしよう。
「あ、俊悟くん!」
「ん?よぉ、さっきぶりだな」
「さっきぶりだね」
階段を降りていると後ろから有希の声がする。
HRが終わった直後からどこかに行っていたけど、まだ帰っていなかったらしい。
「もう帰るの?」
「まぁな。特にやることもないし」
「えぇー、彼氏なら待ってあげればいいのに。チョコちゃんも悲しむでしょ」
「あぁ、やっぱり知ってたのか。それ」
「まぁね。あ、そうだ。今日ファミレス行こうよ。その辺の話を聞きたい。もちろん、チョコちゃんに許可を得れればだけど」
「あいつがそんなの気にする奴かよ。いいぞ、校門で待ってる」
「わかった」
こうやって2人で話すなんて久しぶりな気がする。
やっぱり有希は俺とチョコの関係に気が付いていたらしい。まぁそうじゃなかったら週に1回はファミレスに行っていただろうけど。
俺は靴を履き替え、校門で待っているといつも通り、高級車が校門の前で止まる。
そして、これまたいつも通りの女性が降りてきた。
女性は俺の方をチラッと見ると、すぐに校舎の方へ顔を向ける。
相変わらず…なんというか…人間味を感じない人だ。
スタイルも良いし、顔も綺麗なのにあの表情の無さで台無しな気がする。
「いつもお嬢様がお世話になっています」
「へ?あ、いえ」
初めてだ。向こうから話しかけるなんて。
有希が居る時、居ない時に限らず、この人が話す所を見たことがなかったのに。
「お嬢様がこの学校に長くおられるのはあなたのおかげです。しかし、これ以上長く一緒にいるつもりですか?お嬢様はあなたと違って世界が違う方です」
「それは西条統二からの警告ですか?」
「いえ。私個人の意見です」
「俺があいつと一緒にいるのはただの友達だからです。金持ちだからとかそういう気持ちはすでに無いですよ」
「なら、改めて警告します。あの子に夢を与えないでください」
「俊悟く~ん、ごめんごめん。待たせちゃった」
「いや別に」
「ごめんなさい、幸子さん。いつも寄り道をさせてしまって」
「いえ。中へどうぞ」
車の中に促され、中に入る。
そこからは前と何も変わらず、今日あったことや思ったことを話しながらファミレスへと向かった。




