第4話 大宇宙クラスです!
「俊悟くん、どんな子が好きなの?」
今日もこのお嬢様は絶好調なほど、俺の平和な学校生活を崩しにかかってきている。
俺は頬杖を付きながら、明らかに嫌悪の目で有希を見ているのだがそんな視線は彼女に効果は無い。
「お前と真逆の人間」
「私の真逆かー、それじゃお淑やかな人かな」
「あぁそうだな。もっとお淑やかで常に男の2歩後ろを歩くような奴だな」
適当に話しながら早く授業が始まれと願い、時計を見る。
しかし、授業が始まるまであと5分もある。そして、次の授業は選択科目。
隣のAクラスである有希と俺のBクラスが同じになるのだ。
それも運悪く、俺と有希は同じ音楽を選択していた。
「俊悟さま、今日も空は青空ですね、うふふ」
「なんだいきなり気持ち悪いな」
「だから、大宇宙クラスの心の持ち主の私でもその気持ち悪いはダメだよ」
「き、も、ち、わ、る、い、な」
「ゆ、き、は、か、わ、い、い」
「お前、本当に頭大丈夫か?」
「あ、心配してくれるの?やっさしいなぁ」
「あぁ心配してるぞ。お前のそのへんてこな頭の構造は。世界の著名人が集まるようなパーティーでそんな頭の悪さを露呈したら日本の恥だからな」
「ほほぅ、俊悟くんはあの面白くもなんともないパーティーに興味があると」
「本当にあるのかよ」
お金持ちのイメージは毎週パーティーのイメージだったからさすがに驚く。
というか、こいつがドレスを着るとか…コントか何かだろうか?
「あるよ~。今週にある。あ、そうだ、そこでお母さんたちに紹介しないとね!」
「お前の頭の悪さをか?」
「違う違う。俊悟君を」
「あぁ、やっぱりお前の頭の悪さは大宇宙クラスだな」
「むふふ~、やっぱり俊悟君は機転が利くよねぇ。しょうもないお見合いなんて受けないといけないのかぁって憂鬱になってたけど。そっか、私の彼氏は俊悟くんだけだもんね。私に彼氏が居たらお見合いもしなくていいのか」
史上最高の名案を思いついたかのように笑いながら携帯を取り出し、凄まじいスピードで文字を打っていく。
そして、打ち終わった文章を俺に見せてきた。
-お母さん、今週のパーティーで伝えたいことがあるから。
パーティーが始まる前に時間を作って。紹介したい人がいます。-
と書かれた文章。
そして、その文章のまま送信ボタンに指を伸ばす。
「ちょ、待て!」
「あんっ、もー乱暴に襲っちゃだーめ」
「てめぇ、人の人生粉々にする気か」
「はい、そーしん!」
有希の指が送信ボタンを押す。
そして、数秒間、長い長い数秒間が訪れ、送信完了の文字が並ぶ。
終わった…いや、まだ大丈夫だ。こいつは俺の名前を伝えていない。つまり、回避可能なのだ。
今までにないほど頭が冴えてくる。
しかし、冴えに冴えている所に俺の携帯がプルプルとメールが来た事を知らせる。
-お母さん、今週のパーティーで伝えたいことがあるから。
パーティーが始まる前に時間を作って。紹介したい人がいます。-
メールの内容は先ほど有希が見せてきた内容と全く同じ。
一瞬何が起きたのか理解はできなかったが…10秒間の間に理解する。
こいつは母親に送るように見せて、俺に送って来たのだ。
有希はしてやったりと満面の笑みを浮かべながらVサインをする。
そのVサインは俺の怒りゲージを急上昇させるものだったが、頂点に行く前にふと疑問に思うことがでてきた。
「おい、俺のメルアドどうやって知った」
有希は「あっ」と自分のやってしまったミスに気が付きながらも苦笑いをする。
あぁ、こいつはあれだ。自分のピンチになったら苦笑いでなんとかやり過ごす奴だ。
一瞬、本気で怒ってやろうと思ったが…まぁメルアドぐらいは許してやろう。
しかし、どうやって手に入れたか知らないが、こうやって俺の知らない所で情報を収集している事は怒ってやらねばならない。
俺は手に持っていた音楽の教科書を丸め、ぱこーんっ!と心地よい音を有希の頭で奏でた。