第34話 放課後と体操服とホッチキス
「俊悟も相変わらずバカというか…影での仕事が好きだねぇ」
呆れたような顔をしながらこちらを見てくるのは体操服に身を包んだチョコ。
俺は誰も居なくなった放課後の教室で、1人ホッチキスでパチパチと担任に頼まれた資料を教室のクラスメイト分挟んでいた。
これがまたかなり面倒な仕事で携帯で音楽を流しながらやっていた所、部活中のチョコが教室にやってきたのだ。
もしかして手伝いに来たのか?と一瞬期待はあったのだが単純に忘れ物をしていたらしい。
「まぁ本来なら私も手伝わないといけないだろうけどさ」
「別に。名前だけ貸してくれてるだけで十分だ」
「そうやって強がりするところも有希ちゃんの魅かれる所なのかな」
「振られたけどな」
「だれが?」
「俺が、あいつに」
「………えーっと、告白したの?」
「まぁ軽い感じだけど」
「ふ~ん、止めておいた方が良いよ?あんたと彼女じゃ住む世界が違いすぎるし」
「誰も結婚するなんて言わないし、高校の間だけでも良いかなぁと」
「そういうの男が言うと最低に聞こえるから止めた方がいいかもね」
「男女差別反対」
「それも私たちのセリフだよ。それにしても…ふ~ん、本当に好きだったんだ?有希ちゃんの事」
「どうなんだろうな。あいつと居たら楽しいと思えるけど。あ~、そういう意味ではお前も同じか」
「お、私もついに告白されるのかな?」
「ねぇよ」
チョコは小馬鹿にしたような顔で俺の方を見て、少しだけ静かな間があく。
そして、何を思ったのか俺の前の席に座り、こっちを見つめてきた。
「なんだ?」
「いや、ちょっと試してみようかと思って」
「何をだ?」
「こうやって見つめ合ってみてドキドキしたら恋してる。しなかったら友達っていう」
「なんだその変なの」
「………」
「………き、気まずいんだが」
「ん~、まぁドキドキは多少するかな。うん、少しだけ俊悟の事好きかもしれない」
「お前なぁ…人が振られたって話をした傍からそういう事言うか?」
「あ、ドキッとするのかな?」
「そりゃまぁ男だからな。それに」
「チョコは可愛いからなって言うの?」
「クラスで人気のあるからなって言おうとしたんだけど」
「つまり、それは私は可愛い分類に入るってことか」
「あ~、やっぱりお前嫌な奴だわ。お前のペース苦手」
「まぁまぁそう言わずに。まぁ私の事が好きになったらいつでも告白してきてよ、ちょっと考えてあげるからさ。それじゃそれ頑張って」
「お前も部活頑張れよ」
少しだけ手伝ってくれるという期待はあったけど、あいつは陸上部の星だから仕方がない。
パチパチとホッチキスでまとめながら小さくため息を吐いた。




