第29話 大きな存在
「言いにくいんだが、君のクラスの子達はハメを外しすぎじゃないのか?」
放課後、帰ろうとしていた俺のところに生徒会副会長さんが現れ、生徒会室に来るように言われたため、生徒会室に訪れると言われた。
生徒会長さんは、俺を睨みつけながら威圧的に言う。
「そう言われましても…」
あいつらがハメを外すのと、俺の因果関係なんてほぼない。
あるとすれば、有希の方があるだろう。
そもそも、クラス委員は俺だけではないのだし、俺だけこの場に呼ばれている時点でおかしいのだ。
「君のクラスだけ風紀が乱れているのは困る。ほかの学生まで影響が及ぶかもしれない」
「注意はしているんですけどね」
「きつくしているのかい?」
「いやぁ、俺一人じゃどうしようもないですから。有希が積極的に動いてくれればいいんですけど、あいつを利用すると先輩たちが困るでしょう?」
「……」
沈黙は肯定の証拠ってどこかの偉い人が言っていたっけ。
西条有希の存在はかなり大きいものだと思っていたが、こうしてクラス委員となるとその大きさは予想をはるかに超える。
まさか、クラスの代表が西条有希ともなると悪い方向にいくとは誰も予想していなかっただろう。
俺のクラスは確かにほかのクラスからすれば浮いている。
先生は有希がいることで強く言えないし、ほかのクラスの連中も同じだ。
かなり悪い方向に進みつつある。
「クラスの代表が有希ってことでこんなことになるなんて俺も予想外ですよ」
「…すまない」
「生徒会長が謝らなくても。決めたのは俺たちなんですから」
「いや、そのことじゃないよ。今の、君を呼び出したことについてだよ」
生徒会長は俺に頭を下げ、大きなため息と共に椅子に付く。
「君には迷惑をかけていると思うよ。僕が不甲斐ないばっかりに」
「いや、そんな思い込まなくても。先輩は西条家に関係しているんでしょう?」
「まぁね。彼女の存在はあまりにも大きいよ。彼女の一つの言動で僕の学園生活がなくなることだってありえるんだから」
「あいつはそんなことしそうにないですけどね」
「彼女がしなくても周りの大人がそうさせるよ。彼女は守られる立場なんだから。……ふぅぅ、まぁしょうがないね。
さて、彼女についてはどうしようもない。でも、君のクラスの風紀は酷い。それだけは生徒会長として言わせてもらうよ」
「はい。できるだけのことはします」
「よろしく頼むよ。今日は急に呼んでしまって悪かったね」
「いえ、失礼します」
本当に面倒だ…。
こんな面倒なことになるなら有希以外を無理やりクラス委員にするべきだった。
もし、他のやつがクラス委員であれば、クラスメイトたちはここまで暴走することはできなかっただろう。
しかし、過ぎてしまったこと。
頭の中に浮かんでくる「面倒」という言葉を大きなため息と共に吐き出し、家へと向かった。




