第28話 パシリ?
2年生にもなると自由度が増す分、ハメを外してしまう連中が多いのは確かだ。
例えば、うちの学校は髪を染める事は校則違反だが、こっそりと薄く染めてくる奴がいる。
そして、俺に「あれ校則違反じゃないの?」と告げ口してくるやからが多い。
それははっきり言ってウザイわけだが…、まぁそんなことを言ったところでどうにかなるわけでもなく、髪を染めている校則違反者は同じクラスのやつなんだから簡単な注意ぐらいはしてやろうか…という気分で今日は注意していた。
「それ以上濃く染めるなよ。かばいきれん」
「まじかよ…。こんなの染めたうちに入んないじゃんか」
「お前なぁ…、ほかの連中が染めたがってるんだから、少しでも染めてたら反感買うだろ」
「ほかの連中も染めればいいだろ」
「それされたら俺の立場ないだろ。いいのか?クラス委員には西条有希もいるんだぞ」
「うっ…その名前出すの禁止じゃね?」
「本当なら染め直せって言いたいところだけどな」
「なぁ、本当にこれ以上はダメか?」
「ダメだな。それ以上やったら紫色に染めるぞ」
こんな感じで今日も頑張って説得している。
こういうことは有希がやれば一発だと思うんだけど…みんな、あいつにはお願いしない。
しないというよりできない雰囲気があるからなんだけど。
「川島はさぁ、なんだかんだ言って人当たりいいんだよ。なんというか、モノを頼みやすいんだよ」
「それ、単なるパシリ要素あるってだけじゃね?」
「いや、だって川島は嫌だったら断るじゃん」
「当たり前だろ」
「それって頼むこっち側からすれば頼みやすいんだよね。OKもらったモノは絶対してくれるってことだし」
「ふ~ん、有希に頼めばいいだろ。あいつなら俺よりも出来ること多いぞ」
「有希ちゃんは頼みづらいというか、頼めない。だって、あの子に無理させられないでしょ?」
「あ~ぁ、大人社会ってメンドくせぇ」
「だよねぇ、私はそういうの嫌だから特別扱いしてないけど」
チョコは持ってきたお菓子を食べながら、流れる風景を見る。
あの放課後の日から俺とチョコはなんとなく一緒に帰る事が多くなった。
といっても、委員の会議がある木曜日限定なんだけど。
「そういや、なんでお前は有希のこと特別扱いしないんだ?」
「ん?だって私、西条家と関わり無いもん。あ~、関係なくはないか。
私、孤児なんだよね。だから、親とか関係ないんだけど。
でも、この学校は特待生扱いで入ってるから学費タダだし。うん、関係バリバリある」
なんでこいつ、重くなるような話題をすらっと話せるんだ…。
まぁこいつが重くならないように話してくれたと思うんだけど。
でも、これ以上この話題を話してしまうと俺の方が気になってしまうから話題を変える。
「特待生ってなんだ?お前、頭良くないだろ」
「去年の学期末テストの結果見てないの?あ、上位じゃないからその辺見ないのか」
「うっせぇ」
「これでも私、常に10位までに入ってる。あんたみたいなバカとは違う」
「10位だったら半額だろ」
「はぁぁ…有希ちゃんと仲良かったから耳にしたことあると思ってたけど…やっぱりバカだわ、あんた」
「はいはい、バカですよ。馬鹿な俺に教えろ、バカ」
「これでも私、女子短距離じゃ有名人。中学総体でも1位、去年のインターハイでは3位」
「は?」
「去年の終業式で表彰されてたの知らないわけ?」
「終始寝てた」
「やっぱあんた馬鹿だわ」
チョコは呆れたようにため息を吐きながら、佳之木町のバス停手前で停車ボタンをおした。




