第20話 文化祭開始!
「文化祭、開始です!!!!」
前で生徒会長が楽しそうに文化祭開催を高らかに宣言する。
その合図で一斉に歓声と移動が開始される。
この学校の文化祭は2日間。
例年通りの規模だ。
まぁ防犯に関しては例年の数倍近く厳重にされているが…。
体育館の中ではさっそく軽音部による演奏が始まり、盛り上がりを見せる。
「さてっと…」
各自、自分のやることがある人は移動を始め、俺も移動を始める。
俺の担当は準備だ。
自分のクラスへと向かいながら活気づいている学校の雰囲気を堪能する。
やっぱりこの雰囲気は心が高まる。
自然と楽しい雰囲気にさせてくれるのは文化祭マジックの一つだろう。
「川島ー、この野菜とかを持っていって!」
「りょーかい」
トレイの中に山のように積まれたキャベツやら人参やらが手渡される。
結局、うちはやきそば店をする。
予定していた予算は半分以下だったが、そこはやきそば。
元々、普段の予算でも十分できるモノだから何の弊害もなく行うことができた。
ちなみに、文化祭委員のやつは会議の日に限ってサボっていたことを自供し、数日肩身の狭い生活をしていたのは言うまでもない。
最後は俺達に今までやってきた悪いことを懺悔するということで幕を締められた。
「材料運んで来たぞー」
「ありがとう、川島くん」
「他はあとの奴らが持ってくると思うけど、何か他に居るか?買いだしとか」
「ん~~、あ!私たちの飲み物がないかも」
「何が欲しい?買ってくるよ」
「え、でもこれは関係ないし」
「別に気にするな。俺も飲み物を買いに行くついでだし、10分ぐらい歩けばコンビニあるし」
「ごめんね、なんかパシリしたみたいで」
「気にしすぎだろ。そこの紙に欲しいモノ書いておいて、忘れるから」
何分か待っていると、小さなメモ帳にびっしりと飲み物の名前が書かれた紙を手渡される。
遠慮しているくせにこういうところはちゃっかりしてるな…。
見た目だけ申し訳なさそうな顔をしながら俺の頭を下げるこの女の子も腹黒いなぁ…と思いながら校門を抜ける。
そして、しばらく道を歩き、コンビニの中に入ると大盛況していた。
主に学生が何人も居る辺りを見ると、何か足りなかったモノをここで調達している感じだろう。
紙に書かれたモノをカゴに入れていきながら、自分も欲しいモノを入れる。
この仕事さえ終われば、今日は自由行動だ。
家に帰ってもいいし、色んな所を回るのもいい。
別に明日も回れるから今日は積極的に動くつもりもないけど。
レジで会計を済まし、重たいモノを持ちながら学校に向かう。
「ありがとう、助かったよ」
「いや、別に。んじゃ俺は遊んでくるわ、頑張って」
「うん、ありがとう」
これからやきそばを焼き続ける苦労に比べれば、この程度は比較対象にもならない。
我ながら最高のポジションだと思う。
賑やかに鳴り始めている学園内を歩きながらそんなことを思ってしまった。




