第19話 信じた者は救われない
「俊悟君の所は何するの?文化祭」
週に1度のファミレス。
体育祭の日から俺は何故か週に1度、ファミレスに通うようになった。
ちなみに一人では無い。
西条家御令嬢、西条有希と一緒だ。
おそらく、この状況を羨ましがっている学生は数多く存在しているだろう。
その証拠に、周りの席には同じ制服のやつが多い。
それも学生だというのにファミレスの中は何故か静かなのだ。
完全に聞き耳を立てている。
しかし、有希は特に気にせず話しているのだからこいつは大した根性だろう。
「やきそば」
「やきそば?あぁ、露店かー」
「お前のとこは?」
「私は展示だよ。皆で色んな絵を書いて飾ろうって決まったんだ」
「ふ~ん、案外楽なもの選んだんだな。余るだろう?予算」
今回の文化祭にはバッグに西条家という巨大なモノがあるから予算は多いはずだ。
それもその西条家の御令嬢がいるクラスが展示なんて金のかからないモノを選ぶとは…。
いや、もしかしたら展示品にお金が掛かっているのかもしれない。
「余らないよ?」
「どんな展示品なんだよ…金掛けてんな」
「ん???画用紙は確かに高いけどやきそばほどじゃないけど?」
「…ん?」
有希はキョトンとした顔をしながら、汚い色のジュースを飲む。
また変な組み合わせをしてきたらしい…。というか、ドリンクバーにハマってるな、こいつ。
しかし、今はそんなことに気が付いている場合では無い。
なんだか、俺とこいつの間に変な勘違いというか…俺が、うちのクラスが大きな勘違いをしているような気がする…。
「お前、文化祭委員か?」
「ううん。文化祭委員の子とは仲良いけど」
「今年の文化祭の予算って例年より多いんだよな?」
「そうなの?チョコちゃん、そんなこと言ってなかったけど」
「……おい、今回はお前の家がバックについてるから」
「私の家???」
「………」
「あ、もしかしてあの噂、信じてたの?私の家が学校に膨大な援助金をしているから文化祭の規模が大きくなるっていう」
「…違いのか?」
「それはないよ。だって、西条家が学校に支払ってる援助金のほとんどは防犯に消えてるもん。
そのための援助金だし。まぁ何%かはポケットの中に入ってるだろうけど、それで私がここに安全に通えるなら無視できる金額だしね。だから、文化祭が大きくなることは無いよ?
遠足とか修学旅行とかその辺りは多少他の学年とは違ってくるだろうけど」
「……その話は皆知ってるのか?」
「知ってるはずだよ?少なくとも文化祭委員の子は会議で聞いたって言ってたし、私にも確認してきたもん」
……こいつの話を信じるなら、うちのクラスは大きな勘違いをしている可能性が99.9%ぐらいある。
というか、文化祭委員のあいつは何をしていたんだ…。このままじゃあいつの命が無くなるかもしれない。
最後に俺の綺麗にまとめた感じで少しだけ雰囲気が良くなり、皆で頑張ってみるかー的な感じがあった。
それからはちょっと豪華なやきそばを作るだの、なんだのと盛り上がっていたし…。
「あ、もしかして…期待してた?」
「いや…俺は多くても少なくてもどうでもよかったが……うちのクラスはヤバいな」
やきそば程度なら予算が少なくても何とかなるだろうが…一度高まったやる気は確実に下がる。
地面を突きぬけるぐらい下がる。
俺はポテトを口に運び、ジュースで流し込んで大きなため息を吐いた。