第14話 お家は?
「ん~、このポテトも飽きるね」
「そりゃお前がいつも食っているモノとは違うだろ」
「そもそもこんな感じの食べさせてもらえないよ?」
有希は350円のポテトを口へ運びながらメニューに目を通す。
これ以上、物を頼むつもりもないのにメニューを見ている意味が分からない。
物珍しさでもあるのだろうか?
「そういえば、俊悟君のお家ってどんなところなの?」
「なんだ唐突に」
「だって、私の家の事は知ってるのに俊悟君の事は知らないもん。不公平」
「不公平って…。お前の家が有名すぎるからだろ。別に知りたくて知ったわけじゃ」
「それでも不公平だよ!はい、俊悟君は何人兄弟ですか」
「上に姉が1人」
「お姉さんいるんだ!」
「今はもう出て行ったけどな」
「大学?」
「いや、嫁いだ」
「…へ?」
「俺と姉さんは8つ違うんだよ。だから、今は24歳か」
「へぇ~、仲良いの?」
「普通だな。それよりもなんで俺の事を教えないといけないんだよ」
「だって、俊悟君は自分の事何も話さないもん」
自分の事を軽々しく話す奴もどうかと思うけど…。そもそも自分の身内のことなんて話さないだろ。
高校生にもなって相手の家庭の事とか気にするのも面倒だ。
有希の場合は特例だから仕方がないが。
「次の質問。どうしてあの高校に進んだの?」
「一番近かったから」
「あれ?でも俊悟くんの住んでいる所ってあの私がバスで」
「ああ。あそこから一番近い高校があそこなんだよ」
「えっと…1時間ぐらい掛かるの?」
「だいたいそうだな。そんで、バス停から30分は自転車だな」
「…毎日大変なんだね」
「お前と違って高級車は無いからな」
「でも、あんな自然がいっぱいだったら良いなぁ」
「あぁ、その点は俺も気に入ってる」
「ん~でも、あそこら辺って…あ、そうだ!俊悟くんの小さい頃の写真見せてよ!」
「なんだよ、持ってるわけないだろ」
「今度で良いから!」
「持ってくるわけないだろ。バカなのか?お前はバカなのか?」
「バカじゃないよ、ピュアなんだよ。プリ」
「その口閉じろ。そして、頭蓋骨が割れるぐらい地面に頭を叩きつけながら謝れ」
「そんな酷い!」
「ほら、俺のコップが空いてるぞ。コーラとオレンジの5:5だ」
「あ、うん。ごめん……って、私これでも西条家の御令嬢だよ!お金持ちだよ!」
「知るか。ここは俺のテリトリーだ。俺の中では金持ちも貧乏も関係なく平等社会。むしろ、俺に気に入られた奴ほど待遇は優遇される」
「あの、私はどの位置…いや、言わなくていい!言わないで!」
「そこら辺の野良猫と変わらないぞ?気が向いたらカマってやるし、気が向かなかったら見向きもしない」
「ひ、酷いのか酷くないのか分からないよ…微妙な立場だよ…」
有希は凹みながら俺の空いているコップを手に取り、ドリンクバーの方へと歩いていく。
なんだかんだ言いながらあいつは俺の言いなりになっている所がバカっぽい。
それにしても、あの西条家の御令嬢をこうしてこき使っている所を見られたら俺の命はあるだろうか…。
有希は人を使う側として生きてきている。その有希に使われる人間は少なくとも俺よりは優秀な人間だ。
その人たちに見られた日には……影で拳の一発や二発は覚悟しておかないといけないレベルだろう。
まぁ、そんなことを気にしていたら有希ともこうして話してはいけないだろうし、今更有希への対応を改めた所で遅い。
それなら、普段から優遇されている有希を一般人レベルとして扱ってやるのも有希としては良いことだ。たぶん。
それに俺のストレス解消にも役に立っている。これぞ、一石二鳥。
ドリンクバーの方から限りなく黒に近い緑色の飲み物を持ってくる有希に頭部に平手打ち一発の準備をしながら笑顔で迎えた。