第13話 ファミレス
「私、ファミレス来たの初めてだ~。このボタン何?」
「押すなよ」
「あ、ポーン!って言った!」
「………」
こいつ…まぁ俺は決まっているからどうでもいいけど。
メニューを有希に渡し、携帯で帰りが遅くなることを送る。
「ん~いっぱいあるね。あ、これおいし」
「お待ちしました。ご注文は」
「え!?」
「ポテトとドリンクバー2つ。あと、イチゴパフェ1つ」
「ポテト1つ、イチゴパフェ1つ、ドリンクバー2つですね。ドリンクバーはあちらをご利用ください。失礼します」
あっという間に注文が終わる間、有希はぽかーんとした顔で俺と店員さんのやり取りを見る。
ファミレスが初めてなこいつだと、このやり取りすら珍しいんだろうか。
「俊悟君、慣れてるね~」
「これに慣れは関係ないだろう」
「そうなのかな?あ、私の分頼んでない」
「イチゴパフェでいいだろ?」
「そんなの食べられるの?」
「小さいけどな。それよりもジュース取りにいくぞ」
「へ?取りに行くの?」
「まぁ付いて来い」
ドリンクバーの方へ歩いていき、コップを有希に渡す。
そして、俺はいつも通りコーラとオレンジの5:5の割合で入れていく。
ここ、ファンタオレンジが入ってくれたらこんなことしなくても良いんだけどなぁ…。
有希は俺のやっていることがとんでもないことをしていると勘違いしているらしく、俺の身体を揺さぶる。
「鬱陶しいな。これは別に良いんだよ」
「ほんと?そんなことしていいの?」
「ああ。何度も飲めるから自由に入れろ」
「何度も!?無制限なの?」
「まぁ一応。それよりも早く入れろよ」
「ん~でもこんな一杯種類あるし。一杯混ぜたい気もあるなぁ」
「まずくなるからやめた方が良いぞ」
「えー、でもやってみたい」
「全部飲めよ。絶対飲めよ?」
「うぅぅー、やる!飲めるもん!」
有希は覚悟を決めたように各種のジュースのボタンをローテーションしていく、
みるみるうちに汚い色のジュースが完成されていく。
有希もその色を見て、楽しそうにしていた目から何とも言えないような顔に変わっていく。
しかし、俺がこうして見ているため、引くに引けないのだろう。
コップの8分目まで入れた汚いジュースにストローを差し、席に戻る。
あの濁ったジュースは見た目からしてまずそうだ…。
有希は恐る恐るストローを吸い、案の定まずそうな顔をする。
「うぇえぇ……」
「だから言っただろ」
「まずい…まずいよぅ…」
「ちゃんと飲めよ?」
「うぅぅ…俊悟君、飲んでみてよ」
「いらん。お前と関節キスしたくない」
「っち…おっしい。私の唾液は媚薬効果あるんだよ」
「お前の体質大変だな。淫乱」
「淫乱じゃないもん。私はピュアだよ、清純だよ、ぷりきゅ」
「そのクズみたいな口を閉じて、頭を地面にこすりつけるぐらい謝れ」
「そんな酷い!」
「ほら、ポテトも届いたから食えよ」
「あ、このポテトは美味しいね。ケチャップも付いてる!」
「いちいち反応するなよ」
「これいくらなの?」
「350円ぐらいだったはず」
「やっすい!御馳走様!」
「おい!全部食うなよ!つか、お前の奢りだからな。どんどん食え」
「うん!え、あ、違う!私が言うセリフだよ!あ、でもここカード使えるのかな?」
「…使えるはずだぞ」
使えるんだっけか…ここのファミレスって…。
俺の財布の中はほとんど入っていない。
俺の顔を見た有希は顔を青ざめながら、店員を呼ぶ魔法のボタンを押し、メニューを開いた。