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幻夢の桜に恋をした。  作者: 壊拿
第一項 : 雨の中
4/17

蕎麦屋にて 1

物語は、まだ始まったばかり。

ならば、交差するまでの過程を見るのも。また、一興。

いらっしゃいませ、と明るい声が響く。その直後、声の主は嫌悪か緊張か、その身を強張らせる。いや、これは明らかな嫌悪だろう。

しかし、直ぐ微笑んで見せた。それも、商売癖、なのだろうか。


「いらっしゃい、お兄ちゃん!仕事終わったの?」

「おー、日陽。…いや、休憩中。これ喰ったらまた戻る」

「そっかぁ、頑張ってね!ところで、何食べてくの?」

「…何でも良いなぁ、日陽の好きなモノで」

「ええっ!?…うぅん、そうだなぁ。ちょっと待っててね?」

「おー」


にっこり笑う、小柄で童顔な少女。日陽、と呼ばれた彼女は、修哉の実妹であった。銀の髪は両側で可愛らしく、リボンで結ばれている。このリボンは、修哉が日陽に、誕生日祝いとしてあげた物である。日陽は、それをとても大切にしていた。同じ様なリボンを幾つか持っているが、このリボンだけは兄の名前を小さく書いて、区別するようにしているほどだった。

だが、彼女は「お兄ちゃん大好き!」ではない。

逆に、兄が「妹が大好きすぎてお兄ちゃん心配です」レベルのシスコンであった。


彼は、小走りして毎度の如く転ぶ妹を見送り、彼女が持って来てくれたお茶でゆっくりと喉を潤すのであった。…それにしても、毎度の如く苦いお茶である。

其れをいつ来ても一気飲みしてしまう修哉も、修哉なのであるが。


奥へと消えた妹と入れ替わりの様に、日陽と同年齢の少女が入って来た。艶めく銀髪を結いあげ、無気力に見える瞳で周囲を見回している。そして、彼を見つけると。静かに近付く。手には。…一般人なら目を疑うほどに盛られたざるそばと、少し多めの漬物。置かれたのは、勿論修哉の机。

何食わぬ顔で持ってくる店員に驚いて、見ると。少し大人っぽい笑顔で、こちらを見つめていた。


「こんにちは、苺さん。今日も仕事なのですね」

「止めて苺って言わないで頼むから」


思わず、彼が土下座した。

お蕎麦屋さん。

まだ続きますよー。

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