「赤髪の若獅子」
月織、「赤髪の若獅子」。
彼は、華倉の後輩でありました。
月織 修哉。陸軍部近撃隊・【華院】柘榴部隊隊長、前髪を上げた赤い髪と輝きを放つ茶の瞳が特徴的。
軍官学校を2年前に卒業し、つい最近編成された【華院】の部隊長に抜擢された。風の流れるまま、兎に角気ままに生きる事が好きなのだが、その剣の実力は本物。女性にもそれなりにモテるが、今はあまり興味無し。
【華院】は、軍部の中尉以上で構成される、軍部の司令部的組織。因みに、若い者が多いのは、【華院】を編成した大臣の想いであった。「若い者たちに力を発揮してほしい」。ただ、この大臣はこの【華院】を編成して、自分が選んだ後輩達が配属される場面を見送って、その会場で倒れて亡くなった。配属された後輩達は、この大臣に敬意を表す為通夜も葬式も参加して、その命日にはきちんと墓参りに通っている。尊敬されていたのだろう。
【華院】は様々な部隊から構成される。まず月織が部隊長を務める「近撃・柘榴部隊」。そして彼の義父が部隊長を務める「医務・雪起こし部隊」。そして、「隠務・柳花笠部隊」、「多養・五穀部隊」…そして、華倉が「遠撃・寒葵部隊」。それぞれ、略称は柘榴・雪・柳花・粟・葵である。
「お久し振りです、先輩」
礼儀正しく頭を下げる後輩に、短く返事をして窓辺の男は笑う。ここで会うのは珍しい、最近は仕事で忙しかったらからな。そう言って、また窓の外に目を向ける。月織は、先輩の視線を眼で追って、自分も窓の外を見た。いつもの光景だった。視線は互いを見ずとも、会話は進む。一度話し出したら、なかなか止まらないのは誰でも同じであろう。
学び舎を卒業して以降、別部隊に配属された月織は、(一応)尊敬する先輩と再会して情報交換をしたかった。情報交換、と言うのも。最近上層部と【華院】をはじめとする若手との対立が原因である。
「よぉ、修哉。怪我も無さそうで良かった」
「先週でしたからね、戦争が…やっと、終結したのが」
上層部と、【華院】。食い違いから、外国(欧州)を巻き込んだ戦争になってしまった。多くの人数が、無駄な犠牲となった。人は後に『影倉戦争』と呼び、後世に二度とこの様な惨事がないように書き記した。あらゆる人物が、これに関する物語を書いた。だが、この戦争を内面的に描いた作品を記した事で有名なのが、『庇朱』と言う人物である。
女性であるとされているが、その人物を知る者によると、外見は男に間違えてもおかしくない程、青年的な風貌をしていたそうだ。彼女は武術も扱える、非常に男性的な人であった。ただ、彼女は結婚していて、風変わりな剣士との戦いに応じた結果負けてしまい、敗北条件として夫婦となったのである。作者も突っ込みたい、どう言う事なの。
「俺は、先輩に賛成なんですけどね」
「お、有り難いねぇ。流石修哉」
「『影倉戦争』以来、上層部は罷免を免れようと大人しくしていますが。…これでまた動いたらうるさく言うんでしょうね」
「流石」
感心したような表情を作る、彼。
そして、召集の鐘が鳴り響く。
目の前の男は、溜息を吐きだしつつ歩き出した。
後輩に、手を振って。
続く
追加しながらの更新でした。
これが正規バージョンなのです。