夕方の一角
全ては、その言葉から始まった、かもしれない。
「今日の軍議は、楽だった気がする…」
明るい声が響く、蕎麦屋の、隅の席。冷たい手ぬぐいを頬に宛てて、机に突っ伏している男が一人。華倉である。そして、彼と向かい合うように座る、黒髪を結い上げる青年。三枝 海は、彼の言葉に反応して、身を乗り出してきた。
「ん、なになに?良い事でもあったのけ?」
「いや、今日の軍議はなかなか早く進行してね。今日の議長が、早く帰りたい人だったらしくてね、決めるべき事も決定して、軍議が予定終了時刻の30分前に終わったよ」
「ほーぉ?」
海は楽しそうに、冷ましたお茶を喉に流し込んだ。そして、零仁が落ち着いた空気を漂わせて、注文したものを持って来た。そこに出て来たのは、…うどん。何故うどんを頼んだ。華倉は、いつもの様にざるそばを頼んでいた。そして、すでに食べ始めている。
華倉は、黙って蕎麦を胃の中に納める。そんな彼を見ていた海も、うどんを黙々と食べすすめる。そして気付けば、彼の分は無くなっていた。そして足りないのか、おかわりを追加した。
「…そう言えば」
「んー?」
「いや、…ちょっとこの前、不思議な光景を目にしてさ」
「ほー!ひひはいー!」
「聞きたいんだね?…取り敢えずそのうどんを片付けようか海ちゃん」
「んー」
もきゅもきゅ、と食べる海を、華倉は面白そうに見つめていた。そして、追加の蕎麦がやって来た。彼は麺つゆをぶっかけて、それからつゆをなじませるために混ぜて、其れから食べ始める。
すると、日陽がやってきた。どうやら、華倉の手元に置かれた手拭いを取りに来たらしい。冷やしてきますね、と言って、直ぐに下がっていた。そんな日陽を見て、海が一言。
「日陽は癒しだなー…v攫いたい」
「それ修哉に伝えておこうか、海ちゃん拷問部屋でたっくさん哀されると思うよ!」
「マジ冗談ですごめんなさい伝えないで下さい」
修哉の妹愛は、海をも土下座させるほどであった。
そして、何を考えたか。海は、まるで悪巧みを思い付いた餓鬼大将の様に。意地悪そうな微笑を浮かべて、華倉にある提案をした。
「オミー、今晩空いてる?」
「?あ、うん…まぁ」
「ヘタレな将校閣下、この街にある廓の世界に、御興味はおありかな?」
「…廓…」
恭しく手を差し出す、海。
華倉は、少し呆然としたが。少しだけ微笑んだ。
「雰囲気無いな」
「が、頑張ったんだぞ!?」
決戦は、今夜。
これから、海と華倉がいよいよ姫(笑)の元に向かいます。
因みにこの時、陽久は帰宅中、修哉は夕飯の買い物中(




