婚約破棄されなかった悪役令嬢の顛末
【諸君、聞いてくれ!これより断罪を始める!】
そう・・・今日は断罪の日、私の婚約者エルンスト様の隣に男爵令嬢がいる・・・わ。
ここは学園の食堂兼カフェ、昼食時大勢集まっているわ。
「私はエルンスト・ダリア、知っている者いるとは思うが伯爵家の者だ。婚約者はマリアグレード・スメラだ・・・・」
ザワザワと喧噪が起きた。時々、婚約破棄が起きるらしい。
私は2人の前に肩を縮めて立つ。
【実は・・・私は隣の男爵令嬢エリ嬢の讒言を聞き入れて、マリアグレードに対して、辛く当たってしまったぁああああ!】
「ヒィ、エル、どうしたのよ!」
「調べたが、どうしてマリアグレーはが男爵令嬢を虐めていない・・・」
「ちょっと!」
「だがしかし、こんな讒言を聞いてしまった私はマリアを信じていない・・・断罪されるのは私だ!」
・・・ほ、本当にあの方の言うとおりになったわ。
☆☆☆回想
私は婚約者のエルンストの不誠実な行動に悩まされていた。
デートをすっぽかして、病弱な従姉妹の看病と称して他の女友達と遊びに行く・・・
最近では男爵令嬢エリ様に夢中だった。
だから、王都郊外の願いがかなうと評判のルルドの泉で願い事をした・・・
「ああ、女神様、精霊様、どなたでも結構ですわ。エルンスト様、誠実になって欲しいですわ・・・
そのためならいかなる対価でも払いますわ!」
バシャン!泉が割れたわ。そこから現れたのは、金髪碧眼、白い貫頭衣を着た・・・女神様かしら。とても美しくて神々しい方が現れた。
「・・・そこの者、願いを叶えてしんぜよう」
「本当ですか?」
「ああ、我が婚約者の性格を直して進ぜようぞ。幸運も授けよう」
「はい!」
「しかし、対価をもらうぞ・・・」
「はい、何なりと!」
「始めに生まれた子を我への生贄にするのだ」
「えっ!」
「嫌なら良いぞ」
「いいえ。お願いしますわ!」
「なら、契約成立だな」
切羽詰まった私は承諾してしまった。
その後、すっかり性格が善くなったエルンスト様と結婚し。
「オギャー!オギャー!」
女の子が生まれたわ・・・
「でかしたぞ!マリア!」
「あなた・・・」
「名はなんとしよう。マリアロッテ?親子おそろいの名がいいな」
「あなたったら・・・」
ふと、あの契約が思い出されたわ・・・
子供を生贄にする・・・・
翌日、すぐにあの女は現れた。
騎士達に止めるように命じたが・・・
「・・おい、女、誰だ!奥様の言っていた怪しい女だな」
「「「捕まえろ!」」」
「スリープ!」
眠らせて難なく屋敷内に入った。
「さあ、赤子をもらい受けに来た」
「ヒィ、ご勘弁を!」
旦那様にも事情を話した。
旦那様は金銀財宝を集めて、女に赤子の代わりに提供すると提案したが。
「笑止」
一蹴されたに思えたが。
「なら、我の名をいってみろ・・・さすれば容赦してやろう」
「は、はい・・」
そう言えば女神様だとばかり思っていたわ。
「原初の女神様・・」
「違う」
「幸福神ハピア様・・」
「アハハハハ、違うぞ」
女神教典を持って来て、神の名を言うが違う・・・
「もしかして・・・魔人・・・魔族の神?」
「違う。違うぞ」
「後、これから3日待ってやる。それまでにせいぜい名を調べておくのだな」
「ヒィ・・ヒイ、グスン」
「マリア、ここで諦めてはダメだ」
旦那様は全財産を使って、賢者、教授、先生、あらゆる者たちに聞きまくった。
「時間がないのだ。早急に赤子を欲する神の名を教えて下さい。お礼は思いのまま差し上げます」
次の日、あの女は現れた。
一晩かけて、集めた名を言ったが、女は冷笑するばかり。違うと言う。
二日目はそのまま屋敷に滞在し。私達は報告のあがった名を全て告げるが女は違うと言う。
冒険者達にも泉の調査を命じたが祠すらない。
噂が広まり。王宮の賢者達も来られたが、打つ手無しだわ・・・・
「もしかして、名はないのかしら・・・もう、兵を集めて、女と戦うしか無いわ」
そう結論になり。名のある魔道師、ネームドの騎士、冒険者様達に集まってもらった次第でございます。
・・・・・・・・・
「全て、私の不徳のいたす次第です。どうしても、この子、アルネーネを守って下さいませ!」
ザワザワとざわめきが起きた。
「神と戦うなんて・・・」
「さすがに自業自得だろう」
「ふむ。放っておきなさい」
「皆様、お願いします!」
「そうです。当主として約束する。討ち取った者には財産を分けます」
旦那様と私で懇願したが・・・
その時、遙か後方から、声が聞こえた。声の主の頭が見える。頭髪はピンクにしか見えない・・・
「それは、神じゃなくて、神もどきの化け物じゃーないですか?」
「あの、貴方は・・・」
「王宮異世界・・・何だっけ。異世界転移転生アドバイザーのリディアじゃない?」
ピンク髪、そう言えば、自分を異世界の前世があると主張している変わり者がいると聞いた事がある。
彼女はあれが神になる前の化け物と説明をするわ。
化け物は必ずワンテンポおくじゃない?
人族にチャンスをあげて、それでも無様に無駄にする様を見て喜ぶじゃーないですか?
「化け物は人族よりも嘘をつかない。名を教えれば退散するじゃーない?」
「分かるのですか?教えて下さいませ」
「でも、大変なのはその後じゃーない?」
あの女は夜十一時に来た。後1時間で名を言わなければ子供をあげなければならない。
女は集まった人達を一瞥して
「何だ。仰々しいな・・・不穏な者がいそうだ・・・な」
とキョロキョロ見渡す。だから私が遮った。
適当な名を言って時間を潰すのだ。
「貴方様のお名前はイフリート、ローリア・・・」
「違うな」
後、五分、本命の名を言うときが来た。
「う~ん。女神教典にも子供を欲する神はおりませんわ。
イザの書に女神様は子供を生贄に要求する記述がありましたが、喜んで子供を差し出す親を叱った逸話がございますわ・・・」
「チィ、早く言え」
イラついているわね・・・ここで勝負をかける。
「貴方様のお名前は・・・ハーリティ、もしくはキシボジンではございませんか?」
一瞬の間、沈黙が支配した。
女の顔はみるみる鬼の形相になった。白い神々しい貫頭衣は鎧に変わり宙を舞う。
「・・・・何故、知っていた。もしや、異世界人かぁ?!口惜しや!」
「オギャー!オギャー!」
「アルネーネ・・・」
その時、リディア様が飛び出して。
【ナム!】
と一言だけ発したら・・・消えた。
「あ、有難うございます!」
「お礼は何でも差し上げます」
「転移神だからね。全にして個、私は釈迦じゃーないじゃない。成仏が不十分だからまた来るじゃーない?備えなければいけないじゃーない?」
リディア様はお礼を受け取らずに去った。
その後、家業は傾いた。
旦那様の性格も荒くなった。
「畜生。まただ、上手く行かない!」
「あなた・・・」
でも、決して、アルネーネを犠牲にすれば良かったとは言わない。
「フン、まあ、いいか・・親子3人いればな」
「私も社交界に出てビジネスの機会を探しますわ」
かなり貧乏になったけど、暮らしてはいけている。
一方、リディア様は・・・この世界の神を召喚しようとしたら、変な女が来たそうだ。
「ちょっと!女神様をよんじゃーたじゃない?」
「我が女神じゃ」
女神召喚に成功したらしい・・・
女神様は、砂漠の国の服を着て、黒髪に肌が濃い。瞳は濃い紫だわ。若いのか、マダムなのか分からない不思議な顔立ちだわ。
王宮で論争が起きたそうだ。
「女神教の発祥は砂漠の国じゃーないですか?」
「いや、女神様は金髪碧眼である」
「そこの女、何か奇跡を起して見ろ」
「あっ?女神だけど、そういうのやってないし~」
一悶着を起しているが、多分、彼女が女神だろう。
これからは安易な方向にいかないと決意したわ。
最後までお読み頂き有難うございました。




