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長編小説 忘れたくない記憶  作者: 柊海音


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第一章 SITSUNEN

飼い猫が外猫で出かけては帰って来ないって事が最近になってよくある

そして2日後になると帰って来る

帰って来ても痩せておらず、逆に丸々としている

それに対し特に気にも留めて居なかった

わが家を忘れ無いで帰って来てくれるだけで嬉しい

ただ毎度なんとなく青ぐさい臭いが漂っていたが…


はじまりは病院から

変わら無い日常…

主人公の七瀬ふたばは都内の病院で看護師として働いている

検温の為病室を周る

「痛み無いですか?」

「眠れました?」

と1人1人に声掛ける

布団を頭まで被り、朝は眠くて話せ無い人も居る

窓際のベッドの患者さんはいつも本を読んでいるのに今日は手紙を書いているようだ

ふたば「お手紙書いてらっしゃるのですね」

ふたばは声を掛けた

すると患者は顔を持ち上げた

そして

女性患者「看護師さん、お願いがあるんですが…」

封をした手紙をふたばへ渡して来る

女性患者「この手紙をある人に渡して欲しいんです

その人は島に住んでいて…失念島って言う場所です」

封筒の端っこに(多可祢さんへ)

と小さく書いてある

失念島?一体どんな島なんだろう

それだけで詳しい話なんて無かった

この手紙をポストに入れれば送る事が出来るのか?

でも住所は書いて無い

そもそも失念島なんて聞いた事も無いし、誰に渡せば良いのかなんて聞いて無いしで、無理じゃ無いかと考える

女性患者「看護師さんには何だか…任せられる気がするのです。どうか他の人には渡したり見せ無いでください」

ふたば「宛先が判らないと届けられ無いかもしれませんが受け取りますね」

受け取ったなら渡すのが使命だとふたばは思い始めた

受け取った手紙を白衣のポケットへ入れた

失念島なんて地図にあったのかしら?

帰ったら検索してみようかな…とふたばは考えた


患者が入院してもう3年となる

白根ミヨリ60才

女性、アパートで独居、家族は居ない

心身衰弱している様子で部屋で発見され入院してからは数日間覚醒せず眠っている様子もあったが、治療後寛解していた

しかし、食事や水分が摂れないので点滴で水分を毎日補っている

その夜白根ミヨリは突然高熱を出し、意識状態が著しく下がりICUへ移動となった

その事はふたばは知る由もなかった

定時後

ふたばは自宅へ帰り、ゆっくり浴槽に浸かり入浴しながら明日の休みは何しようかと考える

入浴後スマホを見ると一件のLINEが‥友希からだ

友希「明日ふたばは休み?暇〜?どこか行かない?」

八潮友希(25歳)ふたばの中学生時代からの親友で猫を飼っている


最近の話題は、ふたばの家の猫が2日に一回敷地を抜けて出て行き、痩せる事無く丸々と太って帰って来るという話で、興味があるらしく頻りに聞いて来る

それに対しふたばは「明日ローズが出かける日だから家に来る?」と友希へメールを入れてみた

ふたばは彼氏とは別れて間もなく、友希は心配してるらしい

きっと気を紛らわせるのにふたばへ連絡をしてくれるのであろう

それに対しイイね!の表示と明日9時に行くと返信があった

朝受け取った手紙と失念島の件はすっかりと忘れていたのだった


猫の名前はローズと言う

名前の由来はおしとやかな歩き方、美人な白猫で

敷地に咲いている白いバラがこの時期になると咲いており、バラの木の下で子猫の頃から昼寝をするのが好きで、花を咲かせ無い時期も昼寝を好んでいる所からローズと言う名前になった

ローズはリビングでマッタリと過ごしている

ローズ〜とふたばが呼ぶとおしとやかに歩いて懐いて来る

ふたばはローズを抱えながら

「君は何処へ毎回向かってるんだい?明日は君が行く場所へ私を連れて行ってね!」と声をかけた

そして眠気が増したふたばは就床する

翌日…9時前に友希は家へ車で到着

ふたばは準備が間に合って無い状態で、リュックに適当に詰め込み、手紙も入れるのであった

昨夜ドラッグストアで値引きされていたウエハース

テーブルの上に置いてあったので一応リュックへ詰め込む

そして、友希と早速出発する

敷地の奥は有刺鉄線になっていて、鉄格子の扉がある

が破れている場所が一箇所ある

人は入れず小動物なら入れるぐらいの穴になっており、ローズはそこを通って行き帰りをしている様であった

先は、雑草が生い茂る荒野になっていて永遠に続いている様に見える…

そして僅かに奥の方は蜃気楼のようにモヤモヤとしている

誰も寄り付きたくない雰囲気だ

鉄格子を開けるには自治会長の許可が必要であり、隣近所のおじさんが会長の為

おじさんの家のドアのインターホンを押す

(ピンポーン)

おじさん「はい」

ふたば「七瀬です、おはようございます」

おじさんは直ぐドアを開けてくれた

おじさん「おはよう、ふたばちゃん、久しぶりだね、お友達と一緒にどうしたの?」

ふたば「ローズがいつもフェンスの破れた所から出て行く姿を見かけるので、友達と一緒にこの先を探検したいと思って」

おじさん「ここ数年は誰も踏みこんで居ない様だけど…おじさんもねそこの土地はいつになっても売却しないのはどうかとは思ってて…今回はふたばちゃんの顔を立ててこっそり協力してあげるよ」

ふたば「そうなんですね、所有者が居たとは…誰も入れ無い場所を開けさせてくれるなんて、おじさん凄い!」

友希「おじさん神〜!」

だが鉄格子の扉で、鍵を掛けてその先を進め無くさせるなんて何だか訳ありなんだなって感じてしまう2人

おじさんは外へ出向き扉を開けてくれた

その後ろをローズが続く様について行く

ふたば(ローズの後をついて行けば何か分かるかもしれない)

そう考えた2人は、ローズを先に行かせてついて行く事にした

そして一行は雑草が生い茂る荒野を進み続けて行く

雑草が顔に当たると痛がゆい

小さい虫も跳んでいる

口は開けないようにしよう

暫し無言のまま更に進み続ける…

数時間立ったのだろうか

喉が渇く…

気付けば雑草が無くなっており道になっている

アスファルトでも無い

砂利道でも無い

ふたば「一旦水分摂ろうか」

友希「そうだね。何だかずっと歩いてる感じがするんだけどさ、もう出口へは普通なら着いてるでしょうに」

ペットボトルのお茶をバッグに入れておいて良かった

友希に声を掛けると、友希も水を持って来てたようだ2人は数口水分を摂りながらまた歩き出す…

すると蜃気楼の中に建物がうっすらと見えて来た

そして、建物がはっきりと見えて来た所で活気のある声が聴こえて来る…

そして微かに海の匂いを感じる

元来た道を振り返ると…霧の中に居る様で全く見え無い

それなのに上空は青々と快晴である

階段があり、階段を踏み外す事無く上って行く…

階段を上った先は見事に驚く光景であった

漁港があり海がある

広い海、そして浮かぶ船、漁師の勇ましい声が聴こえて来る

奥には集落があり海水の匂いが漂っている

カモメの鳴く声や、穏やかな波の音も聴こえて来る

友希「あれ、港、海じゃん?」

ふたば「えっ?!こんな場所あったんだ!」

ローズは吸い込まれる様に奥へ歩いて行く…

ふたば「ローズ」

2人の姿と声に気付いた1人の漁師が遠くからバケツを両手で持ち向かって来る

漁師「お前さん達、どこから来たんだ!

初めましての顔だね、ここに居ると追い出される所か大変な目に遭ってしまうよ

引き返すのなら今だよ、ほら、早よ帰りなさい」

漁師は2人をバケツで隠すように目の前に立っている


ふたば「大変な目…?って私達は怪しい者でも何も無いし、危険な物は持ち運んだりしてません…証明します」

ふたばはリュックの中を開けて見せた

するとリュックの上に偶々置いておいた封筒を目にする漁師

漁師「この封筒は何だい?」

ふたば「はい…こちらは私が働く病院で患者さんから受け取った手紙です

失念島があってそちらに済む知人に渡して欲しいと言われて先日受け取りました」

漁師「失念島…そう言われとったのはここの事かな…数十年前に記憶を抜かれるのだけは勘弁してくれと嘆いた者が数名立ち去った事があったな…お主達、ここにいるのはまずいが…せっかくここに来たのなら多可祢さんに会うと良い

あの家分かるか?一際目立つ金色の屋根の家

彼処に行ってこのバッジを見せれば入れてくれるからほら走って走って」

ふたば「多可祢たかねさんってこちらの読みですか?」

漁師「ん、あっそうそう。多可祢さんに用があるなら大丈夫じゃろ」

漁師からバッジを受け取る

銀色で鏡の様に顔が映るが銀色の先にボヤケた文字が浮かんでいる

漁師の言われた通り前だけを見て2人は走る…

そして300メートル先に見える金色の屋根の家まで向い到着する

一旦2人は深呼吸をし、引き戸をトントンと叩く

「は〜い」引き戸を開けた老婆が顔を出す

ふたば(この方が多可祢さん?)

ふたば「このバッジです…ハァハァ…」

多可祢「さぁ、中にお入り」

2人は家の中へ招き入れて貰える

ふたば「先程、優しい漁師さんからバッジを受け取ったのですが、私達はこの町が始めてなので…ハァ…新顔さんは大変な目に遭うと言われて…ハァここに掛け込めば何とかしてくれると…ハァ」

多可祢「忠雄じゃな…どこまで聞いてるのかは知らぬが…お前達は記憶を忘れてやり直したいと願う者達か?そうじゃ無かったらこの島にいられるのは時間の問題じゃ…後は今ここに来たと言うのを忘れさせる為にこの水を飲んで貰わ無いとならない…そんな決まりがあってな」

多可祢はビール瓶ぐらいの大きさの青々とした水の入った瓶を見せつけてくる

ふたば「あの…

私達はやり直したいとは思ってもいません…

手紙を預かったんです

先日私の勤める病院の患者さんからですが..多可祢さんですよね。多可祢さん宛にお手紙を預かったんです」

ふたばは多可祢へ封筒を渡す。

多可祢「わしに手紙なんて何の様じゃ」

早速、封筒から手紙を取り出し読む多可祢

多可祢がミヨリ…と声を出し涙ぐむ

多可祢「ミヨリは入院中なんじゃな…元気でやってるんじゃな…ミヨリとは友人じゃった…でも命の恩人であったかもしれない…ミヨリはわしが山菜を採りに山に行っとって…足を踏み外して転げ落ちた事があったんじゃ

その時赤子を背負ったミヨリが助けを呼んでくれてな30年も前の記憶じゃ…その時助けて貰った恩は感謝しきれない思いじゃったが、20年前ここで出会った男と不倫をして、水を飲んで忘れるか、男と別れるかの選択を迫られてな…どちらも嫌だと言ったミヨリが抑えつけられて…

強制的に水を飲んでここでの記憶を忘れるよう島人が口へ含ませたんじゃ…でも水を吐き出し飲むのを拒んだんじゃ

記憶は…息子の記憶は忘れたくないと…2人は牢獄に入れられたがわしは見てられんくて2人を逃がしてやったんじゃ

そして男と逃げるようにこの島を離れたんじゃ…ミヨリの子供はこの先の集落に住んでおる、手紙を託されたと言う事はそれなりの使命がお主達にはあったんじゃろな…ミヨリの子供達と顔合わせするのも良いだろう…じゃがミヨリの事は話さんで欲しい

ミヨリの子供…鏡太郎と言ってミヨリを逃がした後鏡太郎には忘れるよう水を飲んで貰った

母親の事は覚えていないじゃろう…鏡太郎は幸せに過ごしてるんじゃ、そっとしておいてやってくれ

ほら、普通に歩いておれば新顔で捕まってしまうじゃろうから顔に印を付けさせて貰おうか」

多可祢は2人の頬に透明な液体を付け文字を書く

多可祢「よしと…顔に書いた文字は島人にしか見え無い文字じゃ…顔に書いてある文字を見ればわしに合った証拠として暫くは何もして来ないだろう

だが間違った事をするとお構え無く捕らえられるかもしれない…ここから出て行けるかは扠置き

くれぐれも秘密は守ってくれないか?わしは争い事になるのは嫌なんじゃ、そっとしておいてやっとくれ」

2人は深く頷いた

そして家を出る

家を出た2人は先へ進む事にした

そして2本に別れた道にぶつかる

左側が山沿いの道、右側は海沿いの道

どちらに鏡太郎が住む家があるのか気にはなったが山沿いの道を通る事にした

やや坂道になっており勾配である

普段歩き慣れていない2人は既に疲れ過ぎていた

すると木造の家が並んでおり、縄跳びをする子供達

花壇に水を上げている女性が居る

花壇に水を上げている女性にふたばは話かける

ふたば「こんにちは」

女性「あら…こんにちは、初めて見る顔ですね、どちらに住む予定ですか?」

新入りだと思っているみたいだ…顔の文字を見て怪しい者だとは思って居ないみたいだ

でも顔に何が書いてあるんだろう…?私はここに住もうと言う気持は全く無い…でもそんな事を言ったら捕まるかもしれない

出来れば直ぐにでも帰りたいけど彼処に戻るのは危ないだろう…明日は仕事なのに帰れるのであろうか…


ふたば「こんにちは、始めまして

今日ここに来たんです、良かったら教えて貰っても良いですか?」

女性「良いですよ、ここで話すのもちょっと…なので家へお上がりください」

ふたば(ここの住人はそう悪い人は居ないみたいだ

初顔の人に平気で話掛けてくれて、家へ招いてくれる安心感がある)

2人で上がろうと思ったら、友希の姿が見え無い

ふたばは辺りを見回すが、周辺には誰も居ず…何処へ行ってしまったのだろうか?

ふたば「一緒にいた友人が居ないんです」

女性「さて…貴方1人だけでしたけど」

ふたば「えっ?そうですか…さっきまで私の後ろについて歩いてると思ってましたが」

付近を見渡すも友希の姿が見え無い。大声で呼んだりしたら住人が集まって来てしまうのは心配だ

きっとそんな遠くには行って無いだろう…と軽く考えた

お邪魔します!ふたばは玄関から中に入る

女性はどうぞと居間へ案内する

居間の座席に座ると

お茶を入れに台所へ向かわれる女性

部屋の中はシンプルだ

畳にテーブルと神棚が上にある…そして小さな棚の中には本が数冊置いてある

女性「お待たせしました、どうぞ」

ふたば「ありがとうございます、頂きます…」

と言いながら飲んだふりをする私

女性「この町には貴方ぐらいの若い女性はあまり居ないのよ…ほとんど高齢者が多いけど…後は過去を忘れたくて逃げ込んだ者達で溢れているのよ」

ふたば「そうなんですね、お姉さんは過去を忘れて逃げて来たのですか?」

女性「そうかもしれないわね…最後に覚えてるのは意識を失って気付いたらベッドで寝ていて…始めの内は農業を手作っていたんだけど、1年前にここで漁師をしている今の夫と知り合って今は結婚して夫とここへ住んでるの

今は専業主婦だけど、たまに農業のお手伝いをしているのよ」

ふたば「そうなんですね、今は幸せですか?」

女性「もちろん!過去に何があったのかは知らない者同士1から始められる恋愛だったし、今は毎日イキイキしてる…私達の子どもを欲しいとも考えているの」

ふたば「そうなんですね、ここには病院があるんですか?」

女性「もちろん!病院もあるし役所もあるかな

お店が無いの、お金は持た無いからね」

私「コンビニやスーパーマーケットが無いのは辛いですね、お菓子や自販機が売ってる場所は無いんですか」

女性「お菓子なんてもう何十年も口にして無いし、ジュースなんて飲んで無いわね、でもね、この町は作物が豊富に実っているの

季節ごとに味覚を楽しめるのは最高よ!後冬が無いから雪は降らないだから過ごし易いわね

恥ずかしながら…地域を一周した事は無くてどのくらいの島なのかは聞いて居ないんだけど…沿岸から向こう岸が見えるからそのぐらいの規模なんだなって思う住人も500人ぐらいじゃ無いのかな?」


ふたば「そうなんですね、この町を好きになれるように散策してみます!ありがとうございます」

女性「困った事があれば何でも相談してね、この先の家は漁港で働いているお家ばかりだから、今の時間は不在かもしれないわね?この島の掟は過去の記憶を消す事

貴方も記憶を消さ無くてはこの場所へは居られ無いのだからくれぐれも用心してね

海沿いへ行けば沢山の人に会えるけど、中には新顔さんに良い顔しない人も居ると思うから…でもね、この島で伴侶を作れば貴方はきっと幸せに暮らせると思うわ」

この島の住人は聞かなくても沢山教えてくれる

コミュニケーションを大切にしてるんだな

テレビも無ければラジオも無いし情報手段が無い

ましてやスマホなんて持た無いだろうし…それでも住人達と支え合って生活してるんだな

そう思いながらふたばは女性の家を出た

山沿いの住人は今は居ないらしいし‥

ローズ、友希はどこに行ってしまったんだろう


その頃友希は突然口を塞がれ小屋に連れ去られていた友希は多可祢の家を出た後、海沿いを見ながら歩くと、ある青年と目が合う

そして互いがびっくりする!!

友希(真守お兄ちゃん!?)

青年は友希に気付きそっと近付き友希を連れ去る

真守「何で友希がここに居るんだ!」

友希「お兄ちゃんこそ何でここに居るの?」

真守「俺の事は良いから早くここから逃げるんだ!」

友希「お兄ちゃん何で?」

真守「ここ数年間で何人もの行方不明者が出て居るんだ!そして…ここへ辿り着いて直ぐ俺は捕らえられ水を飲まされ記憶を消すと言われてたものの…飲んでも俺自身記憶は消され無かったんだ、だが他に何かされるかもしれない

水を飲んでも効かなかったから友希の事が直ぐに分かったんだ

何で友希が居るのかは責めないがここは危険だ!早く元来た道を引き返しなさい!」

真守は友希にそう伝えるとそそくさと後を去って行った

友希は動揺を隠し切れて居なかったが、元居た場所へ引き返す事にした


ふたばは、その場で子ども達の姿を眺めて居ると、

下を向いて道路沿いに立ち青ざめた表情の友希が現れる

ふたば「友希どこへ行っていたの?」

友希「真守お兄ちゃんに会った…この島に居て早く引き返せって!」

ふたば「えっ?ここに友希のお兄さんが!!どうして??良い人も沢山いるって聞いたけど…お兄ちゃんって島の住人なの?」

友希「島に到着したら捕らえられて水を飲まされたって、記憶を消すって言われたけど記憶はあるみたい…お兄ちゃんは記憶が消されてると思ってこの島に居られるけど、私達新顔はどうなるか判らないよ」

ふたば「頬に印があるから周りはまだ気にならないのかもしれないね…さっき知り合った女性は普通に話てくれたし…でもお兄さんの言ってる事も気になるね

これからどうしようか?」

友希「元来た場所へ戻るしか無いんじゃ無い」

ふたば「まだこんな陽がある内に戻るには、捕まってしまうリスクは高いよ」

すると漁師達の声が遠くから聴こえて来る

友希「大変だ!漁師達がこっちへ向かって来るよ」

ふたば「更に上に上がろう!きっと息を潜められる場所はあるから」

2人は漁師達が向かって来る更に上を上って行く

上へ上がると海沿いは見晴らしの良い地平線が見えるが、ずっと見て居られ無い

カモメが飛び交う

海風が冷たい

更に駆け上がって行くと赤子の泣く声がどこからか聴こえて来た

更に声が近くなって行き、一件の家の中から響いて来た

一向に泣き声が止まる事は無い…

ふたばと友希はそっと家の窓から赤子の様子を見る事にした

すると赤子の横で倒れ込んでいる女性が居るのが見えた

ふたばは思いがけず家のドアを叩いた!

窓際から覗いている友希は反応が無い様子のジェスチャーをしている

引き戸を動かすと開いた

鍵はかかって無い様だ

ふたばは女性へ駆け寄る

ふたば「大丈夫ですか!しっかりしてください!!」

女性に声を掛けていると友希も家へ入る

隣で泣き止まない赤子を友希は抱き、歌を歌ってあやし始める

女性の脈は速い…冷や汗を掻いている…青白い顔をしている…おそらく貧血かもしれない

窓を開け、女性の足を椅子の上に上げる

デニムのズボンのボタンを外してみた

声を掛け続ける…すると女性が目を開ける

ふたば「大丈夫ですか!」

女性「は…い…突然フラッとしちゃって大丈夫です」

ふたば「水分飲めますか?」

友希にテーブルに置いてあった容器に水を入れて貰い持って来て貰う

女性へ飲ませると女性はゆっくりと目を開けられる

女性「ここ数日漁から帰って来ない主人を待つのにろくに水分や食事を摂って居なくて・・・

我が子にミルクだけを与えていたのですが…私には限界があったみたいです」

ふたば「育児はお母さんも健康で居なくては務まらないですよ、ご主人が帰って来なくても栄養を付け無いとどうにもならないです」

女性「ありがとう」

ふたばはリュックからウエハースを取り出すと3枚女性へ渡した

ふたば「これぐらいしか私には出来無いです…ならず者なので病院の場所が判らないし…こちらをあまりウロウロ出来無いですし…」

そして友希と立ち去ろうと玄関へ向かう

すると

「ただいま〜!!」と大声でドアを開ける漁師が現れた

2人「!!」

漁師は直ぐ事を察したかのように女性の元へ駆け寄る

漁師「また貧血起こしたんか!俺が居なくても栄養摂れって散々言ってるのに…んっ?これは?」

ふが女性に渡したウエハースを見た漁師は一旦顔が険しくなる様子もあったが…

女性は自分を2人が助けてくれたと何度も漁師へ言ってくれている

漁師「大丈夫だよ、君達にどうするって事もしないし、助けてくれたんだ、何かお礼をしないとな」

漁師は突然籠に入れてある魚を取り出すと台所へ向かい包丁で丁寧に捌き始める

そしてふたばと友希へ差し出す

漁師「この魚はこの島でしか捕れない高級魚なんだよ美味しいから食べてみて」

2人「美味しいです」

味は鮪の中トロを食べている様で…口の中でトロけた

漁師「でしょう、この魚を釣るのには数日かかるんだよ。今回の収穫は2匹、後は定番の魚達

そして肉や野菜や米や果物も頂いて来たから今週分の食事は凌ぐ事が出来るだろう」

ふたば「貴重なお食事を頂いてしまって…」

漁師「いやいや、気にしないでくれ

常備食も実は保管しているからね。なのに連れは全く手を出さ無くて…」

ふたば「奥様もこまめに水分や栄養を摂ってくださいね!この島ではナッツやほうれん草は収穫出来るんですか?」

漁師「ナッツ類は鳥に食べられてしまって中々収穫は出来無いんだよ

でもナッツ類を食べた鳥達を私達は頂いているんだハハハ…ここでほうれん草という物は見た事も聞いた事も無いね」

ふたば「そうなんですね、奥様の為にも糖質があって鉄分のある物食べさせてあげてくださいね」

漁師「色々と詳しいんだね!お医者さんかな?」

ふたば「私は看護師をしています」友希に腕を摘まれる

ふたば「イタタタッ」

友希「長居するのは申し訳無いのでここで失礼させて頂きます」

漁師「いやいや、私達は貴方達を捕らえるなんて事しませんよ、本当です

連れがもう少し発見が遅れていたらどうなってしまったのだろうと思いましたから…もしよろしければ2階が空いて居るので今夜はそこをお使いください」

漁師の言葉を信じて良いものか迷ったが、何だか安心感が持てる気がしていた

家の庭から数時間歩き続けた先が、

見慣れない世界…疲れはどっとのしかかるような気持となり…泊まらなくても少しだけ休んで発とうという気持ちになる

少し休んだら今夜には発とう…そう思いながら漁師に軽く頷く

ちょうどその時、正面の小窓からその光景を覗いて見ていた老婆とふたばは目が合い失神しそうになった

多可祢だ

友希「ふたば大丈夫?どしたん?貧血起こした?顔ヤバいよ」

ふたば「違うよ、窓から昼間会った多可祢さんが見てたの」

友希「えっ?それやばくない?」

ふたば「まぁ、気のせいかもしれない…私も今日疲れちゃったよ…お言葉に甘えて休ませて貰おう」

友希「そうだね、出発は夜明け前に」

2人は2階へ上がる事にした

数時間後…いつの間にか雑魚寝をしていたふたばはトイレへ行きたくなり、貸して貰おうと下へ下りた

するとそこには漁師と多可祢が向い合って話をしている様だ

2人の事を喋ってるのでは無いかと感じたふたばは、静かに2階へ上がると友希を起こす

ふたば「多可祢さんがいるよ!私達の事話てるのかも?漁師が捕らえ無いって言ってたけどもしかすると捕らえる準備をしてるんじゃ無いのかな…」

友希「その線あるよ!絶対!!どうやって逃げる?」

2階からの窓は固く閉まっている…壊してまで窓を開けて飛び出すなんて事はしたくない

下まで下りて玄関から出るのは位置的に気づかれてしまう…

でもそんな時赤子の泣き声が響いて来る

ふたば「今のうちしか無いね、この隙に出よう」

2人は静かに階段を駆け下りる

赤子をあやしていた漁師は背中を向けていたが、生憎多可祢に気づかれてしまう

ふたば「もうおしまいだ…」

多可祢「ほら、ちょっと良いかい」

多可祢はふたばを呼び出す

多可祢「鏡太郎に例の話は言っていないだろうね?」

ふたば(鏡太郎??漁師さん…ミヨリさんの息子!

あの漁師さんがミヨリさんの息子だったの!!)

ふたばはびっくりする!多可祢には手と首を振る

ふたば「あの方が鏡太郎さんだなんて思っても見なかったです!多可祢さんは私達の事気にして追って来てたんですか?」

多可祢「いいや、違うよ。沙苗の様子が気になったんじゃよ沙苗はわしの妹の娘なんだよ」

ふたば「そうなんですね、貧血を起こしていましたからね」

多可祢「滋養強壮を付けなさいって再三言っていたんじゃが…全く聞く耳を持たぬ娘でな…この度はお世話になりました」

ふたば「いえいえ、大した事して居ないですから

私達この島から去りたいんです」

多可祢「そうじゃったな、今夜は漁へ出る事はせんし夜歩きしてる者は居ないはずじゃ…わしが見張ってはっから今夜出なさい」

ふたば「お言葉に甘えます、荷物を持った?友希」

友希「ごめ、ごめ、スマホ多分上に置いたままだった」

友希は2階へ再び上り、数分後下りて来る

ふたば「随分かかったね」

友希「ま、あね‥」

そして…夜は更けており元来た場所へと戻る2人

電灯の無い暗い道を進む為

息を潜めて静かに進む…

友希「こんな真っ暗じゃ何も見え無いよ…あっスマホの電池まだあるからこれをライト代わりにして進めば良くない?」

ふたば「いやいやバレるでしょ、やめようやめよう」

友希がスマホをチカチカさせている光で野良犬が吠えて近づいて来た

ふたば「ヤバい!!走るよ!!」

2人は暗い道を走り続ける…そして山道を下ると、二手の道に着き、そこから一直線朝来た階段まで辿り着く

ふたば「ここまで着けば後は抜けるだけだからもう少し」

友希「そうだね」

2人は階段を下りていく

そして雑草の茂みの中に入れば全く別世界

かき分けて進むしか無い…でもスマホのライトを照らせばまた犬がやって来てどうなるのか判らない

ふと階段の下に用水路がある

使われて居ないみたいだ

ふたば「もう少し明るくなるまでそこの用水路で待機しよう」

友希「それが良いね!ローズも待ってれば来るかな?あっ、ねぇ、そうそう…さっきスマホを取りに上がったら部屋に衣装ケースあったでしょう

ほんとは他人の家上がって見るのもどうかと思うけどさ、この島の人達洋服とかどうやって仕入れてるのかとか気になっちゃってね、開けてみたんだ

そしたらさ扉の内側に写真が貼られていたんだよ…

沢山早く下りなくちゃって急いでたつもりなんだけど、ついつい一番下に貼ってあった写真を手にしてポケットに入れて来ちゃったんだよね~」

ふたば「ねぇねぇ、それって絶対ダメだって」

友希「仕方無いじゃん

じゃあ戻って返そうか?」

ふたば「戻りたくは無い、ねぇねぇ写真見せて…」

友希は写真をふたばに見せた

そこに写っていたのは間違い無く若かりし頃のミヨリさんと幼い鏡太郎さんの写真だった

ふたば「鏡太郎さん、ミヨリお母さんの記憶消されてるはずなのに何で写真があるんかな?もしかすると鏡太郎さん…お母さんの記憶はあるのかもしれないんじゃ無い?」

友希「消され無かった記憶…!確かに!お兄ちゃんも水を飲まされたけど記憶は消されて無かったし…何だか謎だよね?」

ふたば「ミヨリさんの手紙を鏡太郎さんに渡した方が良かったんじゃ無いかな?」

友希「私もそう思った」

ふたば「でも、一先ずここを去ろう!そしてまた行くってのはどう?」

友希「その時はきっと捕まるよ」

ふたば「そうなったらそうなったって事で、さあ明るくなったら出発だ」

そして日が昇り始めた…そっと日の出から海沿いを覗くと遠くに赤い橋が見える

そしてキラキラと輝く綺麗な海

ふたば「友希、海がとても綺麗だよ!あの赤い橋って来た時見えたっけ?」

友希「うわぁ~凄い綺麗だね!!私は海なんて見て無かったよ

写真撮りたいんだけどさ〜シャッターボタン押しても撮れないよ」

ふたば「ほら、そんなに動いてたら見つかっちゃうから…座って座って」

すると遠くからローズがゆっくり近づいて来る

ふたば「ローズ〜」

ローズはこちらにやって来る

お利口な猫さんだこと

2人とローズは元来た道を戻り始める…

失念島があった事を忘れそうなぐらい霧が立ち込めた数時間歩くとスマホの電波が届くようになった

そしてまた鉄格子まで辿り着いた

ふたば「おじさん居ないかな?連絡先知らないからな」

それから15分後、犬の散歩に出かけるおじさんを見つける

2人「おじさ〜ん、おじさ〜ん」

おじさんは気付いて犬を連れながら鍵を開ける

ふたば「良かった〜、おじさん居ないんじゃ無いかと焦ったよ」

近所のおじさん「実はいつ帰って来るか、帰って来るかって心配してたんだよ…捜索願いを出そうかとも思ったぐらい…君達両親は何も知らないんだよね?

自分のせいだって頭を抱え込む程だったよ、でも…良かったおかえり」

おじさんには荒野の向こうに島がある事、そこで起きた事は話さ無かった

ふたば「おじさん、迷惑かけてほんとにごめんなさい!ローズも無事に連れて帰る事が出来たので良かったです」

おじさん「くれぐれも何処へ出かけるとはご両親には伝えておきなさいね」

ふたば「はい、分かりました」

友希「で、仕事はどうするの?私は休みだからこのまま帰るけど」

ふたば「あっ、仕事ね…ヤバい!後出勤まで1時間しか無い、準備して行かなくちゃ」

友希は敷地に駐めておいた車に乗り込み「またね」と言って帰って行く

お互い相当な疲れが残ってしまっていた

ふたばも家へ入りいつもの日常へ戻れた安堵感で大きく深呼吸をした

シャワーを浴びて仕度をし会社を出勤するふたばであった











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