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第41話  高校1年生 ~繋がった記憶~

8月4日(金)。


再び四人で集まることを決めていた日。


午後から、前に会ったファミレスで集まった。


「で、みんな、“協力してくれる大人”、思いついた?」


晴基が他の三人を見まわして言った。


「うーん、やっぱり条件に合う人、難しいな」


「だよね」


「うん……」


晴基が小さくため息をついた。


「だよな。俺も心当たりなし。

小学校で初めて光る本を見つけたときから、四人で話すこともなかったもんな。

仕方ないけどさ、あのときは、こんなことになるなんて思ってなかった」


健斗が不思議そうな顔をした。


「どういう意味?」


「そのとき、誰かに話してれば、もうちょいハードル下がったかもなって思っただけ。

“あのときの、あれのこと……”って言えば、ちょっとは耳を傾けてくれるかもしれなかったのにさ」


「なるほどね。でも、あのとき、誰かに話そうなんて思わなかったな」


「話したって、信じてもらえたかわかんねーから」


「むしろ、ムリって決めつけてたかもな」


「ははっ。そりゃそうだよね」


由奈は笑いながら聞いていたが――ふと手を止めた。


(話してれば……)


その言葉が、胸の奥に引っかかった。


(……あれ?)


小さな違和感が広がる。


はっきりとは思い出せないのに、

何かが引っかかる。


ぼんやりと浮かぶ光景。


職員室。

先生と向かい合って……。


(私……)


次の瞬間、記憶が一本に繋がった。


「あ……」


由奈が小さく声を出す。


(……話してる)


一気に繋がった。


「私……志野先生に話してる」


「え?」


三人が由奈の方を向く。


「志野先生って、六年のときの?」


由奈が頷く。


「本が光ってたこと、どうしても気になって。あのとき、先生なら何か知ってるかもって思って話したんだ」


***


あのときの光――今でも、はっきりと思い出せる。


書庫の奥で淡く光る本を見つけた。


本の方から、見つけてほしいと言われた気さえした。


これまでに見たことのない、あるはずのないことだったのに、

不思議と不安な気持ちにはならなかったあのときのことが、今でも不思議で。


誰か大人に聞いてみたかった。


担任の志野先生は、体格は立派だが温厚な若い男の先生だった。


まずは生徒を信じ、受け止め、話を聴いてくれる。

その上で、生徒の気持ちに寄り添いながら必要なことを伝えてくれる。

真面目なだけでなく、フランクで話しやすい。


由奈が先生に本のことを話したとき、


「へぇー、不思議な体験だね。初めて聞いた。興味深いね」


そう言って、先生は真剣な表情のまま図書室に行き、司書の先生と話してくれた。


「もっと昔……百年くらい前、

同じような相談をしに来た子たちがいたって記録があるらしくて。

司書さんたちの間では知られてる話なんだって。

……先生も見てみたいよ」


そう言って優しく笑ってくれた、あの顔。


あのとき、由奈は安心して少し泣きそうになったことを思い出した。


――志野先生なら、このことを知っている。

きっと、覚えていてくれる。


***


「すごいな、由奈」


「え、そのときは単純に、先生に話してみようと思っただけだよ。先生なら信じてくれそうって、直感的に思った」


「それが、今に繋がってるんだから、なんかすごいね」


「これで、大人探しはかなりハードル下がったな」


「志野先生なら、俺たちを理解してサポートしてくれる大人にピッタリだ」


四人とも頷いた。


志野先生であれば、納得できた。


由奈がコップの縁をなぞりながら言った。


「まずは、志野先生が今どこにいるのか調べないとね。確か、私たちが卒業したタイミングで市の教育委員会に異動だった」


「あー、他の学校じゃなかったっけ」


「じゃ、会うの、難しいかなぁ?」


「とりあえず、小学校に電話して聞いてみる?」


四人は、今はそれにすがるしかない。


「私、電話してくるよ」


由奈が立ち上がって、店の外に出ていった。


しばらくして、由奈は明るい表情で戻って来た。


「先生ね、今、また戻ってきてるんだって」


「えっ!」


「俺たち通ってた小学校に?」


由奈が大きく頷いた。


「マジか!」


「今日はいないけど、月曜日にはいるって」


「じゃ、会いに行くか」


「ねぇ、ちょっと待って」


桂花が三人を見た。


「これ、異世界に行くって前提で話してるってことだよね?」


「あ……」


沈黙が、静かに落ちた。


「私は行こうと思ってる」


由奈は小さく息を吐いた。


「怖いけど……行かないと、後悔すると思う」


晴基も頷いた。


「そうだな。俺もそう思う」


桂花も目を伏せて言った。


「そうだね、私もそう思ってた」


「健斗は、まだ読みかけだから……」


健斗は晴基の言葉にかぶせて言った。


「いや、俺も行く。前に選ばれた人たちもどうにかやってたし。

行かなきゃ、あっちの世界が滅ぶなんて……」


晴基が落ち着いた笑顔を見せた。


「だよな」


健斗が続けた。


「案外、これまでも普通のタイプが選ばれてるんだよな。めっちゃ能力高いのが行ってるわけじゃないし。あっちの人たちと交流してたりするじゃん。ああいうの見ると、放っておけないよな」


由奈も微笑む。


「そうだよね。私も、あの本読んで、放っておけないって思った」


桂花が頷いた。


「じゃ、月曜日、志野先生に会いに行こう」


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