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第40話  高校1年生 ~おいてけぼり~


健斗と晴基は、ファミレスで由奈と桂花と別れてから二人で歩く。


晴基が健斗を見た。


「健斗、今日は莉乃とうまく話がついたの?」


「まぁね。あいつはまた仲良くしたいみたいなこと言ってたけど。

俺にはそういう気ないし。

晴基と由奈にこれ以上、迷惑かけるなって言っといた」


「そっか。ま、直接言えて良かったんじゃないの?」


「ああ」


「それにしても健斗、読書、頑張ってるな」


「ああ。由奈が読書に付き合ってくれたとき、最初にだいたいの流れを説明してくれてかなり読みやすくなったんだよな」


「そっか。それはよかった。

その日に一番分厚いやつ読み終わったって言ってたよな。

一日かけて読んだんだろ。由奈、ずっと付き合ってくれたの?」


「うん、付き合ってくれた」


晴基が健斗の顔をちらっと見た。


(満足そうだな)


「けどさ」

健斗の声のトーンが下がった。


「ん?」


「その帰りにさ、駅で由奈のクラスのやつに会ったんだ」


「そうなの?」


「やばいイケメン。スペック高そうなやつ。晴基も、前に由奈とそいつのこと話してたことあるよ」


「……ああ、もしかして春日?」


「そう」


「春日がなに?」


健斗は少し面白くなさそうな顔をした。

「由奈のこと、駅から家まで送っていくって。

駅から電車で帰るやつがわざわざ言うからさ」


「へぇ、そんなことがあったのか。

春日、さすがだな」


「いや、あの日、俺のせいで遅くなったんだし、由奈に世話になったのは俺だったし。

だから、俺が送るって言ったんだけどさ」


「へぇ、そうなんだ」


「見た目いいし、雰囲気いいし、声もかっこいいし。

……やべぇなと思った」


「まぁ、あいつはすごいよな。学校でも目立ってる。

でも……、何がやばいわけ?」


晴基の問いに、健斗は拍子抜けした顔をした。

「え……?

なんか……、見た目とか。服のセンスとか。シンプルだけど、良く見えた」


それを聞いて晴基が笑った。

「だったら、健斗もやばいじゃん」


「んなことねーし……」


晴基は頷いた。

「春日、確かにすごいけど。

やばいってのは……。

健斗は、春日がめちゃくちゃかっこいいってことが言いたいの?」


「いや、そうじゃなくて……由奈のこと見る目が……」


「え?」


「なんか、女子を見てるって感じで」


「だって、女子じゃん」


「まぁ、そうだけど……」


晴基は小さくため息をついた。


「で、結局、健斗が送ったの?」


「ああ。由奈、最初は断ってきたけど、俺が行かないと春日が行くってなりそうだったから」


「そっか。春日、由奈のこと、学校でも誘ってるみたいだし」


「そう言ってたな……」


晴基がおどけて言った。


「だから春日は自分の帰りが遅くなっても送りたかったんだろ」


健斗は目を伏せた。


(由奈は、俺が送るって思ってなかったって言ってたし……。

しかも、晴基も春日アリかよ……。そりゃそうか……)


(けど、あのとき、送るって言い切らないと、なんか嫌な気分だった。

あいつが由奈送るの……)


「そっか……。じゃ、次は春日の邪魔しないようにしないとな」


そう言って健斗は顔を上げたが、声に気持ちが籠っていなかった。


晴基は真顔で言った。

「いや、春日は春日で頑張ってるだろうけどさ。

俺は、健斗、由奈のこと送るって言って良かったと思うよ。

由奈も健斗に送ってもらえて悪い気しなかっただろうし」


「ああ。そうかな……。

あのとき、由奈、途中暗くて怖いところあるって言ってたし」


(由奈、あの日一日読書手伝ってくれたし、

今日だって莉乃のことでわざわざ来てくれた。


そのあと、晴基たちが来なければ……

二人で過ごしても、別におかしくなかったよな)


晴基は健斗の横顔を見た。

健斗は、目を伏せて石を蹴りながら歩いている。


すると、健斗がおもむろに顔を上げて晴基の方を見た。

「けどさ、由奈って、男子みたいなとこあったじゃん。

それなのに、今は春日みたいなやつが送るなんて言い出すんだからさ……。

由奈、変わったのかな。

それとも、春日の趣味が変わってるのか」


そこまで言って健斗は目を伏せた。


晴基は一瞬、息を飲んだような顔をして目を見張った。


「……は? 健斗にはそう見えてんのか」


晴基は、ほんの少しだけ眉をひそめた。


「俺は、前からああいうやつ、普通にいたと思ってたけどな」


「え……?」


健斗は戸惑ったように顔を上げる。


晴基は一瞬だけ言葉を止めてから、軽く息をついた。


「……まぁ、春日が変わってるって思うなら、それでもいいけど」


健斗は曖昧な表情で頷いた。

「うん……。変わってるのかな」

目が泳いでいた。


晴基は健斗を見ながら、またため息をついた。

(……またそれか)


(わかってるくせに)


(せっかく、また会えたのに、また同じことすんのかよ)



翌日、8月3日(木)。


夏期講習で高校に行った。


今日の夏期講習は由奈と晴基は同じ教室で受けていた。

由奈のクラスの教室で、半分くらいが由奈のクラスメイト。

残りが晴基のように別のクラスの生徒だった。


授業が終わって晴基が机を片付けているとき、春日が由奈に声をかけていた。


(やっぱ、春日、そうだよな。

今日も、一緒に帰るのか?)


すると、男子二人と女子が二人、由奈と春日のところに来て、六人で話し始めた。


女子二人は、普段から由奈と仲良くしている顔ぶれだ。男子二人は春日と一緒にいる印象があった。


小柄で愛嬌がある女子が由奈に尋ねた。

「ねぇ、由奈ちゃん、土曜日、お祭り行かない?」


「あ、そういえばあるね」


春日が興味深そうに言った。

「そうなんだ。確かに、案内の看板見かけるかも」


由奈は春日を見て言った。

「うん、駅の付近からあの近くの神社あたりにかけて屋台とか出るんだよ」


小柄な女子が続けた。

「裕香ちゃんと春日くんは地元じゃないから見たことないよね。

あのお祭り、結構盛大じゃない?」


「そうだね」


祭りを経験したことがある生徒同士で頷き合っている。


「今、みんなで行こうって話してたの。由奈ちゃんと春日くんも、どう?」


由奈は春日を見て言った。

「でも、春日くん、わざわざ駅まで来ないといけないよね」


春日は即答した。

「いや、せっかくだから見に来るよ」


小柄な女子が由奈に言った。

「裕香ちゃんも来るって」


裕香と呼ばれた女子は顔立ちが整っていて背が高くモデルのようだ。


小柄な女子が更に由奈を誘う。

「由奈ちゃんも行こうよ」


由奈は笑顔で頷いた。

「うん、いいよ」


「ねぇ、由奈ちゃん、浴衣で行かない?」


言われた由奈は、困った顔をした。

「私、持ってないんだよね」


「それなら私のお姉ちゃんの使ってよ。お姉ちゃん、大学の近くで下宿しててさ。お祭りのときいないから。

それに、あんまり浴衣着ないからってお母さん、残念がってるから喜ぶと思う」


「そうなんだ」


「それにあの浴衣、絶対、由奈ちゃんに似合うと思う。薄い紫色で小さい花がたくさん載ってるやつなんだけどさ」


裕香も由奈を誘った。

「由奈、せっかくだから佳菜子のお姉さんの借りて着て行こうよ」


「うーん、似合わないと思うけど。

でも、いいよ」


佳菜子は嬉しそうに言った。

「やったー、なんか楽しみになってきた」


由奈は楽しそうに笑っていた。

そして、六人は一緒に帰っていった。


去り際に、由奈は晴基の方を見て、小さく笑って手を振った。


(由奈、気づいてたのか。やっぱ、よく見てんな)


晴基は手を振り返しながら、昨日の健斗の顔を思い出した。


(……今のクラス、めっちゃ楽しそうじゃん)


そして、小さく息を吐き、教室から出て行った。








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