第15話-A 中学3年生 ~もう、同じ道じゃない~
中二と中三は同じクラスのまま上がる。
由奈と桂花のクラスは隣同士になり、これまでより頻繁に顔を合わせるようになった。
土曜日の午後。
春の風がゆるやかに吹いていた。
由奈と桂花は一緒に遊ぶことにしていた。
受験勉強用に、由奈が新しいノートを買いたいと言ったので、二人は小学校の向かい側にある文具店を目指して歩いていた。
この道は、昔からよく知った街の風景のはずなのに、季節が変わるたびに少しずつ色を変えている気がした。
二人は顔を見合わせたり、景色に目をやったりしながら、笑い合って歩く。
そして、文房具屋が見えてきたところで――
「……あれ? 由奈と小藤さん?」
声をかけられ、そちらに顔を向けると、そこには健斗と晴基が立っていた。
私服のふたりは、いつもの学校の制服姿より、少しだけ遠い存在に見えた。
「偶然だなぁ。なにしてたの?」
晴基が笑う。
「文具店にノート買いに行くとこ。そっちは?」
「ゲーセン行って帰るとこ。ちょうど帰り道でさ」
何気ない立ち話の中、由奈と晴基が同じ高校を志望していることが話題にのぼった。
「えっ、古山くんも志望校一緒なんだ。コースは違うけど」
由奈が驚いたように笑う。
「うん、偶然。でも、由奈ならそっちのコースでも絶対受かるでしょ」
晴基が穏やかに答える。
その会話を聞いて、健斗は少し唇を尖らせた。
「いいな……俺も、晴基と同じとこ行きたかったけど。勉強したくないんだよな」
ぽつりと、どこか投げやりな口調。
由奈は健斗の方を見て、小さく笑った。
「じゃあさ、二人で一緒に勉強すればいいじゃん。古山くん、教えてあげれば?」
「……無理無理」
健斗はすぐに首を振った。
「まぁ、高野くんは、勉強楽しくなさそうだし。そういうの、進学校だと無理しても続かないだろうから、いい選択だと思うよ」
由奈の口調は、からかい混じりだったが、優しさも滲んでいる。
健斗は苦笑いを浮かべて肩をすくめる。
桂花は、そのやり取りを少し後ろで黙って聞いていた。
「なんか……それぞれ、違う道に進むんだなぁって思っちゃった」
由奈がぽつりと漏らした。
誰も返さなかったが、誰も否定もしなかった。
春の風が、四人の間をゆっくりとすり抜けていった。




