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第5話騎士団長と宮廷魔導士

第5話騎士団長と宮廷魔導士

「自己紹介が遅れたね勇者君。私はレーヴェ王国宮廷魔導士、リアンナ=ヴェールラルト」

「俺はレーヴェ王国騎士団長!ジャン=スロベイン!」


そう名乗った2人の男女の値ふみをするような視線が、僕に注がれる...なんだか少し落ち着かない。


「異世界の光に選ばれし勇者って言うからどんな奴かと思っていたが、こんな見るからに優男っぽいやつが魔王なんかに勝てるんかねぇ」

「...君みたいな野蛮な脳筋よりは遥かにいいと思うよ?」

「誰が脳筋だ!そう言う人を小ばかにしたことを言うからお前は行き遅..『ブレイズショット!!』っっぶねぇ!!!殺す気かテメェ!」

「ふん、この程度の初級魔法で君が死ぬわけないだろう?」

リアンナさんはジャンさんに向けて火の矢らしきものを飛ばした。初めてみた。あれが魔法!すごい、何もないとこから火の矢が出てきた。それにジャンさんも軽やかな身のこなし。最低限の移動で火の矢を避けてる。たったこれだけでこの人達がとても高い実力を持っていることを本能的に叩きつけられた。


「....勇者様、このような見苦しいものを見せてしまい大変申し訳ございません、、、」

「い、いえ!とても仲がよさそうで微笑ま『仲良くない!』.......」


う、うーん...これから僕はこの人たちとうまくやっていけるのかな...そう思っているとロンメルさんは大きなため息を吐くと、戸惑っている僕に説明をしてくれた。


「勇者様には先ほど魔王軍に対抗できるようにするための戦闘訓練をしていただく、そうお伝えしたかと思います。光の勇者を育てる重要な訓練、その教育係とあれば並の使い手では務まりません。そこで我が国が誇る精鋭中の精鋭であるこの2人に、勇者様の教育係をしばらくの間任せることになりました。」

「そういうことだ勇者君。私は君の魔法訓練担当、宮廷魔導士のリアンナ、そしてこのむさくるしいのが君の肉体改造訓練担当、騎士団長のジャンだ」

「むさくるしくて悪かったな...後俺の訓練に変な名前を付けるなよ」


この2人が、僕の師匠...自分に師匠ができるなんて、元居た世界じゃ想像したことも無かったな...けどわざわざ僕のために教えてくれるんだ、精一杯頑張ろう!


「リアンナさん、ジャンさん、これからよろしくお願いします!」

「いい返事だな坊主、だが俺のことはこれから師匠と呼べ」

「は、はい!師匠!」

「何をやってるんだか...そうだ宰相殿、そもそも勇者君にはこの世界のことそして魔法やギフトのこと、どこまで伝えているんだい?」


リアンナさんは思いだしたかのようにロンメルさんにそう尋ねた。


「勇者様には我ら人類の情勢や勇者様が光の魔法を使えるということはお伝えしている。だが、我らの細かい内情やギフトに関することはまだお伝えできていない。そもそも勇者様は先日召喚されたばかり、なのでそれも考慮してもう一人勇者様に教育係をお付けする、勇者様、今朝メイリ―というメイドをお見かしましたでしょうか?」


メイリー!?あの娘が僕のもう一人の教育係だったんだ!


「は、はい!とてもいい娘でした!」

「お気に召されたのならこちらとしても嬉しい限りです。勇者様、メイリーはあなた専用のメイド兼教育係です。何かご要望や気になったことがあればすぐに彼女にお伝えください。」


つまりメイリ―は家庭教師みたいなものか...あんなにかわいい子が家庭教師だなんて楓が聞いたらうらやましがるだろうなぁ。


「では勇者様、時間になりましたので本日はここで終わらせていただきます。戦闘訓練は明日からになりますのでここからはメイリ―がこの世界のことなどをお教えいたします。ではわたしはこれで。」

「あ、ありがとうございました!」

「俺たちもそろそろ行くわ、坊主!明日からビシバシ鍛え上げるから覚悟しとけよ!」

「勇者君、明日からよろしく頼むよ」

「はい!よろしくお願いします!!」


___三人が去ったころ、控えめなノックと共にメイリ―がやってきた。


「勇者様、失礼いたします」

「どうぞー、驚いたよメイリ―!君が僕の教育係なんて!」

「お伝えするのが遅くなり申し訳ありません、これから勇者様のため教育係として、メイドとして尽くさせていただきます」


そう語るメイリ―はとても意気込んでいたけどそれがなんだかかわいくて、僕はなんだか笑いそうになってしまった。


「ふふっ、ありがとうメイリ―。じゃあ早速で悪いんだけどさっきロンメルさんが言ってたギフト?とか他のことも色々教えてくれないかな?」

「はい、勿論です!まずは_____」










それから僕はメイリ―に様々な事を教えてもらった。まずギフト、これは世界に選ばれた者だけが持てる特別な才能で、調べてもらったら僕にはギフトが二つあるらしい。だけどその詳細までは分からないらしい。




「……ですがギフトは、その持ち主に真に必要な時に目覚め、その時を境に使いこなせるようになります。勇者様がこれから成長していく中で少しずつ判明していくはずです」

メイリーは真剣な瞳で僕を見つめ、言葉を続ける。


「人によっては戦闘に関するもの、あるいは知識や生産に関するもの……本当に様々なのです。勇者様がどんなギフトをお持ちなのか、私もとても気になります」

「そっか……僕に二つもあるってことは、それだけ期待されてるってことなのかな」

「はい。ギフトを二つ持つ者など、この国の歴史を振り返ってもほんの数人しか存在していません。だからこそ、勇者様が召喚された時、王様も宰相様もあれほどまでに喜ばれていたのです」


メイリーの言葉を聞いて、僕の胸にずしりと重たい責任がのしかかる。けれど同時に、不思議と心の奥が少しだけ熱くなるのを感じていた。


「……責任重大だな。でも、僕にできるかな」

「勇者様なら、きっとできます」


間髪入れず、迷いのない声音で断言するメイリー。そのまっすぐな瞳に見つめられると、胸がどきりと跳ねて、思わず視線をそらしてしまった。な、なんだろう……こうやって真っ直ぐ信じられると、逆に緊張するな……


「それと……もうひとつ重要なことをお伝えしなければなりません」

「えっ、まだあるの?」

「はい。勇者様は既に光魔法の適性を持っておられることはご存知ですね?」

「うん。ロンメルさんからも聞いた」

「光魔法はこの世界においても特別な力です。癒やしと浄化、そして破邪……魔王軍と戦うために欠かせない力。それを扱える存在は、勇者様以外にいません」

「僕だけ、か……」


そう言われると、ますます逃げ道がなくなったような気がした。だけど——ふと、楓のことを思い出した。かえでも、別の場所で頑張ってるんだろうか……。僕ばっかり不安がってちゃ、情けないよな


「……よし、頑張るよ」

「はい!」


メイリーは嬉しそうに微笑んだ。その笑顔を見ていると、少しだけ肩の力が抜けていくような気がする。






_____翌日、僕の本格的な訓練が始まった。


「おら坊主!もっと腰を落とせぇ!!」 「師匠、そんな無茶言わないでください!これ以上は足が震えて……っ」 「泣き言言うな!敵は待っちゃくれねぇんだよ!」


ジャン師匠の怒号が訓練場に響き渡る。重たい木剣を振り続ける腕はもう限界を超えていて、握力が抜けそうだ。汗が額からぽたぽたと落ちる。

「はあ、はあ、はあ」

「……ふふ、なかなか頑張っているじゃないか。見直したよ勇者君」 「リアンナさん、笑ってないで助けてよぉ……!」 「私の担当は魔法訓練だからね。肉体はあの脳筋の管轄だ」

「聞こえてんぞおい!」

どうやらこの二人のやりとりは毎度のことらしい。だけど、なんだか息の合った漫才を見ているようで、死にそうなくらいきついはずなのに、少し笑ってしまった。


「ふっ……だが坊主、根性はあるな。最初は軟弱そうに見えたが、案外やれるじゃねぇか」 「……は、はは……ほ、褒められてるのかなこれ」

「よし今日はここまでにする!」 「……あ、ありがとう……ございます……」


ぐったりと地面に倒れ込む僕に、メイリーが慌てて駆け寄り、水筒を差し出してくれる。


「大丈夫ですか勇者様!? 無理をしすぎては……」 「うん……なんとか、生きてる」


ぬるい水が、今は何よりも甘露に感じられる。


「勇者様」


メイリーがそっと膝をついて僕を支える。その動作はとても自然で、どこか安心感を覚える。


「私はいつもそばにいます。何かあれば必ずお力になりますから」

「……ありがとう、メイリー」


声を出すのも辛いくらいだったけど、それでも伝えたかった。僕一人じゃきっと押し潰されてしまう。でも、こうして支えてくれる人がいるから、まだ立ち上がれるんだ。


「明日は魔法訓練だ。さぁ勇者君、明日からは魔法の基礎を叩き込むよ」


リアンナさんがすっと立ち上がり、鋭い視線をこちらに向ける。その目には厳しさと同時に、どこか期待の色も宿っていた。


「光魔法……君がどこまで扱えるか、楽しみにしているよ」


——こうして僕の勇者としての日々が、本格的に始まったのだった。




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