第四話モブの異世界授業
それで、兄が人類を支配しようとしたのには理由がある」
ベルディが深刻な顔で語り出す。
「それは……」
「ちょ、ちょっと待って!」俺は慌てて手を上げた。
「そういうのは後で!もうちょっと俺に心の余裕ができてから聞かせてくれ!」
「む……余裕?」
「だってさ!今の俺の状態、入部前に試合出ろって言われたレベルだよ!?いや無理だから!状況を整理させて!」
「何を言っているのだお前は...」
急にシリアスぶっ込まれるとこっちの胃がもたないわ、俺もさっきの問答とかなんかおかしいし。
ベルディはしばらく沈黙したあと、諦めたようにため息をついた。
「...仕方ない、取り敢えず今はこの世界の現状の把握に努めろ、先程と同様に質問をするがいい。」
うーん、取り敢えず魔法についてはまだ聞きたいことがある。なんてったってせっかくの異世界だ。魔法についてはよく知っておきたい。
俺はすぐさま手を挙げた。
「魔法に関してさっき属性とか色々話してくれたがそもそも魔法を使うのには魔力を消費しなきゃいけねえんだろ?その魔力の量の最大値って個人差とかあるよな?それも属性と同じ変えられない才能なのか?」
魔力が無いと魔法も使えないからな、これは聞いとかねえと。
ベルディはきょとんとしたが、真面目に答えてくれる。
「そうだ。魔力の器には限界があり、それは個々で違う。だが魔法を何度も使ったり魔力を使えばほんの少しずつだが広がりはする……まあ元々の魔力量が多いことが良いにこしたことはないがな、結局魔力量も才能によるところが大きい」
「なるほど……」俺は顎に手を当てた。
「つまり、努力すれば伸びるけど、天才には勝てないってやつか...部活かよ!」
ベルディは首を傾げた。「ぶかつ?」
「気にすんな! で、俺の魔力量はどうなの?」
ベルディは俺をじっと見つめ、静かに告げた。
「……凡人よりは少し多い程度だな」
「少し多い……」
思わず空を仰いだ。
――この異世界、勇者とか魔王とかいる世界で、少し多いって何の役に立つんだよ!?
「……まあ、平均以上なだけマシか」
自分で自分を励ましながら、俺は心の中で叫んだ。
「よし、魔法や魔力に関しては一応分かった。取り敢えず他に聞かなきゃいけないのは魔王軍の現状の勢力だな。」
一応は味方(?)なのだから勢力については知っておきたい。俺がそう聞くと、ベルディは淡々と語り出した。
「今の魔王軍は私を頂点に、古代の大戦を生き延びた最高幹部三人──そこに新参の魔族を一人加えた四天王を最上位とする」
「おお、出た!四天王!テンプレ展開きたぁぁ!」
思わず机を叩く俺。
「これ絶対、のちのち一人ずつ勇者に倒されるやつじゃん!」
ベルディは眉をひそめた。
「……誰に倒されると言った?」
「いやごめん、今のは忘れて!!深い意味はないから!」
「はぁ...お前は本当に無礼だな、」
ベルディはため息をつきながらも気を取り直し、続ける。
「四天王とは別に私直属の親衛隊がいる。これは私以外の指示は受けぬ、たとえ四天王であってもな。それで最上位の魔族の下に魔族全体が位置し、さらにその下に魔物が存在する」
「なるほどな……で、その魔物って具体的に?」
「オークやゴブリンなどだな」
「あーやっぱりいるんだ、そっち系!序盤でわらわら出てくるやつだ!」
「?」
「気にすんな!」
ベルディは一瞬だけ怪訝そうにしたが、説明を続けた。
「魔族は魔物の上位種だ。外見や能力もそうだが、最も大きな違いは知能だ。魔族は理を理解し、国を築くこともできる。だが魔物の知能はそれには遠く及ばない。だが──」
「だが?」
「魔物には魔族に従う本能がある。どれほど凶暴な魔物でも、魔族の前では膝を折る。だからこそ我ら魔族は魔物を兵として自在に使役できるのだ」
「……おおー、めっちゃ便利じゃん!いちいち手なずけなくても勝手についてくるってことか。召喚獣の自動加入システムみたいな!」
「……何を言っているのかは分からんが、便利であることに異論はない。それが魔族と人間を分ける最大の要素だ。兄はその力を最大限に活用し、人類を追い詰めた」
「……なるほどなぁ」
「現状の魔王軍ついては理解できたか?」
ベルディが腕を組み、こちらを見据えてくる。
「じゃあさ、最後に確認なんだけど」俺は恐る恐る手を挙げた。
「俺の立場って、この魔王軍の中でどの辺になるんだ?」
流石に魔王の器だから下って事はないだろ。もしかしたら魔王軍のNo.2だったりしてな!
ベルディは少しだけ考え込み──そして真顔で告げた。
「ペットだな」
「……………………は?」
一瞬、脳内が真っ白になった。
いま何て言ったこいつ?
──ペット??
「ペットぉぉ!? 魔王の器がまさかのペット枠!? 犬か!?猫か!?首輪つけられてよしよしされんのか俺は!?」
思わず立ち上がってテーブルをドン!と叩く。
「ふざけんな!俺は魔王の器だろ!?」
「お前が兄の器だからといってお前自身にそんな高待遇があると思うか?ただでさえ器としてお前を召喚する事に我が軍で反感を持つものも多いのだ...ペットとして飼ってもらうだけありがたく思え」
「そんな殺生な...」
...まあこいつ見てくれは美少女だからそのペットっのも悪くはないのか、?...いや駄目だ!一瞬行ってはいけない領域に行っちまうところだった!
「というかペットって価値観お前らにもあるんだな」
「どちらかと言えば人間の方の価値観だが今回のケースだとお前がそれにぴったりだと思ってな」
「どこをどう見たらピッタリなんだよ、」
はぁ...光は今頃勇者としてチヤホヤされてんだろうなぁ...それに比べて俺は魔王の妹のペット...格差ひどすぎるだろ泣
「まあお前がこうなるのは運命だ、受け入れろ」
「運命は返品出来ますか?」
「不可能だ」
「くそっ!ポンコツ異世界Am◯zonめ!」
俺の異世界生活どうなっちまうんだ...




