第二話モブの悪あがき
いや、まずいことになった、このままじゃ、俺は魔王に体を乗っ取られちまう!!いや待て、だがまだ死ぬとは決まってない!
「なあ、魔人のことと俺を呼び出した理由については分かった、けどまだ聞きたいことが山ほどあるんだが、聞いていいか?」
「まあ、逃げ出そうなどと馬鹿なことを考えぬのなら、質問くらいは答えてやろう」
意外とすんなりオッケーもらえたな、その調子で俺のことも見逃してほしいんだが、
「まず、仮に俺が器になるとして、魔王が目覚めたら俺はどうなるんだ?もしかして俺の体が魔王に乗っ取られて死んじまうのか、、?」
「いや、残念ながらお前は死なずにただお前の中に眠っている兄の意識が目覚めるだけだ」
「何残念がってるんだよ!、てか俺の中のお前の兄貴が目覚めるつったってどんな感じになるんだ?」
「お前の中の兄が目覚めた場合でも肉体の支配権はお前にある、だがお前の精神状態によっては兄が変わることも可能だ」
要は二重人格ってことか、?はぁ、もう高校生なのに中二病みたいで嫌なんだけど、
「俺の器のことは分かった、だがこの世界についても大まかに教えてくれ。もしかして魔法とかあんのか?」
「いや、教えようとは言ったが、先ほどからお前、随分態度がでかくないか?私は現魔族の頂点ベルディだぞ!」
そう言って魔族の女、ベルディは俺を睨んでくる。あ、やばい怒らせたか!?まずい、何とかやり込めねえと、
「いや、一応半強制的とは言え協力者みたいなもんだろ?それにあんたは器がでかそうだったからこれくらいは許してくれると思ったんだよ、」
「そ、そうか、まあ立場をわきまえているならそれで良い」
あっぶねえ!!ってかこいつちょろいな、これで魔族のトップになれるのかよ、
「それで、この世界のことについてだったな、まずお前の言う通りこの世界には魔力や魔法がある、だがそれだけではない、魔法と並んでこの世界で重要な存在にギフトがある、これは選ばれし者だけが持てるものだ」
はぁん、光みたいなやつが持つやつね、要は才能あるやつが手に入れるものだ。
「で、そのギフトってやつは例えばどんなのがあるんだ?」
「気になるか?ふっ、いいだろう!お前には特別に我がギフトを見せてやろう!、【ギフト開放 魔剣ベルディ】」
ベルディがそう叫ぶと同時にあいつの持つ剣が黒く光ったその瞬間、急に空気が重くなった、!あの剣のせいか!?体は一応動くが動きが鈍ってやがる!とてもじゃないがこんなことされたら戦えねえ。そう俺が四苦八苦しているとベルディが上機嫌そうに言った。
「我がギフトの魔剣ベルディは近くの存在の動きを遅くする、まあそれだけではないがまだすべてを見せるほどお前のことは信用していない」
「俺とお前の力関係99お前に偏ってるんだから俺がお前を裏切れるわけないだろ、」
「後お前と呼ぶな、不愉快だ」
...ちょっと冷たくないすか泣
「じゃあベルディで良いか?」
「呼び捨てなのは少し気になるが許してやろう」
へいへい、感謝しますよ。
「先程の続きだが今見せたのがギフトだ、私の場合は武器だったがギフトには様々な形がある、まあギフトのことはお前には関係が無いかもしれんがな」
「俺の凡人加減は俺が一番分かってるっつーの」
「そう拗ねるな、ギフトなど無くともお前には我が兄の器という唯一無二の個性があるではないか」
「それちっとも喜べねーんだけど!?」
マイナスポイントをスペシャルな才能と張り合わせるなよ。
「まあこれでギフトについてはおおむね分かっただろう、次に魔法について説明しよう」
「おお、魔法!」
これに関しては少し楽しみなんだよなぁ、アニメとか見てるとやっぱ魔法使いたくなるからな。
「魔法とは魔力を使用することで炎を起こしたり物を凍らせるなど様々な効果を得ることだ。ちなみに魔法には適正属性がある。適性が無い魔法でも使うことはできなくもないかも知れないが適正属性に比べて膨大な魔力消費と精密な魔力コントロールが必要になる。それに魔法によっては選ばれし者以外使えない物もある。だから通常は適正属性を使用したほうが良い。まあ適正属性が無いものも大勢いるがな」
いや、それ結局魔法も属性の適正、つまり才能ゲーじゃねえか!まあ、ギフトと違って適性が無くても努力次第で何とかなる可能性があるだけましだが。だが選ばれし魔法って何だ?光の光魔法とかはたぶん特別だよな。
「なあ、その選ばれし者が使える魔法って光魔法も入ってるか?」
「勿論、光魔法は神聖勇者のみ使える特別な物だしな、その逆、闇魔法も魔王にしか扱えない」
やっぱそうか、ん?
「え、じゃあ魔王の器の俺にも闇魔法使えんの!?」
「いや、お前には使えない、あくまでもお前の中の兄にしか使えない」
「ホントになんもメリットねえな!!魔王の器!」
闇の力とかちょっとだけわくわくしたのにっ!!だが、まだ他の魔法の適正がある!
「なあベルディ、俺の適正魔法が何の属性か調べられるか?」
「ああ可能だ、少し待っていろ」
そう言ってベルディは部屋の中の箱から水晶玉のようなものを取り出した。
「それで俺の魔法の属性を図るのか?」
「ああ、取り敢えずこのオーブに手をのせてみろ」
俺が手をのせた瞬間オーブは血のような赤に染まった。
「ほお、炎属性か、適正属性の中だと珍しくは無いが適正があっただけ上出来じゃないか?」
何か言い方が少しむかつくが炎か、悪くない...いや待てよ?炎使いってかませ役が一番多いやつじゃなかったか!?適性があって喜んでたがやっぱり俺のモブの呪縛からは逃れられないのか?泣
「属性チェンジってできますか?」
「出来るわけないだろ阿呆!はぁ、お前はふざけたやつだな、こんなやつを呼び出してしまったのか私は、」
「いやこっちは巻き込まれられた側だぞ!!ふざけ『あ?』すみません何でもありません」
俺は絶対こいつには逆らえないみたいだ。
「けどベルディ、少なくとも俺のこともお前じゃなく名前で呼んでくれよ、一応は仲間だろ?」
「ふん、まあいいだろう、お前の名前を教えろ」
「野村楓だ。楓と呼んでくれ」
「カエデ?意外と良い名前ではないか」
父さん、母さん、あなた達がつけた名前は魔族に好評です。
「それでベルディ、魔法のことはとりあえず分かったからこの世界の情勢と今後の俺たちの動きを教えてくれないか?半強制とはいえ仲間の計画は知っておきたい。」
「殊勝な心掛けだな。いいだろう!まず昔我が兄魔王シュトラーフェが人類の支配を目的に大規模な侵攻を行った。だが兄は勇者に倒され、今この世界では太古の勇者に壊滅状態にまで追い込まれた我ら魔族の生き残りと新たな魔族で構成された新魔王軍と人類が敵対している」
で、その新魔王軍のトップがベルディってわけか。
「正直現状の戦力だけで言えば、我らがかなり優勢だ。例え大陸中の国が同盟を結んだとしても負ける可能性は低いだろう、だが!神聖勇者が召喚されたとなれば話は別だ、あの光魔法は我ら魔族にとっての弱点、まともに戦えるのは私か一部の幹部のみ、正直兄が目覚めたとしても1対1では勝つことは厳しいだろう。」
いや光チートすぎだろ!圧倒的優勢な戦力差を一人で巻き返すとか。
「私は現魔族の頂点、ベルディだ。私は必ず魔族を勝利に導かなければならない。兄が一度神聖勇者に負けそれによりたくさんの同胞が勇者に倒された。上に立つものはその下の者のすべてを背負わなければいけない、このままでは私たち魔族は勇者に滅ぼされる。その為にもお前には悪いが兄を呼び覚ますためにお前を召喚させてもらった。」
それを聞いた瞬間、俺の中に何かが湧いてきた。....人類の危機で勇者が必要とされるように、魔族の危機では魔王が求められる。こいつら目線で考えりゃあ、俺の中の魔王の力はこいつらの希望なのかもしれない。だが、、
「お前たちは人類を絶滅の危機に追いあったから300年前に光の勇者が召喚されたんじゃないのか?その覚悟も無しにお前らは人類と戦争をしたのか?」
なんでこんなことを言ってしまったんだろうか。そんなことを言っても半殺しにされるだけだろう。普段の俺はそんなことを言う柄じゃない。だが俺は何故かそれが、気にかかった。
「...人間のお前にはそう感じるのかもしれないな。だが私は兄が人類を支配しようとした理由を知っている。その上で私は、兄が間違っているとは思えないのだ...」
そう言うベルディの顔には悲しみの色があった。
「......」
俺はその理由を、聞けなかった。




