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最終決戦 - 多摩への帰還

夜明け前の闇が最も深い時刻。廃村の古民家に、**AGI-Command Gamma**からの暗号化された戦術マップが**ポータブル通信機**に表示された。**多摩動物公園東側廃工場**の詳細な構造図が浮かび上がる。赤い印が革命党の推定配置を示し、青い点線が**チーム・オメガ**(アキラ、タマ)の推奨侵入ルートだった。マップはリアルタイムで更新され、上空の**自衛隊無人偵察ドローン**が捉えた熱源情報が反映されている。


「…主要な抵抗は中央制御室と屋上」ソラが指でなぞった。「…幹部らしき熱源もここに…。そして…」。彼女の声が硬くなる。「…建物各所に、不自然な熱源の塊…IED(簡易爆発装置)か…」。


ジャビールは担架の上でうなずいた。顔はまだ青白いが、意識ははっきりしている。「…アキラ…タマ…。爆弾の場所…正確に…見つけて…。自衛隊が…無駄な犠牲を…出さぬよう…」。彼の**リーダーシップ**は衰弱していても、戦術眼は鋭かった。


アキラはマップを**大きな眼球**で凝視していた。**四色型色覚**はスクリーンの光を分解し、建物の構造を頭内に三次元マップとして構築する。特に「爆弾の可能性がある熱源」の位置を強く記憶した。彼は**右前肢**を伸ばし、**第III指**で廃工場の方向(東)を指し示し、短く「キッ」と鳴いた。*行く*。


タマも「キキッ!」と応じ、ケイの肩からジャビールの毛布へ飛び移り、そっと頭をこすりつけた。*任せて*。


**ソラ**は通信機を操作し、**AGI**への最終確認を送信。『**チーム・オメガ、偵察開始。目標:IED位置の特定・マーキング。敵幹部の最終確認。**』応答が即座に返る。『**了解。リアルタイム位置情報を共有。作戦開始時刻T-60分。安全を最優先せよ。**』


**移動**。アキラとタマは、廃村を出て市街地の廃墟へと戻った。自衛隊の作戦開始まで時間はない。アキラは**軽量な骨格**と**優れた空間認識能力**で瓦礫の影を縫うように前進。**尾**を低く保持し、**半硬直化した基部**が細かいバランス調整を行いながら、AGIが示した安全ルートを忠実に辿る。タマは高い位置(崩れたビル、電柱)を移動し、**広い視野**と**鋭い聴覚**で周囲の警戒を担当。二人(一羽と一匹)の位置情報は、アキラの首輪に取り付けられた極小の発信機を介し、**AGI**の戦術マップに青い点としてリアルタイムで表示される。


廃工場は、動物公園の東を流れる小河川のほとりにあった。かつての機械工場で、鉄骨がむき出しの巨大な空間が広がる。革命党は入り口をバリケードで封鎖し、要所に見張りを立てていた。しかし、AGIの示した侵入ルートは、川側の排水口だった。金網は破られていた。


アキラは排水口に潜り込んだ。**体勢を低く**し、**羽毛**を体に密着させて音を消す。タマは彼の背中に飛び乗り、高い視点から警戒する。暗い水路を進み、内部へ。腐った水と錆びた金属の匂いが鼻を突く。


工場内部は薄暗いが、アキラの**四色型色覚**と**高解像度視力**が威力を発揮した。天窓から差し込む微かな月光と、配電盤から漏れるかすかな放電の青白い光で、広大な空間をくまなくスキャンする。そして、**AGI**が示した「不自然な熱源」の位置を次々に発見した。油のドラム缶や機械の陰に隠された、配線の絡まった塊——**IED**だ。アキラは慎重に近づき、**右前肢**の**第I指**と**第III指**で、ソラから渡された**特殊蛍光スプレー**の小型カプセルを取り出し、慎重に爆弾本体へ吹き付ける。無味無臭の紫外線反応塗料だ。自衛隊の**暗視ゴーグル**(紫外線感知モード)で明瞭に視認できる。


タマは高いガントリークレーンに登り、下方を監視。見張りの動きを**優れた動体視力**で追跡し、アキラの作業をカバーした。見張りの一人が排水口の方へ不審そうに歩いてくる。タマが即座に「クックッ」と低い警戒音を発し、アキラに知らせる。アキラは影に溶け込み、**息を殺す**。見張りは何も見つけられず、戻っていった。


**中央制御室**へ。階段を上り、鉄の扉の隙間から中を覗く。複数の熱源。机の上には通信機と地図。そして、一人の男が威圧的に立っている。**革命党の地区幹部**——動物公園襲撃時、檻を破壊しアキラを恐怖に陥れた張本人だった。アキラの**羽毛**が瞬間的に逆立った。記憶と怒りのイメージが脳裏をよぎる。しかし、彼は**本能**を抑えた。戦闘は任務ではない。彼は**左前肢**で小型カメラ(ソラから渡された、AGIとの共有用)を掲げ、**第III指**でシャッターを押した。幹部の顔と室内の様子が鮮明に記録される。データは即座に**AGI**と自衛隊前線司令部に送信された。


その瞬間、タマの鋭い悲鳴が響いた!「キーーッ!」 頭上から、何かが落ちてくる! アキラは**優れた空間認識能力**で落下物の軌道を瞬時に計算し、**後肢**で強く蹴って後方へ跳び退いた。鉄のパイプが彼のいた場所を貫く! 制御室の扉が開き、幹部が拳銃を構えて現れた!

「小賢しいネズミめ…! よくもここまで…!」


アキラは逃げた。**俊敏性**を最大限に発揮し、複雑な機械の陰へ飛び込む。銃声が響く!「バババッ!」 弾丸がコンクリート壁を跳ねる。タマがクレーンからジャンプ台代わりのコンベアへ飛び移り、騒音を立てて幹部の注意をそらす!「ちっ! 害獣め!」幹部の銃口がタマへ向く。


**その時——**

「ドドドドド——ッ!!!」

工場外から、重低音のエンジン音と、拡声器の威圧的な警告が響き渡った。

「**内にいる者たちよ! 我々は自衛隊! 直ちに武器を捨てて投降せよ! 抵抗は一切許さない!**」


**作戦開始時刻**だ! **オペレーション・フェニックス**が発動した!


工場の正面入り口が、**自衛隊の装甲車**の強行突破で吹き飛ぶ! 白い閃光と轟音——**閃光弾**だ! 革命党員たちは悲鳴を上げ、目と耳を押さえて混乱する。隙を見せた幹部に、アキラが行動した。彼は逃げるのではなく、**左前肢**で先ほどマーキングした**IED**の一つを指さし、自衛隊の先頭に立つ小隊長めがけて鋭く「ギャッ!」と警告音を発した! 小隊長は**暗視ゴーグル**でアキラの指さす方向を見る——紫外線で輝く爆弾の位置を確認!「IED! 左方回避!」隊員たちが素早く散開する。


戦闘は激烈だったが、**AGI**と**チーム・オメガ**の事前情報が自衛隊を圧倒的に優位に導いた。爆弾の位置は全て把握され、無力化班が迅速に対応。革命党員は装備の差と奇襲に圧倒され、次々と投降または制圧されていった。


**屋上**へ。幹部が最後の抵抗拠点として立て籠もる。数人の側近と共に、重火器らしきもの(対戦車ロケット?)を構えようとしている。自衛隊の突入班が階段を封鎖され、苦戦していた。


「アキラ! タマ! あの屋上…止めて…!」通信機からジャビールの声(ソラが中継)がする。アキラは応えた。彼は外壁を駆け上がった! **第II趾**と**第III趾**の鉤爪を鉄骨の隙間に引っかけ、**強力な後肢**で蹴り、**軽量な骨格**と**尾**のバランス制御で垂直に近い壁面を登る! タマも別のルートで配管を伝い、屋上へ向かう。かつて樹上生活で培った**登攀能力**の極致だ。


屋上に到達したアキラは、エアコンの室外機の陰に身を隠した。幹部と側近が、重い筒を屋上縁に設置しようとしている。自衛隊の装甲車が格好の標的だ。アキラは**優れた空間認識能力**で周囲を見渡す。屋上の端に、大きな給水タンクがある。基部は錆びて脆そうだ。


**直接戦闘はしない**——だが、**誘導**はできる。


アキラは**右前肢**でタマに合図を送った。タマは即座に理解し、屋上の反対側で大騒ぎを始めた! ガラスの破片を蹴り、金属板を叩き、「キキキーッ!」と甲高い声を上げる。側近たちの注意がそちらへ向く。

「屋上に何かいる!」

「あのサルか!? 撃て!」


その隙に、アキラが動いた。**静かに**給水タンクの基部へ近づき、**左後肢**の**第II趾**の巨大な**鎌状爪**を、錆びた継ぎ目に力いっぱい突き刺した! キキィィン! 金属が軋む。何度か繰り返す。錆びた鉄板が歪み、裂け目が入る。タンクの水が漏れ始めた。


「おい! そっちだ!」幹部が気づき、銃口を向ける。遅かった。アキラの最後の一撃が、基部を決定的に破壊した。巨大なタンクが傾き、轟音と共に倒れ落ちる! 水と鉄板の塊が、幹部たちが設置しようとしていた重火器と、その周囲に降り注いだ! 側近は水に叩きつけられ、幹部は間一髪で逃れたが、武器は完全に破壊された。


「ぐっ…! この…畜生が…!」幹部は全身ずぶ濡れで、拳銃をアキラに向ける。目は狂気に満ちていた。「お前のような…怪物! 異形の存在こそが…世界を歪めるんだ! 『純粋な秩序』を乱す…不純物め…!」


アキラはその言葉を理解できないが、憎悪と恐怖の塊のようなオーラを感じ取っていた。彼は威嚇の姿勢を取り、**鎌状爪**を見せつけた。しかし、飛びかからなかった。群れを守るために戦うが、殺すためではない。


その時、頭上で爆音が轟いた。**自衛隊の攻撃ヘリ**が出現し、サーチライトが屋上を照らす!

「**下の者! 武器を捨てて投降せよ! 最終警告!**」


幹部は天を仰いだ。眩しい光に照らされ、絶望的な笑いを漏らした。「…はっ…ははは…! 来たか…『異形』の味方たちよ…! だが…この『純粋な意思』は…死んでも消えぬ…!」彼は拳銃の口を、自身の頭へと向けた。


アキラの**大きな眼球**が、その動きを鮮明に捉えた。指が引き金にかかる。その時——。


「**バッ!**」


小さく乾いた銃声。幹部の額から血しぶきが上がった。しかし、それは自殺ではなかった。工場の向かいのビルから放たれた**自衛隊狙撃手**の一撃だった。幹部の体が崩れ落ちる。狂気の目が虚ろになる。彼の目指した「純粋な世界」は、歪んだ妄想と共に闇へと消えた。


戦いは終わった。廃工場からは投降する革命党員が続々と連行されていった。自衛隊の救護班がジャビールのもとへ駆けつけ、本格的な手当てを開始した。ソラが通信機で**AGI**に最終報告を送る。『**チーム・オメガ、任務完了。主要目標、無力化。IED全数マーキング確認。幹部、狙撃により無力化。**』


アキラは屋上に立ち尽くした。**羽毛**に革命党幹部の血が飛び散っている。彼の**鋭敏な嗅覚**は、鉄臭い血の匂いと、遠くの多摩動物公園から風に乗ってくる懐かしい森の匂いを同時に捉えていた。**優れた視覚**が、動物公園の「未来の生命ドーム」が半壊した姿を捉える。あれは彼の檻だったが、同時に守られていた場所でもあった。複雑な感覚が胸をよぎる。解放と喪失。そして今、この屋上で、彼は自らの意志で群れを守る戦いに加わり、勝利した。


ケイが自衛隊員に連れられて屋上へ駆け上がってきた。「アキラ!」彼女はアキラに抱きつき、血の付いた羽毛を涙でぬらした。「…ありがとう…無事で…良かった…」。


アキラは細長い**吻**をケイの頭にそっと触れた。**第I指**と**第III指**で彼女の肩を軽く包むようにした。温もりを感じた。守り抜いた「群れ」の一員のぬくもりが、戦いの余韻と血の匂いをわずかに和らげた。東の空が、戦火と硝煙を突き抜けて、鮮やかな茜色に染まり始めていた。新しい朝が、革命の闇を終わらせようとしていた。タマがアキラの足元に座り、疲れたように毛繕いを始めた。長い戦いの終わりだった。



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