坂倉くんと四葉くんは背が高くて、器も大きい
ダムダム…………
バスケットボールが跳ねる音。
学校が特に強豪校というわけではないが、別に弱小校でもない。そこそこのバスケ部である。
「ちっ」
そこの2年生、坂倉充蛇はチームのエースである。バスケというフィジカルスポーツにおいて、運動能力と持って生まれた体格……ようするに背の高さ。男子としては顔も良い。
今、1VS1で向き合っている、舟虎太郎としては
バスケというスポーツにおいても、男として生まれているということにおいても、勉強という点においても、彼女がいるいないという点においても、この坂倉には劣っている。
悔しいっっ!!
そんな表情をさらに固めるように、
ダムッ
そんなバスケに対する集中力が欠いた一瞬を突かれ、坂倉は舟を抜き去るドライブを決めて、レイアップシュート。
「おっし!!」
「だーーーっ!お前、ずりーぞ!坂倉ーーー!!」
「紅白試合中だろ。舟」
そーいう言葉の後に、
「坂倉くーん♡♡」
「ナイスシュー♡」
隣の女子バレー部の見学勢が黄色の声援。そして、
「充蛇くーん!すごーい!!」
坂倉くんの彼女である、彼とは対照的に小さな彼女、迎ちゃんも応援の声。これだからイケメンは嫌いである。そう思う舟と、もう1人の同級生の相場龍彦。
「おい!坂倉にやられるなよ!舟!いくら身長差があるからといってもよ!」
「分かってるよ!!女共が騒ぎやがって……」
そんな黄色の声援に対し、こちらチームのイケメンにして、坂倉よりも高身長の四葉聖雅にボールを渡す。坂倉とのマッチアップに対し、お返しとばかりにフェイクを入れての打点の高いジャンプシュート
パシュッ
「おおぉっ!!」
バスケ部も、
「「きゃ~~~~♡四葉く~~ん!!」」
見学している女子達も驚く声が上がる。見ている側も相手側も、感嘆としてしまうプレイだが
「「四葉~~~」」
「これで2ゴール差だぞ、相場!舟!」
そうじゃねぇ、そうじゃねぇ。
そーいう顔をしている同級生達。四葉の場合は、本人がそうだが
「そんなに睨むなよ。照れるぞ……俺……♡」
「そーいう言葉使うなーーー!!」
「ったくよー!!お前が♡マークをつけんな!」
「残り時間4分だ」
四葉は大体こんな感じだから、イケメンといっても、残念な部類だ。だが、女子達からすればイケメンで、勉強できて、性格が良いんだから、……舟と相場に勝ち目はない。
「タイムアウト!!赤チーム!!」
ここで赤チーム(坂倉)側のタイムアウト。
「やっぱり四葉も凄いな」
「あいつにボールが渡ったら、ダブルチームで行こう(二人の選手がプレッシャーをかけるプレー)」
「3ゴール差になれば、あいつ等も諦める」
4分後に決まる紅白試合の行方に対して
「いいか、俺はもう坂倉と四葉が活躍する度に、女子がキャーキャー騒ぐのが気に喰わない」
「同感だ!!」
「同じく!!」
「ええーーーっ!?」
白チーム(舟、相場、四葉)側の作戦会議は完全に私情ばっかりである。
「四葉に絶対にパスしないからな!ポイントガードの俺が決めます!!」
「おっし!俺にボールを集めろ!3ポイント決めてやるからな!」
とはいえ、ここで器が大きいのがイケメンという奴だ。
「分かった分かった。じゃあ、俺がスクリーンをかけたり、ボールをもらう素振りを見せて、相場と舟がシュートを決める感じだな?」
「「おうっ!!」」
タイムアウト終了後。赤チームのボールから。
残り4分の2ゴール差なら、一瞬でひっくり変える。例えば、スティール。
バシィッ
「はーーははははっ!!坂倉ーーー!お前は身長が高すぎるせいで、ドリブルが高いんだよ!!ぎゃははははは、ざまーみやがれ!!試合終盤になると疲れて、女子達に視線行くよなー!!俺は疲れてねぇけどな!!ははははは!!」
「舟。器小せぇだろ……」
舟がスティールからの単独速攻のレイアップを決めて、1ゴール差。
そこからお互いに1ゴールずつ、得点して、残り1分半。
赤チームが放ったシュートが外れ
「リバウンド!!」
これを四葉が掴んで、赤チームの攻撃を凌いだ白チーム。
「よこせよこせ、四葉ー!!お前の活躍はもういい!!」
「分かってるよ、舟」
おそらく、お互い最後の攻防になる重要な瞬間。だからこそ、決めるのはお互いのチームにいるエースだろう。白チームは四葉にボールを集める。それがゾーンプレスのような形となり、なおも四葉はその中に入って、赤チームの注意を自分にひきつける。
舟もタイミングを計りつつ、シューターを任された相場が最もやりやすい形になるのを待ちながら
中に切り込むと見せて、ノーマークとなり3ポイントラインにいる相場に華麗なパスを決める。受け取った相場もそれに応えられるようにシュートを放った。
綺麗な放物線を描くシュート。
それに対して、ゴール下に入って、リバウンドをしようとする四葉。そして、それを阻止するための懸命なスクリーンアウトをかける坂倉。
放たれたシュートは
パシッッ
「「おっしゃああぁぁ!!」」
3ポイントとなり、舟と相場がガッツポーズを決める!もちろん、戻りも早い!!そして、攻撃も早い。
「パス!!」
「戻れーーー!!残り50秒!!」
逆転されても坂倉は諦めていないし、四葉だって油断していない。
「きゃーーーー♡坂倉くーーん!!速攻に走ってるー!!」
「四葉くんをゴール下に入れないよう、スクリーンアウトもバッチリ!!」
「攻防が切り替えが早ーい!!諦めてない姿勢がカッコいい!!」
「四葉くんが相手を惹きつけて、ノーマークの人にボールを渡してるプレー、すごーい」
「自分が警戒されてる事が分かってて、チームプレイに徹するなんて♡」
「素敵ーー!!チームのために黒子に徹するなんてー♡」
ピキピキピキ
イケメン以外、キレる。
「「女子共ーーーー!!」」
ようするに、舟と相場の2人だけである。
「俺がスティールを決めて、ゲームメイクをしてんだよ!!」
「俺が3ポイント決めて、逆転させたんだよ!!なんで四葉と坂倉に声援が行くんだよーー!!」
「こーいう時だけで急にプレイ全体を見れる視野は、なんなんだコノヤロー!!」
「鬱陶しいじゃ、お前達ーーー!!」
結局のところだが
「たまたま上手くいったからって、調子に乗らない方がいいわよー」
「えーーーっ!あんた達、試合に集中しなさいよー!」
「勘違いする男ってダサいわよー!」
「そうよー!……きゃー!四葉くんが頑張ってるーー!」
白チーム。
この1点差をなんとか守り切っての勝利。
「「なんか嬉しくねぇ勝ちだよ!!」」
”30 対 29”
四人の得点数:
四葉、12点 相場、9点 舟、4点 (白チーム)
坂倉、14点 (赤チーム)
「坂倉くん、14点ってすごーい」
「四葉くんも凄い活躍だったわー」
試合を決めたというのに、女子……いや、人という奴は、結果しか見てくれない。