2話:ドロップ追加『小石』②
世界各地にダンジョンホールが開くと同時にその上にいた人々や建物などは全て穴の中へと落ちていった。
被害者の数は一千万人を超えるとされ、生きてダンジョンから出てこられたのは万分の一にも満たない人数だった。
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スキルを確認したら次はダンジョン探索者用スマホアプリのDレコーダーを開く。
主な機能は『ダンジョン内の地図の作成』『これまでに確認されたスキル・モンスター・アイテムの一覧』『各ダンジョン毎の情報共有掲示板』『即席パーティマッチング』『メッセージ&通話』『生配信』『救援要請』の7つがあって、その中の1つ、『スキル・モンスター・アイテムの一覧』には文字検索とカメラ検索の機能が付いている。
おかげで既に確認されている情報ならすぐに調べる事が出来るし、もし未確認の情報だった場合は新規情報申請をする事で運営から情報料を貰う事が出来るのだ。
という訳でスキルをポチポチ検索、が、ダメ!
ドロップ追加:小石はすでに見つかっていた!
情報料欲しかったな〜。しょぼん‥‥。
「ん!」
ほっぺをぺちぺち叩いて気合い注入。
気を取り直してジャケットの裾をピンと伸ばしリュックのベルトをギュッと締め直したら腰に付けてるホルスターから非力な私でもモンスターを倒せるメインウェポン、スリングショット(通販サイトで2980円)を左手に、玉用のウエストポーチから数個のパチンコ玉(同じく通販サイトで1000円350個入り)を右手に装備。
サブウェポンの伸縮式の警棒(これまた通販サイトで3500円最長1m)もすぐ使えるようリールキーホルダーでリュックの肩紐に吊り下げてある。
「講習組が来る前にさっさと行かないと」
我、陰の者なり。わいわいガヤガヤ若者ノリ苦手侍でゴザル。故に我は独りでダンジョンに潜るのだ。
という訳で出発ー!
ここ投石ダンジョンはオーソドックスな石壁迷路タイプのダンジョンだ。
階層は1階層だけで、モンスターが徘徊する迷路をクリアしてボス部屋のボスモンスターを倒したらダンジョンクリアになる。
脱出方法はボスモンスターを倒したら出現する転移魔法陣に乗るか今入ってきたダンジョンホールに出たいと思いながら触れる事。階層の多いダンジョンだと追加で一定階層毎に脱出用転移魔法陣があるらしいけどゲームみたいに続きから始めるは出来ないみたい。
ダンジョンはそこまで甘くねーぞ!って事だと思う。
「(ん‥‥、声が、これはこっちに来るかな)」
地図を時折確認しながらダンジョン迷路を進んでいるとグギャグギャ喋る声が曲がり角の先から聞こえてきた。
声の数は‥‥2つ、かな?感じからしてあと20秒もかからないで見える所まで来るかも。
「(一旦下がって出たとこを狙う)」
なるべく足音を立てないように、でも早足で曲がり角から離れる。それで15mくらい離れたら片膝を着いて姿勢を低くしながらスリングショットをギリギリまで引き絞る。
「グギャッギャ」
「ギャギャ」
「(来た!喰らえぃ!)」
心は熱く頭はクールに、スリングショットを構える左腕を意識して固定、気付かれる前に曲がり角から出てきたモンスターの頭目掛けて放つ!
そして当たるより早く次弾装填、第二射発射!!
「ギャペッ!?」
「ギャ!?」
1発目は少し狙いが外れて右肩に、2発目は脇腹に刺さる様に命中した。それぞれに一発ずつ当てれたからとりあえず先制攻撃成功!
「(まだまだっ‥‥!)」
現れたのはファンタジーの定番モンスターゴブリン。
大きさは小学校低学年くらいで武器は持ってなくて攻撃手段はまっすぐ近付いて来て殴る、蹴る、ひっかく、噛み付くといった近接攻撃だけ。あとエロい事。
初心者向けダンジョンに出てくるレベルのモンスターだけあって相応に弱いし近付かれなければ大丈夫だけと油断は大敵。このまま滅多打ちにする!
「グギャゥ!」
右肩に攻撃を受けたゴブリンが声を上げながら走ってくる。脇腹に当たった方はまだ呻いてるけどすぐに来るはずだから先に右肩ゴブリンを仕留める!
姿勢は低くしたまま少しだけ腰を浮かしてゴブリンと高さを合わせ3発目、左目にクリティカル。曲がり角から出てくる瞬間の横向きより真正面から来る今の方が面積が広がって当てやすい。でも顔を抑えてうずくまってダメージを与えられる範囲が減ったからすぐに倒せない。面倒臭い。
「ギャァ!」
脇腹ゴブリン復帰、向かってくる。
ターゲット変更、右肩ゴブリンと射線が被るから少し横にズレて調整、4発目、お腹にヒット。
痛くはあるけど動けないほどじゃないからそのまま突っ込んでくるみたい。続けて5発目、射線上方修正、胸にヒット。お腹よりはダメージあり。ひるんだ。
ひるんでる隙に上方修正、6発目、顔面ヒット。後ろに倒れた。でもまだ生きてる。
同時に右肩ゴブリンが復活。様子から左目は潰せたみたいだけどヤル気満々で突っ込んで来る。
これ以上は無理かも、近接戦に移行。
左手でスリングショットをホルスターしまいながら右手でポーチのパチンコ玉を鷲掴みにしてサイドスローで広くばら撒いて右肩ゴブリンに当てる。
3秒にも満たない時間稼ぎだけどこれで間に合う。
立ち上がりながら吊り下げてる警棒を掴んでボタンを押すとカシャンと音を立てて警棒が伸びる。
そして近づいて来た右肩ゴブリンの死角、潰れた左目側の顔を立ち上がる勢いに遠心力を合わせて右斜め下から打ち上げるように思いっきりぶっ叩く!!
「ゴギャ!?!?」
衝撃で壁際まで横に吹き飛ぶ右肩ゴブリン。
即座に追いかけ低空ジャンプ。そして空手家が素手で石割りをする時に石を少し浮かせて地面で割るように、右肩ゴブリンの顔面に飛び蹴りを叩き込み壁に強く打ち付ける事で右肩ゴブリンの頭蓋骨をグシャリと砕いた。
「っし、次っ!」
飛び蹴りの反動ですぐに右肩ゴブリンから離れて脇腹ゴブリンに視線を向けると今まさに起き上がろうとしている所だった。一言で言うなら隙だらけ。
ならば逃す手はなし。
起き上がりかけの脇腹ゴブリン目掛けて走りながら少しだけ警棒を縮める。そして真正面からじゃなくすれ違うように脇腹ゴブリンの横を駆け抜け、同時に走る勢いを乗せた警棒を一番威力が出るタイミングで脇腹ゴブリンの顔面目掛けて振り抜いた。
それからすぐに反転してブレーキをかける。
脇腹ゴブリンは殴った勢いで床に強く頭を打ち付けたみたいで倒れた状態でピクピクしてる。でも死んでないからトドメ刺さなきゃ。
「えいっ、えいっ、えいっ」
右肩ゴブリンと同様に脇腹ゴブリンの頭を踏みつけ床で砕く。反動で頭が少し浮くからリズムを合わせて死ぬまで踏む。そして15踏み目でようやく脇腹ゴブリンが死んで、ダンジョンへ帰るように光の粒子に変わって消えた。




