サンタさんとお散歩
冬、と言われて真っ先に思いついたのがクリスマスだったので…
今日はクリスマス・イブです!
町は明るい灯りにつつまれ、クリスマスツリーがかざられています。プレゼントはなににしようか、と楽しげな会話が耳に入ります。
そんな楽しい日、ある店と店の間にある、暗くてせまい道に、小さな女の子がいました。
はぁ…はぁ…と白い息をはき、指先が赤くなった手をあたためています。
かれこれ一時間、お母さんとはぐれ、迷子になっていたのです。
あまりの寒さとさびしさにないていると、
「フォッフォッフォ」
上からゆかいな笑い声がふってきました。
女の子は顔をあげると、あっ!と声をあげました。
なんと、サンタクロースがトナカイがひっぱっているソリにのって、やって来たのです。
「おじょうさん、こんな夜中に一人で、いったいどうしたんだい?」
サンタクロースは白くて長いおひげをモゴモゴさせながら、やさしくたずねます。
「ママとはぐれて、まいごになったの…」
「ふむ。それなら、おじさんがママのもとまでつれていってあげよう。ほら、ソリに乗ってごらん」
ソリはキラキラと、とても華やかです。
女の子はおそるおそる、サンタクロースのとなりにすわりました。
「やっ!」
サンタクロースがかけ声をかけると、トナカイが走り出し、空へかけあがっていきます。
「うわぁ〜!すっご〜い!」
女の子は両手をめいいっぱい広げてはしゃぎます。
いつのまにか、ソリは月に届きそうなほど高く高く空を飛んでいました。
女の子は下を見ました。ここからは、街全体がよく見わたせます。ふりつもったゆきの白さと、街灯の明るさでいっぱいです。
「サンタさん、ありがとう!」
「フォッフォッフォ、いいんだよおじょうちゃん。なんたって、今日はクリスマスなんだから!」
「あ、ママ!」
女の子はお母さんを見つけ、指をさしました。
どうやら女の子をさがしているのか、あたりを見回しています。
「ママー!」
「サリー!」
お母さんは目を丸くしました。
自分のむすめが、サンタクロースとソリにのってやって来たので、びっくりしたのです。
ソリがじめんに着くと、女の子はお母さんのもとへはしりました。
ふたりはギュッと抱き合います。
「よかった、ぶじで…」
「あのね、サンタさんがたすけてくれたの!」
そういって、女の子はふりかえりましたが、そこにはだれもいませんでした。
空を見上げると、とおくに赤いソリがみえます。
「サンタさん!ありがとー!」
女の子は空に向かってブンブンと手をふりました。
「フォッフォッフォ」と、あの笑い声がきこえた気がしました。
お読みいただき、ありがとうございました!