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#7「恐怖に勝つには」

 若葉との、連絡を終えた後、そのままスマホでネットサーフィンをしていると、回していた洗濯が終わった。

 それを洗濯機が『ピー』と音を鳴らして、知らせてくれた。


 雪月は、洗面所に移動し、洗濯機から洗濯物を取り出した。


「結構、なにも考えずに回したけど、そんなに多くなかったから、よかった……」

 宇奈月家の洗濯機は縦型。雪月は洗濯機の中を覗かずに、汚れたパジャマを入れ込んだため、どのくらいの衣類が入ってるかもわからず、洗濯機を回していた。


 洗濯物をカゴに入れ込んで、ベランダに持って行く。そして、一着づつ、丁寧に干していく。


 全てを干し終え、スマホで時刻を確認すると、十七時になろうとしていた。

 

「そろそろ夕食の時間……?」

 宇奈月家は、十七時から十九時頃に夕食を取るのが平均的。


「――でも、まだ全然お腹空いてないな〜」

 昼食を取ったのは十四時過ぎ。まだ夕食を取るにはかなり早い。


「……また、テレビでも見ようかな」

 特にやることはないので、なんとなくテレビを見ることにした。


 ソファーに座り、テレビを点ける。


『――人より怖いストーリー GW(ゴールデンウィーク)スペシャル』


 時刻は十七時になり、特別番組が始まった。


「おー、こういうホラー番組って、怖いのが無理だとわかっていても、どうしても見ちゃうよね〜」

 怖いとわかっていながらも、好奇心に勝てずに見てしまい、見終えてから後悔するタイプなのはわかっている。しかし、このまま見続けてしまう。このときにはすでに、雪月の恐怖心は、好奇心に負けていた。


 こうして、雪月は約二時間、ホラー番組を見続けた。




 ホラー番組が終わったのは、日が沈み切る頃。雪月は最初から最後まで、しっかり視聴していた。


「……ふぅ、怖かった〜。けど、面白かったな」

 登下校中の通学路で、知らない犬に吠えられるよりも怖かったが、それでも面白いと思ってしまった。

 また次もあれば、是非見たい。


「……夕食にしようかな」

 手に握っていたスマホで、時間を確認すると、時刻は十九時になっていた。


 冷蔵庫から、作り置きの入った透明な容器を取り出し、電子レンジを使い温める。

 温め終わり、電子レンジから取り出す。


「いただきます」

 ソファーに座り、手に持った状態でいただく。

 本日二食目は、作り置きのチャーハンだ。




「――ごちそうさまでした」

 食べ終わった後は、容器を台所に持って行って、しっかりと洗う。


「……さてと、また暇になっちゃった」

 皿洗いも終え、一日にやることは、全て終わったと言っていいだろう。

 もう、これ以上することはない。


「……トイレに、行こうかな」

 雪月はソファーから立ち上がり、廊下につながる扉の前までやってきたが、先程のホラー番組を視聴したせいで、一人でお手洗いに行くのが怖い。

 雪月以外、誰も居ない宇奈月家は、雪月の居るリビング以外、明かりが灯っていない。

 お手洗いにつながる廊下も真っ暗だ。


「――やっぱり、まだいいかな……」

 もちろん、明かりを点ければいいだけだが、明かりを点けることすら怖い。


「さ、先に、歯を磨こう……かな?」

 洗面所につながる扉の前に移動し、その場に立ち尽くす。

 先程のホラー番組に、洗面所に関する話があったのを思い出した。


「……どうしよう、怖くてなにもできないよ‼️」

 頭を抱え、しゃがみ込む。

 今度は恐怖心に負け、何もできなくなった。


「どうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう……」

 頭の中は「どうしよう」に埋め尽くされ、声にしていた。


「――あ、そうだ」

 若葉に聞いた、一人のときにやっていることを、ふと思い出した。


「えーと、わ、若葉は、一人のときなにしてるんだっけ……」

 ソファーに置きっ放しにした、スマホを手に取り、夕方頃にしたやり取りを振り返る。


「……『音楽を聞く』……か、そうだね、音楽をかければ、大分変わって――」

 若葉の教えてくれた、一つ目の方法をやってみようとする。


「――音楽……!?」

 が、また先程視聴した、ホラー番組に出てきた、音楽に関する話を思い出した。


「お、音楽はやめておこうか、時間的にも、あまり大きい音出せないし……ね?」

 時刻は二十時前。辺りは暗くなっていた。確かに、大きい音を出すのは、少し難しい時間帯になってきた。


「ほ、他は……」

 音楽を聞くことの他に、若葉は、八雲と電話することを教えてくれた。


「……電話、か。や、八雲になら、迷惑、か、かからないかな……」

 八雲とは、まだ出会って一ヶ月経たないが、きっと迷惑はかからない気がしていた。


「し、仕方ないよね、緊急事態みたいなもんなんだし……?」

 そう言いながら、スマホの連絡アプリを使い、八雲に電話をかけ始める。


 (ひと)コールでは出なかった。


 二コール、三コール、四コールと鳴る。


 そして、五コールほどして、やっと八雲のスマホに繋がった。


「……も、もしもし?」

 電話が繋がり、少し緊張しながらも、雪月から声を出す。


「……どうしたの?」

 すると、八雲らしき人物が口を開いた。

 なんだか、声がガラガラしているというか、まるで寝起きのような声をしていた。


「や、八雲……ですか?」

 声がおかしいだけで、八雲なのは間違いないはずだが、念の為、本人か聞いてみる。


「……そうですよ、八雲ちゃんですよ」

 しっかり本人であることを、寝起きのような声で、八雲が教えてくれる。


「……よ、よかったぁ」

 八雲と電話が繋がり、寂しさと一緒に、恐怖心も少し解消され、ソファーの上で泣き崩れた。


「――ど、どうしたの?!」

 泣き崩れた雪月に、通話越しで、声をかける八雲。


「じ、実は……」


 家族が二泊三日、温泉旅行で居なく、家に一人であること。一人は嫌いじゃないけど、やることがなにもないこと。ホラー番組を見て、怖くて何もできなくなったことなどを、説明した。




「――なるほど、そうだったのか。それなら……」

 雪月の話を聞いて、八雲はなにかを言おうとしている。


「――それなら……?」


「――雪月の家に、泊まりに行ってもいい?」

 八雲は、雪月の家に泊まっていいか聞いてみる。


「……え?」

 突然のことで困惑する雪月。


「え……?」

 いいでも、だめでもない答えが返ってきて、電話越しに、困惑する八雲。


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