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#4「私の友だち」

 この日、八雲は若葉と大型ショッピングモールで遊ぶ約束をしていた。


「ん〜、どっちにしようかな。こっちか?、それとも、こっち?」

部屋の姿見を使い、両手に服を持って、交互に自分の身体に持ってくる。

何を着ていくか、ものすごく悩んでいる。


「んも〜!わかんないよぉ〜!」

迷い過ぎて涙目になり、服を放棄してスマホを手に取る。


「あ〜!早くしないと、時間が……!」

見ると、時刻は午前十時半になっていた。

待ち合わせ時間は十一時、待ち合わせ場所の駅前まで徒歩十五分ほどだ。


「こうなったら……斯くなる上は……‼️」




「おまたせ……!!」

若葉が待っている駅前に着いたのは、時刻十一時五分。

待ち合わせ予定の時間から五分経っていた。


「もぉ、イブちゃん五分遅刻だよ……って、えぇ⁉️」

走って来たのか、息を切らしてやってきた八雲をみて驚く若葉。


「いや〜、何着るか決まらなくってさ」

何を着るか決まらなかった八雲は、学校の制服を着ていた。


「だからと言って、なんで制服なの?」

服が決まらなかったからといい、制服を着る理由がわからない。


「だって時間なかったんだもん。それに制服なら、ダサいなんて思われることないし」

もし着て来た服装がダサくても、若葉が直接「ダサい」と言うことはないだろう。けど、思う事はあるかも知れない。

ならば、「若葉も着る制服を着れば「ダサい」なんて思われないでしょ」と、八雲は着て来たのだ。


「でもぉ……制服は流石に……」


「あはは……ごめん、ごめん。次からはちゃんとした服で来るから」

ちゃんと謝って、遊ぶときの服装で制服を着る選択肢を無くした。


「わかった、今回だけだからね」

今から着替えてもらうにも、また十五分ほど歩いて戻らないといけない。

そのため、仕方なく若葉は譲ったのだ。


「ありがとう」

しっかりお礼を言った。


「それじゃあ、行こっか」


「はい!」

元気よく返事して、若葉についていく。




数十分間、バスに揺られてやってきた。

今日は土曜日、家族連れやカップルなどがそれなりにいるが、日曜日に比べれば少ないように思える。


「ん〜……来たはいいけど、何しようか?」

何か目的があって来たわけじゃない。ただ、近くに遊ぶ場所がここしかなかったからやってきた。


「映画でも見る?」

若葉が提案する映画はモール内の二階で見れる。


「映画?、何か好きなのあったかな……」


「まぁ、行ってみようよ」

若葉と一緒に映画館に行ってみる。



「ん〜……別にないなぁ……」

映画館についてすぐに、スマホで上映スケジュールを調べるが、八雲の好きなジャンルはない。


「私もないかなぁ」

若葉も好みのジャンルはなかったようだ。


「じゃあ、しょうがない。先に、この腹を満たそうじゃないか」


映画館と同じ二階にあるフードコートで昼食を取ることにした。


「んふふ、おいひい」

ハンバーガーを頬張る八雲。


「もぉ〜イブちゃん、ほっぺにケチャップ付いてるよ」

若葉が八雲の頬に着いたケチャップを拭き取る。


「あはは、ありがと」


「どういたしまして」

「ねえねえイブちゃん、始業式の日に居た銀髪の子ってどんな子なの?」

銀髪の子、つまり雪月のこと。若葉は、あの日から雪月を見かけることはほとんどない。

雪月と同じクラスになった八雲がすぐに、いろいろ教えてくれるかと思っていたが、二週間ほど経っても音沙汰なしだった。


「あぁ!、言うの忘れてた」

若葉に言われ思い出す。八雲は自己完結していた。


「ええ……私、忘れられてたの?」

少し苦い顔をする若葉。


「ごめんごめん、新学期でいろいろやってたら忘れちゃってた」


「もぉ〜、で、名前とか分かった?」


「うん、名前はね「宇奈月 雪月(ウナヅキ ユキ)」って言って、えーと、字は」

あのときは、紙に書いて教えあった。だからどうやって伝えようか迷う。


「こういう字?」

若葉がスマホのメモで「宇奈月 雪」と打った画面を見せてくる。


「あ〜、そうそう。でも「雪」じゃなくて、その「雪」と「月」で「雪月(ユキ)」だね」

八雲が字を説明する。


「こう?」

今度はちゃんと「宇奈月 雪月」と打たれた画面を見せてくる。


「そうそう、それそれ」


「へー、雪月っていうんだ。髪も綺麗なのに、なんというか、名前もすごい綺麗だね」


「確かに。すごい綺麗だ、あの髪は」

日に照らされると白銀に輝く、あの髪は楚々としていて、つい見惚れてしまう。


「それで、どういう子なの?」

名前はわかったが、若葉が一番気になるのはどういう子なのかだ。


「どういう子って言われても、まだ会ったばっかりだしな〜」

まだ出会って一ヶ月も経たない。だから、どういう子なのか八雲もまだ良く知らない。


「ん〜、あまり元気じゃないというか、誰かに話しかけたりはしない?」

「ほほう」


「銀髪以外で見た目は、身長百六十二センチで、推定Fカップくらい、でも体重は教えてくれないかな」

中身はまだよくわかないから、見た目を教える。


「ほほう、身長は百六十二センチで、胸は推定Fカップ、でも体重は教えてくれないって、エ、エフ!?」

まるでノリツッコミのように反応し、顔を赤くして立ち上がる若葉。


「そうそうエ……」

若葉が、上からこちらに顔を近づけてくる。


「何してるの!?イブちゃんのエッチ!!」

それなりに大きい声で言う。周りの人達に一瞬、視線を向けられるがすぐに戻された。


「ちょ、声大きいって、ほら、落ち着いて……」

八雲が若葉を少し落ち着かせ座らせる。


「ねぇ、なんでそんなこと知ってるのかな?」

テーブルに両肘を置き、顔を乗せてこちらを睨むように見てくる。

なぜ胸の大きさを知ってるか、八雲に問う。


「なんでって……身体測定の日に、着替えてるときに、、、見ました……」

よそを向いて質問に答える。


「なんで見ただけで大きさがわかるのかな?」

推定ではあるものの、やはりなぜか気になる。


「それは、ただの勘です……」

ただの勘だった。けれど、八雲の勘はかなりあっているのでは、なかろうか。


「はぁ〜……まあ、いいや。それ、誰にも言っちゃだめだからね?」

もちろん、こんなこと若葉にしか言えない。若葉にしか言えないのもアレだが。


「あ、はい……」


あとも雪月の話をしながら、昼食を取り終わった。


その後は、モール内にある本屋に行ったり、次、八雲が誰かと遊ぶときに着れそうな服を見たりした。

そして気づけば、時刻十五時半過ぎ。


モール内でやることがほとんどなくなった。目的もなく若葉と一緒にモール内を歩いていた。

八雲は、そろそろ帰ろうかと思っていた。


そのとき、八雲が前方の少し奥の方に、人混みに見え隠れする銀髪の女の子を見つけた。


「ねえ、若葉」


「なに?」

若葉は気づいていない。


「もしかしたら、今日、雪月を紹介できるかも」


「え?、どういうこ……」


「ついてきて……!」

言いかける若葉の手を取り銀髪の子を追いかける。


「えぇ……!?」

何がなんだかわからない若葉。けど八雲と一緒に何かを追いかけるような。


人混みをかき分けながら銀髪の子を追いかける。

まだかすかに銀色の髪が見える。その髪をただ追いかける。


「雪月ー!!」

そう八雲が叫ぶと銀髪の子がこちらを振り向く。


「……え?、八雲……?」

雪月が八雲に気づく。


「はぁ、はぁ……」

本日二度目の息切れをしながらも、雪月に追いついた八雲と若葉。


「えっと、八雲と……」

八雲の少し後ろにいる茶髪の子を雪月は知らない。


「ふぅ……私は三年二組の『草津川 若葉』。イブ…八雲ちゃんの友だちだよ」

息を整え若葉が自己紹介をする。


「あ、私は三年一組の『宇奈月 雪月』です、、、八雲と、同じクラ……」

「私の友だちだよ」

雪月が自己紹介をしているところ、八雲が割り込み、雪月の隣に行く。


「若葉に雪月のこと紹介するって言ったから、私の友だちってこと、紹介させてもらった」

雪月に事情というか、さっき若葉に「紹介する」と言ったと説明する。


「よろしくね、雪月ちゃん」


「こ、こちらこそ、よろしくです……」

これで、若葉と雪月は知らない人ではなくなった。


「あ!、そう、雪月、連絡先教えて?」

始業式の日に話しかけたとき、聞き忘れてた連絡先を教えてもらう。


「あ、うん。はい、どうぞ」

雪月が連絡先の載ったスマホの画面を八雲たちに見せる。


「私もいい?」

若葉も登録していいか、雪月に聞く。


「うん、どうぞ」


「ありがとう」


雪月は二人と連絡先を交換した。


「よし!、これからもよろしくね!、雪月!」

改めてよろしくと言う八雲。


「うん、こちらこそ」

雪月が返事をする。


「ねえ、雪月は今日なんでここにいるの?」

実は、雪月も連絡先を知っていれば誘う予定だった場所に、なぜか雪月がいる。


「私は、家族と来てて、今一人でうろちょろしてたんだ」

なぜいるのか説明する。


「なるほど。じゃあ、そろそろ行ったほうがいいんじゃない?」


「え?別に大丈夫だけど……」


「お母さんからメール、来てるよ」

雪月のスマホに「今どこいるの?早くこっち来て」と雪月の母からメールが来ていた。


「あ、ホントだ。じゃ、じゃあね。八雲も若葉さんも、また明日!」

スマホを見て八雲たちと別れる。


「うん、またね〜!」

雪月の歩いていく後ろ姿に手を振る二人。


「どうだった?若葉」

若葉に雪月の感想を聞く。


「すごい、可愛かった」

正直に答える若葉。


「でしょぉ?」

自慢げな八雲。


「なんでイブちゃんが自慢げなのさ」


「えへへ、なんででしょう」

ニコリと笑う八雲。


「それじゃあ、そろそろ帰ろうか」

時刻は十六時前。そろそろ帰らないと車が混んで、バスが遅れそうだ。


「うん!、帰ろう!」


「……というか、雪月ちゃん、イブちゃんの服装に何も思わなかったのかなぁ」

休日なのに制服姿の八雲に何も言わなかった雪月。


「あ、確かに」

八雲本人も制服であることを忘れているようだ。




「そういえば、八雲、制服だったな。言えなかったけど……」

一応、気付いてはいた雪月。

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