#3「身体測定」
新学期が始まって一週間ほど経ったある日。
「は〜い、それではみんな体操服に着替えて、終わったら並んで体育館に来るように」
今日は三年一組の身体測定日だ。これから皆、体操服に着替えて測定する。
「今年もこのときが来た……」
なんとも言えない顔をしている八雲。
「……八雲、どうしたの?」
そんな八雲の話に、嫌な顔もせず付き合う雪月。
「うぅ……だって、今日は、身体測定の日だもん……」
少し俯いて、涙目で嫌がっているようにも見える。
「?、そうだよ、今日は身体測定の……」
「身体測定だからだよ‼️」
教室に響くほどの大きい声を出す。
「え、えぇ……」
驚くような、引いてるような顔をする雪月。
「だって、ちょっと太ってるかもだし……」
なにかを小声で言う八雲。
「ん?な、なんて?」
聞き返す雪月。
「……んー!もう!いいよねぇ‼️雪月は‼️」
少しやけになってる。
「え?」
「なんのことか全くわからない」という顔をする雪月。
「雪月にはこの豊満なおっぱいがあるから‼️」
八雲が雪月の大きな胸を指さして言う。
「えぇ!?」
顔を赤くして驚く雪月。とっさに両腕で胸を隠すように抑える。
「一体、何カップあんのか、大体え……」
前かがみになり、雪月の胸を見ながら考えていると。
「ストップ!、これ以上はセ、セクハラだから……」
八雲がこれ以上の事を言う前に、雪月がやめさせた。
「あ、はい……」
素直にこれ以上は何も言わずに、途中だった着替えに戻った。
全員の着替えが終わり、体育館に移動した。
「それでは、男子は身長、女子は体重からはかって」
全員が先生の指示に従い、それぞれの列に並ぶ。
「いきなり体重測定か……大丈夫かな、最近いろいろ食べすぎちゃってる気がするんだよなぁ……」
「昨日、寝る前にテーブルに置いてあった大福、二個も食べちゃったし……ホントなんで食べちゃったのかな私は……!」
体操座りで順番を待っている間に、心の中で昨日の自分を恨む八雲。
「はい、次」
そんなこと考えているうちに、次は八雲の番だ。
「それでは、ここに乗ってください」
体重測定担当の先生に従い、恐る恐る目をつむり、足を乗せる。
「はい、大丈夫ですよ」
二十秒ほどで測定が終わり、先生に体重の載った紙を貰う。
その紙を見るまで、自分では何キロかわからない。
恐る恐る目を開き確認する。
「うぐぐ……寝る前になにか食べるのやめよ……」
八雲自身の基準を超えていたようだ。
「あ、雪月はどのくらいなんだろう……?」
「クフフ」と悪い笑みを浮かべながら、雪月の下へ行こうとする。
「体重測定が終わった人は身長測定の列に並んで〜」
そんな八雲を止めるように、先生が体重測定の終わった生徒たちに呼びかける。
「うぅ……くそぉ〜……」
今すぐ雪月の下に行きたいが、ここは仕方なく先生の指示に従う。
「そんじゃ、これで身体測定は終わり、礼」
『ありがとうございました』と皆が礼をして、身体測定が終わった。
教室に戻り、着替えを終えた八雲と雪月。
「ねぇ、雪月。身長どのくらいだった?」
八雲は雪月の机に行き、次の授業準備をしている雪月に、身体測定の結果を聞いた。
「身長は、百六十二センチだったよ」
雪月も次の授業準備をしながら淡々と答える。
「へぇ〜、結構高いじゃん。体重は?」
雪月ならもしかして言うのではないかと思い、自然な流れで体重を聞いてみる。
「え、えぇ〜と、体重は、ごじゅぅ……って、い、、言わないよ!、た、体重は……!」
流石の雪月でも体重は教えてくれなかった。
「いいじゃないですかぁ〜、この豊満なおっ……」
机に両肘を乗せ、雪月の顔を下から覗き込むように、八雲は何かを言おうとしていた。
「ほ、ほら!!、、もうチャイム鳴るから私は行くからね……!」
察した雪月は、次の授業が行われる教室に移動する。
「あ〜、まってぇ〜!」
そのあとを追い、八雲も三年一組の教室を出た。