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ドゥナノヴィス

息子の厨ニ病を叩き潰すために書いた

野狩で火が焚けない夜は、大人達は身を寄せ長い足を絡めて夜を過ごす。 子供達はその絡み合った大人の足に乗り跨り、頭を乗せたり埋めたりして眠る。ドゥナノヴィスもパーデンパーデンもそうやって何日も大人達と狩りに付き添った。

自分がシカの首を切った時のことは憶えていないのに、パーデンパーデンの時のことは何故か憶えている。

「苦しませないのが愛と敬意だ」

そう言って十歳の彼女は初参者の中で真っ先に斧を振り下ろした。


ドゥナノヴィスは甲冑を装着して動きづらい足首を馬上で揺らす。きくきくと金属が擦れる音が、これから始まる戦闘への興奮と不安、それとは別の憤懣遣る方無い思いを和らげる事はない。

あと半刻しないで重騎兵軍は出撃するだろう。そろそろ緩めた甲冑を締め直して、兜を被らなくては。

長鉈を持つ重騎兵隊は目立つのか、設陣前には元学友や王城での知り合いが声を掛けに来てくれた。

母似の顔立ちと細身ながら美しく張った身体、父似の柔らかい目元に緑色の瞳、長く伸ばした金髪は鈍色の集団中で光を放っている。

『赤い心臓』レジミアルンと前ドマニ辺境伯アルズゴックとの間に産まれたドゥナノヴィスは、母と王太子バルディルランが昔から面識があり、その伝手で王太子側近として行動を共にしてきた。

なので今回の参戦で王太子バルディルランの隊と離れたとはいえ、この若さで国王直指揮下の重騎兵軍の一隊長を拝命されたことはもちろん名誉であり、成果を出し、今後担う立場の為に重要な経歴としなければならない。

しかし、ドゥナノヴィスの心は晴れない。

横にいる貴奴の方が優秀だから。

パーデンパーデン。

俺の幼馴染。俺の側近。一番信頼している女。

何故誰も評価しない?

貴奴が女だからか。ノミの血が混じっているからなのか、それなら俺も混血だ。

肌の色なんて、甲冑着ているのだから傍目では分からないし、脱げば皆日焼けして真っ黒だ。

確かに今回はノミとの戦闘だ。心情か、それとも信用か。確かに辺境伯家隊なのだから、自分が隊長になるのは当然だ。敬愛する兄キャリバーンから託された隊員達だ。

辺境伯の息子である俺の責務だ。

だがそんなしがらみが無ければ、俺がいなければ、彼女だ。

彼女は優秀なのだ。辺境伯縁の家門の娘で、国王直指揮下の騎兵団に配属になる程の実力を持っているのだ。

なのに何故俺が隊長なのか。

辺境伯の息子だからだ。俺の責務だ。責務なんてーー。

「まあだ不満なのか、唇尖ってんぞ」

酒瓶を持ち胸甲まで外したパーデンパーデンが、器用に馬上からドゥナノヴィスの脛を蹴る。痛い。

「何回も言ってるだろう、ドゥナ。狩りと戦闘は違う。 私は今回が初参戦だ。そんな奴が指揮を取れるわけ無いだろう」

パーデンパーデンから水代わりの酒瓶を受け取り煽る。薄くて渋い。一口で返す。

「そんな事言ったら俺だって重騎兵の戦闘は初めてだ。 じゃあパーデン、次はお前だからな」

「はは、どうだろう。重騎兵隊はもうこの戦闘で最後じゃないのか。国王勅令の戦闘だから、慣例と見栄えが欲しかったのだろう。ま、そんな事で苦労して戦死するこちらの身になるとはな、やってられんよな」

最近は重騎士よりも、法力付加された武器や防具を使っての戦闘に移行しつつある。大規模展開の法力戦闘も積極的に研究されている。母レジミアルンの四肢ザクツの研究が大きい。

今回当領学研局の指示で、自隊重騎兵の甲冑や剣、従者の装備や馬鎧にも法石が嵌め込まれ、騎士も従者もウマも法石を呑んだ。

効果はあるそうだが、どこまで効くのか疑わしい。だが何もしていないよりは心強い。

しかしこの量の法石、いつ誰が、いやどれだけの人数が法力を封入したのか。爺共め、自領の貴族子女分揃えるなんて、何か疚しい事をしないと集まらないのではないか。

――いや、今考えても仕方がない。

「あ、ほら辺境伯家軍。左翼動き出したのかな」イヌの鳴き声の方に馬首を向けると、伝令騎兵が駆けて行く姿が見えた。足下には二匹のイヌ。一匹が驚いたウマに踏まれそうになっている。イヌに慣れていない他領のウマが暴れたりしないか心配だ。

現辺境伯、異母兄キャリバーン。胸で甲冑を着る男前。

戦闘後会えるだろうか。

これから俺達は、輝く王旗を背に掲げ、大太鼓と銅鑼の音頭で吠え、甲冑を鳴らして進む。豪雨のように降ってくる矢を盾で浴び受け、地から千の刀刃湧き立つ槍を切り払って、敵を踏み潰すのだ。崩れず 整然と前に進むその姿は、敵にとって脅威となる。重騎兵隊は、生命と闘志を全面に曝け出す過酷で苛烈な軍隊だ。

パーデンパーデンの幾度目かの呼び掛けに、ドゥナノヴィスは顔を向ける。

「今一度、皆に声を掛けてやってくれ」

パーデンパーデンは眉間に皺を寄せて言った。顔色が悪い。緊張しているのか。

「俺に続いて前に進めと云え。大丈夫さ、お前の輝く後ろ髪を見詰めながら私達は進んでいくよ」


出撃から一刻半。

ドゥナノヴィスはやっと甲冑の眉庇を外し、顔を拭く余裕が出来た。汗で目が滲みる。鎧下着も汗で重い。

出撃後、あっと言う間にドゥナノヴィスのウマは敵方の槍に撃たれて倒れた。急いで後退し、後方待機のウマに乗り換えるが、元居た位置には戻れない。

懸命に声を張り長鉈を振るい、前に走り進んだ。

法石の効果か、長鉈の刃毀れも少ない。

戦闘中に降り始めた霧雨は甲冑である程度は凌げるとはいえ、じわじわと染み込む冷気に気力と体力を削り取っていく。

思っていた以上に早い、撤収の銅鑼が聞こえた。

「とっとと帰るぞ!」

ウマも銅鑼の音に気付いたのだろう、足下に重なり倒れている死体を避けるように歩き始めた。整列の合図を促そうと副隊長三人を捜す。

逼迫した不穏な叫び。

ただならぬ声の方を向くと、長鉈を落とすパーデンパーデンが見えた。

敵を全て薙ぎ払い、ぽっかりと空いた空間。血と泥に塗れ顎当てが外れかかったパーデンパーデンは、まだ馬上にいた。

上体がふらついている。

ドゥナノヴィスの方を向いたパーデンパーデンの目は虚ろだ。

――負傷した!

咄嗟にそう思った。

視線が交わる。

口が開く。

短い距離だったが間に合わなかった。

身体を回転させながらパーデンパーデンの身体が崩れた。

従兵が支えきれず地面に当たったパーデンパーデンの身体が跳ねる。

「パーデン!」

「副隊長!」

同隊の重騎兵達も慌てて駆け寄る。

「甲冑に裂傷無し、出血は不明!」

パーデンパーデンの手が上がる。

「……すまない、気が遠くなった」

他の重騎兵や従兵に手伝われて、パーデンパーデンは立ち上がった。

法石の効果か、受け身を取ったのか、何処も痛めていないらしい。

近付くと、泥よりも血の匂いをべっとりと貼り付けている。

「大丈夫か」

心配で掛けた声に被せるように

「ドゥナ!お前早々にウマ失ってんじゃねえよ! 」

パーデンパーデンが腹から怒声を吐き出す。

「あああ、うん」

気圧されたドゥナノヴィスは、肩を打ち殴られた。痛い。

「お前いつまで徒歩なんだよ、隊長のくせに! 篭手は割れてないか、痛めたところはないか? そろそろ撤収か? こちらは四人だ、負傷者はもう下げた。追跡用の従兵とイヌの依頼はもうしてある。他の副隊長は何処だ、おい整列の伝令かけろ! おい、本陣からどの位離れている? 本舎迄戻るのか、それとも兵舎を組むのか。それならまた伝令兵を――おい、ドゥナノヴィス! 足やっぱり痛めてるじゃないか!くそ、従兵!」

噴出した怒声にドゥナノヴィス一同、辟易する。戦闘とはこうも人格を変えてしまうのか。

「敵がまた来ちまっただろうが! お前ら司令出してないのに下馬してんじゃねえよ! 早く騎乗しろ!死ぬぞ!逃げるな従兵!」

ドゥナノヴィスは、はぁと溜息を漏らした。


ドゥナノヴィスは、はぁと溜息を漏らす。

撤収中に小競り合いが何度か起きたが、難なく打ち倒した。

敵方も何かしらの武功証明欲しさに、武器や甲冑の一部を手に入れるとすぐに引いて行った。まるで追い剥ぎだ。

そうしてやっと本陣に着いた時には日も落ち、既に国王直下の軍隊は宿舎へ下がった後だった。

戦闘終了の合図から四刻以上過ぎていた。

霧雨はまだ降っている。

他の重騎兵も各々兵舎で甲冑を脱いでいる頃だろう。

自分の甲冑を脱いだドゥナノヴィスは、パーデンパーデンの甲冑を外していく。

パーデンパーデンの甲冑には特別に、法石に軽量法式を含ませた。他の重騎兵に示しがつかないとか舐められるとか言って拒まれていたのだか、戦闘前に何とか説き伏せた。

そのせいで、落馬しても直ぐに立ち上がれたのだろう。

あるいは呑んだ法石の効果か。

甲冑の法石には加護や強化の他に、目印と追跡の法式も封入してある。

戦闘訓練を積んだ央国貴族家の弟妹、分家子女の集まりとはいえ、重騎兵隊の騎士達は家門や高貴な地位を持っている者が多い。その為全員帰還が大前提にあった。それがばらばらになった身体の寄せ集めであっても。明日早くから回収捜索を始めなければ。

落馬した後のパーデンパーデンを思い出す。

小競り合いを繰り返す毎に動きが鈍くなり、甲冑から溢れる程の不機嫌を表し、疝癪を繰り返した。

そして本陣軍司舎では長鉈を杖代わりに歩き、とうとうドゥナノヴィスの兵舎内で立ち上がれなくなった。

慌てて腕を取ると倒れ込むように気を失った。

法石の効果で軽傷で済んだとはいえ、肋骨でも折ったか、腹に打撲傷を負ったのだろう。

従兵には甲冑の洗浄を任し、ドゥナノヴィスはパーデンパーデンの泥と血で濡れた鎧下着を脱がそうと伸ばした手を、ひたと止める。

さて、ドゥナノヴィスは男だ。パーデンパーデンは女だ。

幼馴染とはいえ、成人してからはお互いに首下の露出はない。今、パーデンパーデンの胸がどれだけ成長しているのかなんて知らない。

なあ、戦地とはいえ、未婚の女性が男に肌を晒していいのか?

全裸で歩き廻る母レジミアルン公の姿が脳裏に浮かぶ。いやいやあれは特別だ、例外だ。

重騎兵隊にも他の部隊にも女騎士は居る。そうか女従者を用意すれば良かったのか、仲の良い女騎士に声を掛ければ良かったのか。

副隊長として他の重騎兵に侮られないようにしているかもしれない。央国の貴族にはまだ偏見が残っているから、褐色の肌を忌み嫌う者も居るかもしれない。

いやそれよりも、今は介抱だ。今はそれよりも。

――頑張れ、羞恥心に負けるな、俺!

先ず上半身に浴布をたっぷり掛けて視界と思考を真っ白にする。浴布の下に手を伸ばす。接触を限界に抑えながら手探りで女性の服を脱がすなんてやったことがない、やったことある奴なんて居るのか!? そもそも手探りで服を脱がすなんてことやったことあるわけがなかろうが!

混乱の思考の中で、緊張と集中が入り混じる。

だってもうほら、柔らかい。服の上から触っても柔らかい。腹の肌がちらちらして眩しい。

「くそ、くそううう」

天を仰ぎながら呻く。

もう何かがうっかりひょっこり見えたりしたものなら、何かもう色々なっちまいそう。

袖から腕を抜く時だって、手甲に当たるたふたふと柔らかい感触に、何だかもう頭と眉間の血管が膨らんで痛い。

上半身だけで汗びっしょりになった。

「次、か……。…………、……」

女の服を脱がすのが、こんなにも憂鬱で苦悶だとは!

日焼けと日焼けしていない肌の境目から目が離せない。身体に刺さった木片を抜き取る時より緊張する。

今からでも女従者を探しに行くか。いや、離れている間に誰かが来て、パーデンの身体を――!

闇深い情動に思わずパーデンパーデンの腰を持ち上げていた。

「ぐうう、くそおぉぉう」

上半身の時と同様、浴布を掛けて視線を天に向けながら腰紐を緩める。

くん、と血の匂いがした。

引き抜いた手に温かい血がついていた。

「くそ、何処だ、くそ!」

汗が一気に冷える。

上半身で手間取り過ぎた。己の邪心を罵る。

浴布を剥がし下衣を下着ごと一気に剥ぎ取る。出血箇所は彼女の股。

「……………。……、………………」

パーデンパーデンが身動ぐ。

刹那、ドゥナノヴィスは激しい頭痛と噴き出す汗を抑え込むように頭を抱える。息をすることさえも忘れて放心した自分が恥ずかしい。

ぐうぐうと歯を軋ませながら喘ぎ呻く。汗で滲む視界の中血を拭い、大量の布を彼女の股に挟み、ええいもう今更と全身を丁寧に清拭しながら創傷を確認し、浴布で全身を包み、地冷えしないように抱え込んだ。

「はあああ、はあああああーー」

魂も抜け出しそうな溜息を吐きながら項垂れたドゥナノヴィスは、腕の中のパーデンパーデンの顔を覗く。まだ青白い。下腹に手を当ててやると、眉間のしわが少し和らいだ。

虚脱感が少しずつ倦怠感に変わっていく。

ほ、と息を吐く。

「女って、大変だ」


パーデンパーデンは目を開けた。

「目を開けた」という事実に驚いて跳ねる。

今何時だ、戦況は、ドゥナノヴィスは、皆はどうなった!?

「ごごっ」

「あ」

拳を喰らわせた感触で、何者かにきつくがっちりと抱えられていると気付く。

誰だ?

パーデンパーデンの口の端に誰かの口の端が当たる。髭が刺さる。目線を上げるとドゥナノヴィスの鼻があった。鼻息が頬骨に当たる。

ドゥナノヴィスはパーデンパーデンを抱えて蹲っていた。力が抜けた顔、開かない両眼。

一気に冷や汗が噴き出す。

ドゥナノヴィスを死なせてはいけない。ドマニ辺境伯と赤い心臓レジミアルン公の息子で王太子バルディルラン殿下の側近。優秀な血筋と人材を死なせてはいけない。

「ドゥナ」

喉に張り付く呼び掛けにドゥナノヴィスは応えない。

「ドゥナ、ドゥナノヴィス、ドゥナ!」

額を擦り付け、きつい抱擁から腕を引き抜いてドゥナノヴィスの頬に手を当てる。

「――おう」

ドゥナノヴィスの目がしょぼしょぼと開いた。長い髪の隙間から覗く美しい緑色の瞳に濁りはない。

ドゥナノヴィスは甲冑を着けていなかった。此処は兵舎か。戦闘は終わっているのか。

「ドゥナお前怪我は……」

そこまで言って、自分の姿に気が付いた。

――裸。

何故私は裸に浴布を巻き付けられて、ドゥナは鎧下着姿で、抱き抱えられているのか。

「どうだ、調子は? 」

身体のあちこちに創傷痛。それよりも溢れんばかりの羞恥で心臓が痛い、身体が熱い。思わず身体を縮め顔を隠す。

寝惚け眼のドゥナノヴィスは、パーデンパーデンの声にならない悲鳴で掠れた息を口渇と勘違いしたのか、

「んん~、ん」

と寝起きの伸びをするように上体を捻って水筒を取り寄せる。

中身は薄荷水だった。一口飲むと喉が軽くなった。

「もっと飲んどけ。や、温かいのがいいのか」

ドゥナノヴィスはパーデンパーデンを抱えたまま、ずるずると立ち竈まで尻で移動すると、「よっ」と腰掛け椅子に座った。

寝起きが悪いのか寝たばかりだったのか、やっぱりパーデンパーデンはドゥナノヴィスの腕に抱き込まれたままだ。

私は枕か。

ドゥナノヴィスは、立ち竈に掛けられた鍋から茶碗で湯をすくってパーデンパーデンに渡す。

「ん」

髭のある顎を掻き欠伸するドゥナノヴィスの目尻は一層垂れ、竈の炎に照らされて輝く金髪がさらりと顔に影を作る。

ゆっくり白湯を飲む。下腹が温まり鈍い痛みが和らぐ。

――鈍い痛み。

裸、鈍い痛み!

「んん、ん~。あ、ああ。うんうん」

欠伸を繰り返すドゥナノヴィスは、パーデンパーデンの顔が羞恥で真っ赤になり、恥辱に青褪め、いたたまれなくてまたゆっくりと赤くなる様子を眺めながらそう言うと、パーデンパーデンの下腹に手を当てた。

「お腹温まった? ごめんね、専用の充て布じゃなくて。こういうのってさ、普通の鎮静薬って効くの? お腹撫でているとやっぱり楽?」

度重なる羞恥の余り声も出せず戦慄くパーデンパーデンに気付いているのかいないのか、ドゥナノヴィスは続ける。

「こういうのって仕方ないんだけどさ、言いたくないのは分かるんだけどさ、俺にだけでも言ってね、いくらでも助けれんだからさ」

下腹をゆっくり撫で回される。大きい手が暖かい。恥ずかしい、気持ち良い、恥ずかしい、暖かい。

ドゥナノヴィスの大きい溜め息がパーデンパーデンの顔側面に吹き付けられる。熱い頬に気持ち良い。

「まあね、手脚失くすよりは良いんだけどね。本当にそんな事にならなくて良かったよ。まあね、もしそんな事になっても、一生抱っこして生活するからいいんだけどね」

……何だかドゥナノヴィスが可怪しい事云っている。

「はは」と鼻で笑ったら、物凄い表情で返された。

「………………」

「………」

ーー本気だった。

だって、そんな、まさか、え、いいや。

慌てて視線を茶碗に戻して「戦闘は?」と問う。

「あああ、うん、うん……」

パーデンパーデンの問いに何故か言い淀むドゥナノヴィス。

まさか負けたのか?

「……ドゥナ?」

返事が無い。

「ドゥナ、ドゥナノヴィス!?」

――寝てる!

そんなに寝穢い奴だったのか。いや、疲れているせいだろう。

誰かに抱えられて寝るのは、辺境伯領での狩りの夜を彷彿とさせる。

あの頃のように、足を絡める。

下腹ではないところがちくりと痛んだ。

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