その91 僕達は、幼い恋人のような生活を始めた。
奥様がホテル住まいになった次の日。
僕は、今、とても不思議な状況下に置かれている。一つは、自分の不安が取り除けず、今日もベッドから出る勇気が出ないこと。2つめは、本来寝ているはずの、僕の奥様がいないこと。そして、3つめは、そんな中、今まで娘と呼んでいた女性と、恋人同士の関係になったこと。公然した浮気をしている。ただし、これは奥様が認めた浮気。僕を、不安から解放するために、彼女に仕組まれた話だった。前々からおかしな関係ではあるが、いわゆるハーレムものに、ちょっとした変化がおきたことになる。
「ん、んんん~...。」
元気そうな、あるいは艶かしさもあるような声が聞こえてきた。これが、今の恋人。昨日まで、娘時々彼女だった娘。彼女が17歳から、僕と一緒に暮らして、今はもう22歳。
「あ、起きてた?おはよう。」
「うん、おはよう。」
特に変わった挨拶をするわけでもない。というより、この娘より、僕は基本的に早く起きて会社に行くので、ベッドの中で、顔を見合わせて、挨拶する経験が少ない。
我が家は、奥様→僕→彼女の順番で起きる。そして、各自勝手に家を出る。顔を合わすことがあっても、ベッドの中で顔を合わせることは、ほとんどない。
「前から思ってたけど、横から見ると、顔が丸いね。」
「朝から何を言うかと思えば。昔の僕は、細かった?」
「もう覚えてないや。ほら、私は、今の君が好きで、毎日更新されてるからね。毎日、一番好き。」
「好きって言葉、そんなに使われると、なんか恥ずかしいね。」
ベッドの中で、抱きついてきた。
「私は、オジサンに惚れちゃってるの。毎日、そのオジサンと、好きを重ねて行くの。好きに理由はいらない。私のほとんどになって欲しいぐらい。」
「あ、そこはすべてじゃないのね。」
「だって、すべてになったら、私がおざなりになっちゃうでしょ?私は、自分も好きだから、少しは自分のことも気に掛けてるよ。」
「気に掛けるか。あ、そう言えば、ちゃんと服を着て寝た?」
「え、あんなに盛り上がってたのに、服を着てるわけないじゃん。盛り上がったのは私だけか。でも、約束だったもんね。」
「肌触りがいいわけだよ。僕にかまってないで、もっといい男を探して欲しいよ。」
「君以上にいい男を探せるわけないよ。15歳の時から、私は君のことを、ずっと好きだったけど、他の人の手前、あの時は煙に巻いたよ。そして、4年前ぐらいに、この時代に来た。いい子にしてようと努力してた。でも、もう私の恋人だから、いい子でいる必要なんてないもん。」
そう言って、軽くキスをしてくる。
「こういうことがしたかったの。私は大人の女性じゃない。体ばかり大人になっちゃってる。中身は、君と再会したときのまま、17歳でいるつもり。だから、少女が憧れる同棲生活をこの4日間は、満喫したい。もちろん、君も一緒。」
「じゃあ、悪いけど、僕は二度寝がしたいな。付き合ってくれる?」
「む~、いいけど、なんか恋人らしい感じがしない。」
「恋人というか、痴女?まあ、裸にしたのは僕なのか。じゃあ、僕の責任だよね。」
男なら一度は憧れるであろう、恋人の胸に、顔を埋めてみる。
「なんか、恥ずかしいな。あんまり乳首には触らないでよ。」
「そんなに大きくなったんだ。どおりで君の胸、なんともいい難い柔らかさ。本当に柔肌。すごく幸せ。」
「もう、エッチなんだから。ちょいちょい、君の性癖は、なんかおかしいよね。そのクセ、エッチは慎重。」
「性分なんだよ。イタズラ小僧みたいなことは好き。だけど、性行為はしっかり責任を持ってるからね。」
「はいはい、知ってる。そういう性格じゃなければ、毎日上に乗って、ずっと気持ちよくさせてあげるのにね。」
「自分が気持ちよくなりたいくせに。ま、いいや。君の思うまま、僕は今週生きることにする。頑張って、君とエッチしたい。」
「その気になってきたね。いいよ。私の体のすべて、君と重ねて、一緒に気持ちよくなろう。でも、それは最後だね。」
「エッチに積極的になっても困るけど...、まあ、君の思うまま、頑張る。まずは、僕の不安を晴らして欲しい。」
AM12:30
「そろそろ起きようよ?」
「う~ん、起きることに、不安を感じる。僕は、どうしてこんなに臆病になってるんだろう。」
「せめて、布団から出て、リビングでお昼ご飯でも食べよう。お腹すいたでしょ?」
「若いっていいよね。なかなかお腹って空かないんだよね。オジサンって。」
「もう、言い訳して、起きないつもりでしょ?それじゃ、特別にサービスしてあげる。恋人の生着替え、見たいでしょ?」
「生着替えって言っても、裸の人が服を着ることの、どこがサービスなの?」
「あれ、おねえちゃんの着替えは覗くのに、私の着替えは興味ないの?」
「自ら服を脱いでいくような恋人だからさ。あ、その感覚が、なにか違うのかな?」
「なかなか変態度合いが高いよね。君の喜んでくれそうなことって、なにか良くわからない。」
「少なくとも、一緒にいてくれるだけで、僕は嬉しい。だから、そっとしておいて欲しいんだ。」
「ったく。だから、不安なままなんだよ。もう、起きて、リビングの座椅子で、二人で昼寝したって、別にいいよ。」
「起きるよ。でも、サービスしてくれるなら、それを見てから起きようかな。」
「この変態、エッチ、恋人に裸を見られる恥ずかしさを分かれよ。」
そうは言いつつ、ベッドから出てくる、裸の彼女。それにしても、本当にいやらしいって言葉が良く似合う体型だった。この娘が、グラビアアイドルをやっても、コスプレイヤーをやっても、何らおかしくはない。それとも、僕が彼女を買いかぶりすぎなんだろうか。いや、彼女を好きだから、バイアスもかかってるのだろう。
程よい肉付きの体、隠しきれないサイズになってしまった大きな胸に、まだ上向きの乳首。そこから急なカーブを描くようなしっかりとしたくびれがあり、男性を受け入れるために形作られたようなお尻。これだけ肉感があるのに、全体を見るとすらっとしている。そして胸を隠すギリギリのあたりまで長くなった黒髪ストレート。地味だと思ってたけど、顔立ちも大人っぽくなっていた。もちろん、ぱっつんの前髪。そう、改めて見ると、僕の恋人になった娘は、性的な大人に、とっくになっていた。あの人が、皮肉をいいたがる理由もわかるぐらいに、ただただ、いやらしいという言葉が似合う女性になっていた。
慌てて、乳首を隠す。下は隠さない。あ、パイパンはやめたのか。キレイに整った陰毛だけど、性器は隠せていない。う~ん、本当に、この娘が僕の恋人になるの?
「どうせ、おっぱいばっかり見てるでしょ?いつでも、私の裸を見られると思うな。」
「いや、君の胸の形が、本当に好みで、どうしても見ちゃうよね。それに、いちいち悩ましい顔をする。普段から、そんな感じなの?」
ショーツを履きながら、答えてくれた。下向きに垂れた胸が、隙間から見える。恥ずかしいのか、乳首もピンとしてる。
「そんなこと、言われたことないよ。私は、女性の中で生活してる時間が長いから、いやらしい視線にもあんまり気づかないみたい。気をつけてって、友達から言われる。」
「恋人目線だと、それが一番怖い。知らないうちに、色っぽさが増してる。彼女ごっこをしてる時と、何がこんなに違うのか。」
ブラジャーを付けながら、
「私だけを見てくれてるからじゃない。君は、良くも悪くも、おねえちゃんが好きなんだよ。でも、おねえちゃんがいない今、対象が私に変わったから、余計にそう思うのかもね。」
そうして見せてくる下着姿。親の目線だと、他人にまだ見られてないからいいけど、恋人目線だと、この姿ですら、危うい。
Tシャツを羽織り、ストッキングを履くみたい。恋人が服を着るのを見てるだけで、こんなにドキドキしてきてしまう。
「おねえちゃんから聞いてるよ。ストッキング履いてる時、じっと見てるんだってね。好きなんだ?」
スルスルと足に通して、股下に密着して、後ろを向けば、お尻の形を崩さず、くびれのあたりまで覆われている。
「ベージュと黒、どっちが好み?」
「フェチ的には黒だけど、今のベージュも、本当にいやらしい。」
「そういう目で見てるからだよ。どう、興奮してきた?」
「ドキドキしてる。だけど、元気にはなってない。」
「マジか。う~ん、あんまり言いたくないけど、本当に減退してる?」
「してるし、気落ちした状態で、興奮しても、男性機能は回復しないみたいだね。」
「つまり、私は見せ恥をかいたわけだ。バツとして、午後は離れてあげないんだからね。」
パーカーにショートパンツ。別にこのまま出かけても、この娘ぐらい若ければ、こんな格好の子はいるだろう。
「下半身も、粗治療が必要そうだよね。おねえちゃんからお小遣いもらってるから、お昼、うなぎとか食べちゃう?」
「うなぎか。そういえば、しばらく食べたことなかったな。いいよ。デリバリーしよう。この辺じゃ売ってないだろうしね。」
僕も着替えた。裸でベッドから出るのは寒かったが、それ以上に、恋人がまじまじと下半身を見て、可愛がるのに、なんか情けなさを感じる。
「じゃ、デリバリーがくるまで、とりあえず一緒にいて。離れると、やっぱり不安になる。」
「その不安って、一体なんなんだろうね。じゃあ、こんなのはどうかな?」
座ったまま、首に手を回してきた。
「オジサンの横顔なんて、面白くないんじゃない?」
「いやいや、恋人の横顔、しっかり頂きました。」
そのまま、僕の視線の先、TVの方向に向いて、一緒にTVを見てる。
「あのさ、この態勢、ちょっと辛いかな。」
「あ、ごめん。じゃあ、密着して座ろうかな。」
こうしていると、普段の彼女。もともと気取ることはしない娘だけど、距離感の近さを忘れていた気がする。僕らは、ちょっと前まで、この距離で色んな話をしてたのだと思い出した。だから、心地よくて、不安感も薄れるのかな。
「なんか、普通だね。恋人同士で密着してると、ドキドキするものだと思ってた。」
「そりゃ、君とは、ずっと密着して、色んな話をしたからね。今更、そこにドキドキしてたら、君の身が持たないと思うよ。」
「好きなんだよね?」
「大好きだけど?」
「...った。本当のことなんだ。」
「どうしたの?」
「嬉しさを噛みしめるというか、君を独占してるんだって実感が沸かないから、聞いてみたの。」
「そういうことね。昨日も言ったけど、僕は本当は、君のことをずっと好きだったんだよ。」
「えへへ~、両想いだね。」
「両想いなのは、前からだけどね。」
「ぶ~、じゃあ、今のこの状態って、一体何?」
「恋人同士で静かに存在を確かめあいながら、テレビを見てるって感じかな。別に、僕らの間で、ドキドキするのは、エッチするときだけでいいと思うよ。」
「おねえちゃんとは、こんな感じなの?」
「二人で、ただ思ったことを話すだけ。もっとも、日が経つにつれて、そういうことができるようになった。」
「私とは?」
「同じことを、あの人より前からやってる。もっとどうでもいいこと、一緒に考えたりしてなかったっけ?」
「してたかも。なんだ、ずっと恋人同士みたいなものだったんだね。」
「立場は違えど、スタンス的にはそうだったんだろうね。おかげで、君が本当にいいオンナになったことを知ることが出来たしね。」
「引っかかるんだよなぁ。私の体目当てなのか、本当にそう思ってるのか。」
「体目当てなら、今頃は裸で密着してるか、僕の上に乗ってもらってるよ。セックスを覚えたての高校生みたいに、ずっと入れたままとかね。」
「うわぁ、本当の変態が隣にいる。でも、面白いのかな?ずっと、入ったまま、色々体制を変えるって。」
「僕らはその辺の知識に乏しいからね。と言っても、面白さより、君が気持ちいいかどうかのほうが重要じゃないの。」
「...私達、昼間から、またエッチなこと話してるね。」
「したくてたまらないんでしょ?あんなに誘惑してくるってことは、またそういう気分になってるのかもよ?」
「私も、君のことを言えないよね。」
「若くて、エッチなことを覚えると、性欲って無限に湧いてくる感じがあったからね。女性もそうなのかな。」
「私は、このままエッチしてもいいって思えるぐらいには、体が疼いてる。でも、密着してるから、それがストッパーになってるのかもね。」
久々に食べたうな重は、どことなく小さな感じがした。これで、1500円なんだ。昔はうなぎなんて、スーパーの特売で、一匹400円ぐらいで売ってたというのにね。
だけど、美味しいと思える。あまり食にこだわりはないにしても、やっぱり、たまには美味しいものを食べないとだめなんだなって思った。そういうことが、不安につながっているのかもしれない。
「なんか、贅沢してる気がしない?」
「僕もそう思う。でも、特別な日なんでしょ?別にいいんじゃない。」
「特別な日。私はあと4日。正確にはもう3日と半日。君と二人きりで過ごせる、特別な日。でも、別に特別なことはしないほうが、いいよね。」
「そうだなぁ。いつもなら、君が思うように、ホイホイとやれるんだろうけどね。今の僕は、臆病だから、買い物も夜にしか行けないし、君が付いてきてくれないと、怖い。特別なこと。君とする特別なことって、なんだろうね。」
「私ね、やりたいことがある。普通のデートがしたい。どこか、フラフラと出かけて、ウインドーショッピングでもしながら、スタバに入って、二人で他愛もない話して、帰りに夕食を買って、家に帰って来るの。意外と、やったことないでしょ?」
「君と僕の関係は、昔ほどシンプルではなくなってしまったからね。父親が娘に振り回されて、色々行ったりしたけど、彼氏として、彼女とデートするってことは、数えるぐらいしかしてないね。しかも、大体そういう時は、最後にはホテルに入る。金銭の要求がない、パパ活と一緒だよ。」
「恋人と昼ご飯にうなぎを食べ、昼過ぎも特にやることもなく、密着しながら、雑談してる。それも特別な日なのかもね。そう思うと、昔の私は、やっぱり子供だったのかなって思えてくる。毎日、雑談して、二人で寝る。これが幸せだったことに、今更気づいても遅いよね。」
「じゃあ、今が幸せじゃないの?」
「ううん、そういうことじゃなくて、幸せだと思ってなかった自分が、子供だったって思ったの。私、夏休みに留学して、まだ話してないことがあったんだ。」
「恋人に聞いて欲しいこと?」
「両方に聞いて欲しい。私は、発想力がないと痛感したって話したでしょ?だけど、発想することって、どうやったら身につくのか、未だにわからない。おねえちゃんにも、到達点から逆算した行動をしたらいいってアドバイスをもらったけど、発想が出来ない。今に満足して、幸せだから、それから先のことが浮かばないんだ。」
「うん。」
「二人が思っている未来の私と、現実に向かおうとしてる未来の私、どっちが私にとって、最善なのか、わからないまま。例えば、私が大学を卒業した時に、一人暮らしを始めるとしたら、私がそこまでにやれることは、なんなんだろうって考えるけど、現実的なことしか思い浮かばない。引っ越しするとか、部屋を探すとか。」
「そうだね、う~ん、父親としての意見だけ言えば、調べてもわからないなら、実体験をしてる人間が二人も一緒に暮らしてるんだから、聞けばいいだけだよ。難しく考えることは必要ないと思う。」
「オトーサンは、どうしてたの?」
「どうしたのかな。あんまり覚えてない。でも、親は頼りにしたよ。僕の両親だって、一人暮らししたことなかったから、僕は家族の中で、最初に一人暮らしをした人間だった。いろんな人に頼って、一人暮らしを始めた。ま、結局、それが良かったかどうかはわからないままだけどね。」
「恋人としての君はどう思うの?」
「反対するだろうね。僕は、君にそばにいて欲しいと思ってる。婚姻関係にあるとは言え、あの人より、君のほうが大切だと思ってるから、なおさらね。」
「そっか。無理に一人になることもないんだね。」
「君は、いうほど僕らの子供じゃないんだよ。実際、本当の子供じゃないし、現代に来た僕の初恋の人って思いのほうが強い。君が父親になって欲しいと言ったり、父親でいいと言ったりしてるから、僕もどこかでそう望んでしまっていたところはある。家族としては、それが正解だと思ってる。」
「でも、そうなると、君は私をどうしたいのかな?」
「あんまりこういうことを言いたくはないんだけど、本心だけ言えば、僕だって君を外に一切出さないで、僕だけのものとして、僕が先に逝くまで、ずっとそばにいて欲しいと思ってる。けど、同時に、こんなに立派になった大人の女性なんだから、どんどん外に出て、色々知って、やってみて欲しいと思う。君は、僕のものじゃない。君自身のもの。」
「来るもの拒まず、去る物追わず。おねえちゃんが君を表現するときに使う言葉の通りなんだね。」
「僕は、幼少期に、しつけという名の虐待にあっている。君も知ってる通り、あの頃は、まだ子供は親の持ち物という考え方が強かった。世間体を気にするから、自然としつけは厳しくなる。結果、僕は自己主張をあきらめた。それが、結果として僕が導き出した答えだった。今は自己主張できるようになったけど、最終的に押し通すことは少ない。」
「じゃあ、私が離れたくないと言えば、ずっと一緒にいてくれるってこと?」
「もちろん。恋人だからね。このまま、一緒にいて欲しいとは思う。だけどね、それが君の幸せなのか、君にとって最善なのか、その答えは、君自身で考えて欲しいんだ。」
「思い通りに、常に最善を尽くす。そんな話、してくれたよね。」
「今の君は、思い通りに、僕と一緒にいることを、半ば強制みたいな感じでしているけど、君はそれが嬉しくて、幸せかな?」
「幸せだよ。だって、結果的にあと3日は、君と常に一緒にいられる。私がおねえちゃんの代わりだとしても、私がこうしたかったから、一緒にいるんだよ。」
「君の悩みは、それと一緒だよ。人間って、やった後悔とやらない後悔、選択肢には必ず後悔がつきまとう。そして、その後悔が経験となる。けど、経験したことであっても、同じことはずっと続く。何かをゴールとして、そこまでに出来ることに最善を尽くしたとしても、果たして、そのゴールが幸せな結末になるか、そこはわからないと思う。不安を煽るようで悪いけど、そこで重要なのが、自分の気持ち、意思。幸せなことでも、最善なこととは限らない。けど、それを自分で選ぶことは出来る。当然、選んだことで後悔すること、選ばなかったことで後悔すること。どっちもある。だから、無理にでもゴールを探す必要もないだろうし、君が幸せだと思う方が、常に正解。後悔しても、自分が幸せなら、後悔の度合いは変わってくると思う。あの人は、そういう目標に向かって、邁進することで、今までの人生を切り抜けて生きてきた。僕は、僕の好きなように選んで、結果、こういう幸せを手に入れることが出来た。どちらも正解かどうかはわからないし、後悔することもたくさんある。だけど、君がその時に幸せだったら、僕はいいと思うんだ。だから、無理やりにでも目標を立てる必要はないと思ってる。目標があるほうが、わかりやすいってだけ。で、今の目標は?」
「君の不安を吹き飛ばしてあげたい。恋人だと認めてくれた君に、もっと私を好きになって欲しい。」
「そういうことだよ。君にとって、あと3日間の目標は、明確になった。あとは、自分の思うまま、行動すればいい。僕を虜にするために、自分が幸せだと思うことをすればいいよ。無理せず、自然体のまま、自分が幸せになるために、僕を誘惑しつづければいいんだよ。それを考える。それって、簡単に発想が浮かぶでしょ?」
「変なの。だけど、発想が出来ないなら、自分が幸せだと思うことをすればいいってこと?」
「昨日の夜、二人きりの生活で、最後にしたいことは、エッチをするって言ってたでしょ?なら、エッチするためには、僕をどう転がすか、分かってくると思うよ。」
「真面目な話なのかどうかは...ま、いいか。それじゃあ、遠慮なく密着して、一緒に買物して、一緒にお風呂に入って、一緒にエッチなことが出来るように、私なりに、それが幸せだと思うことをする。そして、君と一緒に、気持ちよくなる。これが、私の残り3日の目標。見てて。絶対に、私の虜にしてあげるよ。」
「幸せ。こんな可愛い彼女をもっと好きになれるなんて、喜ぶことしか出来ないよ。」
「君が幸せなら、私も幸せ。そうか、こんな感じで、日々の目標を浮かべるだけでもいいんだね。考え方って、色々あっていいんだ。」
「...どうも、理屈っぽい話だったね。でも、将来のことを考えるよりは、簡単なことだと思う。それを繰り返していれば、自ずと目標は見えてくるよ。見えたなら、そこに最善を尽くせばいい。今は、僕と3日間、二人で幸せに過ごすために、どうしたらいいか、それだけ考えてみよう。僕も考えるよ。」
「私さ、君が親で嬉しい時って、こういう時だと思うんだよね。」
「そう?年寄りの説教だよ。そういえば、前は色々説明してあげたっけ。」
「だけど、こういう状態でも、それだけのことを考えられるのは、本当にすごいと思う。」
「自分が不安であることで、物事の説明の内容が変わることはない。まあ、確かに気分によって、言葉選びが間違ってることもあると思う。」
「今日の場合は、後悔って使ってたよね。」
「僕が不安になる要素があるとすれば、後悔の積み重ねかな。後悔の度合いはあるけど、潜在的に色々不安になることも多い。自信もないからかな。」
「なんで、今そうなってるの?」
「僕にも分からないんだ。10日前の朝、目を覚ましたら、体がこわばっていて、恐怖に襲われた。最初はいつものことだと思った。でも、翌日も改善するどころか、不安感が増していった。あの人が付き添ってくれて、安心はするけど、それでも不安は拭えない。1週間一緒にいたけど、結果、あの人はさじを投げてしまった。」
「おねえちゃんは、諦めたわけじゃないよ。」
「分かってる。だけど、僕は見捨てられたような気分になった。また一人になってしまうと思って、怖かった。でも、代わりに隣に君がいてくれた。今の君は、迷惑かもしれないけど、僕のすべてを受け止めてくれそうな気がした。」
「また、好きになった?」
「都合よく言うと、君しか僕を助けてくれる人がいない。けど、その前に、僕は、君という女性を好きだったってことを、なんとなくおざなりにしたままだった。だから、よく分かったよ。君がいないと、僕は、不安定な人間になってしまう。多分、君を育てて、君と一緒に暮らして、君を抱いて、君の虜になりつつあるんだ。」
「そんなに私のこと、好きだったんだ。私達、実は共依存してる?」
「してるよ。あの人にも共依存してる。君とあの人がどうなのかは分からないけど、僕らは、もう3人で生きているのが、当たり前になってしまってる。」
「今、私とおねえちゃん、君を巡ってバチバチなの、知ってる?」
「みたいだね。僕がどうしていいのか分からないけど。」
「おねえちゃんが、25年前の気持ちを思い出したみたい。今、私は人生経験豊富な、昔の私と、君を取り合ってる。私は、ここに来た時にその気持ちだったけど、今はもっと、いろんな思いがのってる。気持ちの強さなら、私は絶対に負けないもん。」
「そうだなぁ。やっぱり、君は僕にはもったいないよ。僕が君のことを好きなのは間違いないけど、君はその気持ちを持ったまま、ちゃんと大人になれたんだもの。僕が独り占めするには、やっぱりもったいない。」
「私は、君に束縛されて、私のすべてを知ってもらえれば、それが幸せなんだけどなぁ。」
「じゃあ、あと3日の間に、君のすべてを知る努力をするよ。君と一緒に、気持ちよくなりたいしね。」
「無理しなくていいよ。それに、今、お互いのことを話してる。これが一番幸せで、気持ちいい。だんだんと、いつもの感じに戻ってきてるしね。」
「君がそういうなら、僕はきっと3日後には立ち直ってる。そして、また三人で仲良く生活していこう。あ、もしかして、仲良くするのは、もう無理だったりする?」
「おねえちゃんと私は、心配しなくても同じだよ。昨日も、私達は同じ人間なんだって思っちゃたし。」
「...あの人はどうしたものかな。親っぽくなってきたら、恋する少女になっちゃたのか。」
「まあ、...う~ん、おねえちゃん、完全に発情期だからなぁ。」
「心配しなくても、堂々としてればいいよ。君は、自分で思っている以上に、男を虜にする術を身につけてる。受けて立ってあげればいい。」
「勝てるかな?」
「女性の魅力なら、完勝だよ。だけど、僕の好みもあるからね。甲乙つけがたい。」
「優柔不断なんだよなぁ。でも、正直で、好きだよ。」
それから、僕らは手をつなぎながら、なんとなく見たかったアニメを見たり、飽きたら二人でゲームをやったり、久々に、一緒に遊んだ。外見は大人だけど、僕の知ってる君だった。何かを見たり、やったりすると、それに集中するから、不安感は薄れてくる。反動はある。だけど、その都度、君は考える暇を与えない。
17歳までは同じ人間だったのに、寄り添って、分かち合おうとする彼女、自分で引っ張っていこうとする君。思った以上に、二人は違う。そっくりなのは顔だけになってきた。そして、僕は、二人に支えられて生きている。ふたりとも魅力的で、選ぶなんて出来ないよ。君達に対して、僕はどうすればいいのかな?
「で、本当にお風呂に一緒に入ってるんだ。あなた、本当に心を病んでるの?」
「僕は一人でも大丈夫って言ったけど、残り3日はずっと一緒にいるって言ったから、どんなことでも一緒なんだって。違うのはトイレぐらいじゃない。」
「お熱いですこと。もう、あの娘にメロメロじゃないの。」
「だって、おねえちゃんが、彼を骨抜きにしろって言ったからさ。一緒にいるんだもん。ね?」
「うん。僕もそうして欲しい。」
「...本当にあなた?なんか、洗脳でもされてない?」
「洗脳されてるかもね。もう、僕はこの娘の虜になってる。やっぱり、本妻としては、気に入らないよね。」
「あったりまえよ。私が寄り添っても回復しなかったのに、この娘に預けたら、180度変わってるんだもの。本当に、私の伴侶なのかも怪しいわ。」
「私の恋人に何を言ってるのかな。それに、私に預けたおねえちゃんが、甘く見てたんじゃないの?」
「くそ~、明日、そっちに帰ろうかしら。なんか、気に入らないわ。」
「まあまあ、あなたは、仕事で無理してない?」
「無理しないでこなせるだけの量じゃないわよ。おまけに、私は今、あなたの付き添いってことで、定時退社になってるのよ。私がもう一人欲しいぐらいよ。その娘をこっちによこしなさいよ。」
「本当に二人いるから、それが出来ちゃうのも怖いよね。」
「というわけで、会社に黙って、パソコンで出来る作業は、リモートワークしてるわよ。ホテルってこういう時、快適なのよね。」
「集中出来るんだ。今の君には、いい環境なんじゃない。」
「残念だけど、今の私には、ホテル暮らしが合ってる。ねぇ、私の隣の部屋に、あなたも泊まらない?」
「ダメダメ。彼は、今は私のものだもん。それに、ホテルの部屋に入ったら、また出てこなくなっちゃうよ?」
「ま、そうよね。それに、ホテル暮らしだから、恥ずかしいことも平気で出来ちゃうしね。」
「ガウンの下に下着を付けてないんでしょ?あなたも、案外一人だと、奔放になるんだね。」
「その、この娘も昨日、一人エッチしてたんでしょ?私も、同じ時間に、一人エッチしちゃった。やっぱり、溜まってるのよね。」
「僕に暴露されても、今はどうにも出来ないよ?」
「だけど、この格好を見て、私が一人でしてることぐらい、想像出来るんじゃない?あなたも、それを聞いて興奮しなさいよ。」
「残念でした。画面越しで破廉恥な格好してる人より、触れられる私のほうが、ずっと興奮出来るもんね。」
「ってことは、まさかお風呂で、よろしくやってるんじゃないでしょうね?」
「あ、その点は、私が水着を着て入ることで解決してる。で、彼がお風呂から出たら、私も一人でお風呂。」
「やっぱり、この娘の体は危険だよ。恋人としては嬉しいけど、親としてはね。」
「とか言って、水着越しに触ってるじゃん。むしろ、そっちのほうが興奮してるよね。」
「...まあ、僕が着て欲しいって買った水着だしね。それが、こんなにいやらしいことになるとは思ってなくてさ。」
「言い訳?だいたい、昨日だってその娘を裸にさせて、抱き合って寝たんでしょ?ケダモノよ。」
「だけど、僕がお願いしたら、君も裸になって、添い寝してくれたじゃない。」
「はいはい、私もたいがいですよ。君のことを思って、一人でしちゃうぐらいだし。...どうしてこうなっちゃったのかしらね。」
「僕が満足させられてないってことだよね。こんなことになっちゃって、本当にごめん。」
「ごめん、私こそ。そういう意味じゃないのよ。君が元気になったら、私に激しくして欲しいだけ。」
「激しく?まあ、いいや。僕も徐々に立ち直ってる。帰ってきたら、激しいかどうかは別として、一緒に気持ちよくなろう。」
「うわぁ、私の裸を見ても、興奮しなくて、昨日家を出るときに泣きそうだった人とは思えない。本当に、何を吹き込まれたのかしらね。」
「私の魅力。彼は、今は私の恋人だから。恋人同士、あと3日は楽しくやるよ。」
「...始めたのは私だものね。うん、あなたのことは、この娘に預けてるわけだし、本妻としては悔しいけど、あなたが立ち直るなら、それでいいわ。」
「ありがとう。あなたには感謝しかない。おかげで、僕の不安は徐々に和らいでいるよ。あなたじゃないのが残念だけど、それがこの娘の力だと思ってる。」
「この娘に賭けてよかった。やっぱり、本当は、私が身を引くべきなのかもしれない。お似合いよ。」
「だめだよ。おねえちゃんには、オトーサンがお似合い。あ、見た目とかじゃなくてね。」
「慰め方が下手ね。でも、私には似合ってるって言えば、同じことになるわよ。」
「おねえちゃん、頭いいね。そうだね。私に似合ってるって言えば、私も、おねえちゃんも、彼に似合ってるってことだもんね。」
「お互い、もっと似合うように頑張ろう。あなたは、私の生涯のライバルよ。」
「私も負けないんだから。大好きだよ、おねえちゃん。」
「じゃ、私はもうそろそろ切るわね。私も一人を楽しむわ。あなた達も、また明日、楽しんでね。」
「ありがとう。おやすみ。」
「裸でお風呂に入るのがまずいと思ってたけど、私の水着姿、そんなにいかがわしい?」
「僕が頼んだこととは言え、裸じゃまずいと思って気を使ったけど、やっぱり裸で入るほうがいいかもね。」
「自分ではそう思わないんだけどなぁ。あ、でも、君の好みだったから、そう思うのか。」
「端的に言うとね、収まりきれてないんだよ。それに、性的な箇所が、より際立つんだよ。どうしたら、こんなにいやらしくなるんだろう。」
「それにしても、その反応、本当に元気になってきてるんだね。」
「気持ちが追いついてないし、やっぱり下半身はまだ元気にならない。まあ、僕も精神年齢が下がってるんだろうけど、イタズラはしたくなるんだよね。」
「もう、エッチなんだから。私、乳首が弱いの知ってるでしょ?水着越しでも触られたり、舐められたりしたら、いやらしい声も出るよ。この変態。」
「変態と言われるのは、もう慣れた。恋人が変態で、がっかりした?」
「そういう言い方、ずるいよ。私が我慢してるのに、イタズラするなんて、私だけエッチな気分になるだけじゃん。」
「自己主張が強かったからさ。君の下半身だって、もう形がくっきりだったし。触ってたら、その気になってたでしょ?普通の競泳水着で、あんなに性的に見えるのは、君の体と、君の色気のおかげだと思うよ。体にぴたっと張り付いて、より体のラインをキレイにみせる。裸よりいやらしいんだよ。絶対に外で着ちゃダメだよ。」
「ずるいよね。その気にさせるだけさせて、自分は私がどんなに頑張っても、元気にならないし。」
「ごめん。僕も不思議なんだよね。君があんなにいやらしい姿で、気持ちは興奮してるのに、全く反応しないし、君に触られても、びくともしなかった。」
「ED?君が不安なのとは別に、機能不全になっちゃってる?」
「...そういうことなのかもしれないか。いよいよ、僕もED治療しないといけない年齢なのかな。」
「元気だしてよ。大丈夫、あと3日あるし、私が粗治療してでも、ちゃんとエッチ出来るようにするから。一緒に気持ちよくなるんでしょ?」
「と言ってもねぇ。毎日精の付くものを食べたとして、3日で治るものなのかな?よくよく考えてみれば、二人と一ヶ月ぐらい、エッチしてない。」
「もしかして、不安になってる理由の一つって、そういうことなんじゃ?だとしたら、精神科に行っても、不安が拭えないよね。」
「やれやれ、君と一緒にいて、不安がだんだん和らいでいると思ったら、今度は別の問題か。しかも、よりにもよって、男性機能の減退だからなぁ。」
「どうしよう。私がその気になっても、私だけ気持ちよくなるの?そんなの嫌だよ。一人で気持ちよくなってる姿なんて、見られたくないよ。」
「僕にそう言われてもねぇ。恥じらう君をわざわざ見たいわけじゃないし。あ、でも、この頃はエッチしてると、恥ずかしいって言うよね。」
「好きな人に見られながら、気持ちよくなってる自分に恥ずかしさを感じるんだよ。意識しちゃうと、裸になるのも恥ずかしいし。」
「じゃあ、昨日お風呂に入ったときに裸だったのは?」
「見て欲しかったんだよ。そういうとこだよね。まったく、乙女心が分かってない。」
「...なんか、ごめんね。」
君の気持ちは、未だによくわからない。けど、僕と一緒に気持ちよくなりたいというのは、よく分かった。
不安の種は尽きない。医師に確認していないけど、男性機能不全だとしたら、これはこれで問題だなぁ。別にエッチなことをしなくても二人とは暮らしていけるけど、好きな人に求められて、それに応えられない自分には、不安しかない。君を本当に気持ちよくしたい。こんなに、エッチなことで悩むことになるなんて、どうしたものか。
つづく




